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フレテハイケナイモノ (ホラー)

ホラーです。お気をつけください。

『心霊スポット部』


 北関東にあるS大学は部活動やサークル活動が盛んである。

『珠算研究部』は二十名もの部員を誇る。

 そのうち、四名は『心霊スポット部』という非公認の活動もしている。

 ――まあ、単なる夜遊びの口実だ。



「じゃあ、明日は金曜日だからどこか行こうぜ」

「そうだなあ、どこかいいとこあるか?」

『心霊スポット部』の中心メンバーであるダイゴとシンゴが、大学のカフェで暇をもて余していた。

 二人はともに二年生で、木曜日の午後は授業がない。

 明日は、月一回の『心霊スポット部』の活動日である。

 二人は、まったりと計画を立てていた。

 メンバーは三年生のカズマと一年生のマナミがいたが、二人はあまり口出しをしない。

 ダイゴとシンゴが、立てる計画に乗っかってくれる。

 単なる夜遊びなので、二人だけだったりマナミだけ参加したり……。

 ただ、一学年上のカズマが来れば家の車を出せるため、夜のドライブが可能だった。

「明日はカズマ先輩が行けるみたいだから、この神社とかどう? 『タタリ』があるってよ」

「狐高雲神社? ふーん、車で一時間の山だから、ちょうどいいか?」

「よし、これにしとこーぜ」

 ダイゴは軽く笑った。


 ◇◆◇


 どぷり。

 ダイゴは寒気を覚えた。

 山道に入った瞬間からである。

 九月の夜だが、肌寒い。

 長袖のシャツを着ていても、温かい飲み物が欲しくなる。



 ――金曜日の夜、午後七時に大学で集合してメンバー四人で車に乗り込んだ。

 それから一時間かけて『狐高雲神社』に到着したのだった。

 神社を案内する案内板には矢印と、申し訳程度のスペースで駐車場が設けられている。

 草臥れた石の鳥居が雰囲気を出す。

 神社は山の上に建っているようで、麓にある駐車場からは建物は見えないが山道に鳥居がいくつかあるのを確認できた。

「むむっ、なにか感じる……」

 ダイゴがおどけた声を出すと、

「鳥居がいい感じだね。なにか、あるな」

 とカズマが応じた。

「……」

 マナミはやや引いている。



 もともとマナミは『心霊スポット』というより、夜のドライブに興味があったので着いて来ていた。

 また、本当に怖そうな場所では一人で待っていることもある。



 ダイゴは、マナミとカズマとくっつくかもな、とぼんやり思う。

 最近、特に仲が良い。

 まあ、それならそれでいいか。

 しかし、山の中は寒い……。

「よーし、元気に行きますか!」

 ダイゴは寒さを紛らすために声を張った。


 ◇◆◇


「げ?」ダイゴ。

「まじか?」シンゴ。

「えーと……」カズマ。

「へー」マナミ。

 四人は揃って声を上げた。

 立ちすくむ。

「三十分かけて山道を登ってみたら、これか!?」

「これ、なんの『タタリ』だ?」

「どうやら、神社の裏側から苦労して登ったみたいだね。簡単に来ることができる、表の道があるんだ……」

「でも、楽しそうですよね」

 四人がそれぞれ呟く。

 マナミは、はしゃいでいる。



 ――四人が目にしたものは、地域の秋祭り。

 人手は疎らだが、露店も出ており参拝に訪れた親子連れの姿が微笑ましい。

 ご丁寧に、ダイゴたちが登ってきた方向と逆は車道が整備され、広い駐車場も見える。

「へこむな……」

「さすがに、これは予想外」

「良く調べてなかったからなー」

 ダイゴ、シンゴ、カズマは遠い目をして呟く。

「でも、面白そうですよ! 今から花火が始まるみたい!」

 マナミが見つけたのは、手持ち花火を手にした人だかりだ。

 まだ花火を配っている。

「私たちも行きましょう!」

 マナミがカズマの袖を引く。

「お、おう……」

 袖を引かれたカズマは人だかりに向かう。

「俺たちも行くか」

「だな」

 ダイゴとシンゴは顔を見合わせてニヤリ。

 ――結果、花火はおおいに楽しめた。



 九時も過ぎ、花火が尽きると人も家路につく。

 ダイゴたちも裏道を引き返す。

「しかし、また山道を帰るの、おっくうだな」

「まあ、いいじゃないか」

 ダイゴとシンゴは笑い合う。

「ん、なんかあるぞ」

 カズマが茂みを見る。

「へー、お稲荷さん?」

 そこをシンゴも確認すると、キツネの像があった。

「神社の名前が『狐高雲神社』だからな……」

 カズマが狐の像を触る。

「でも、ちょっと神社と離れてますね」

 マナミが神社との距離を見る。

 四人は既に二~三百メートルは山道を降りている。

「もともとこちらの道も使われていたけど、新しい道ができたから手入れされなくなったんだろ。この稲荷さんも放置か」

 四人は狐の像を何気に触り、気にすることなく山道を降りて行く。


 ◇◆◇


 ひゅっ。

 誰かが息を呑む。

 駐車場に到着する手前だ。

 車も見える。

 どうやら、シンゴのようだ。

「なんだ?」

 とダイゴが声をかけたが、ダイゴもビクッと身を震わせた。

 車の近くに、巫女さんがいた。

 なにやら、車を指差してこちらを見ている。

「あ、すみません。すぐに動かします」

 駐車場を施錠するのか、とカズマが小走りに車に乗り込んだ。

 他の三人も頭を下げつつ車に乗り込むが、ダイゴには巫女が手を差し出した。

 四つの玉がぶら下がっている。

「え?」

 意味がわからないダイゴに、巫女がさらに手を伸ばす。

(くれるのか? お土産?)

 ダイゴが玉を受けとると、

「お帰りは、お気をつけて」

 と小さな声が聞こえた。


 ◇◆◇


 ――月曜日。

 ダイゴは大学のカフェでスマホを弄っている。

 授業の合間で、することがない。

 何気にバッグを見ると、神社の巫女さんにもらった玉が入っていた。

 キーホルダーのようになっており、ぶら下げることもできるが、バッグのなかに突っ込んでいた。

 あまり見映えがするものでもない。

 深い緑色で『四』という数字が刻印されている。

 ダイゴは意味もなく玉を弄んだ。

 そこへ、マナミが通りかかる。

「おう、金曜日はお疲れ様」

「あ、ありがとうございました」

「次は行きたいとこあるかな」

「また花火がいいですねー」

「カズマ先輩と行けー」

「え?」

 不思議そうなマナミ

「ん?」

 ダイゴも思わず首を傾げた。

 が、もしマナミとカズマの仲に不穏なものがあればいけないと、その場は茶を濁す。



「マナミとカズマ先輩、なにかあったかな?」

「あ?」

 昼休み、ダイゴとシンゴは一緒に昼食を採った。

「いや、マナミの反応が鈍くてさ。二人になにかあったら気を使うだろ?」

「てか、『カズマ先輩』って誰だよ? 人違い?」

「は?」



 どういうこと?

 ダイゴは混乱する。

 シンゴが『カズマ先輩』を知らないと言い出す。

 昼食で時間がなく、話が出来ずじまいだ。

 なにか、『カズマ先輩』がやらかした?

 マナミとシンゴに、無視されるような?

「……」

 ダイゴは呆然として動けなかった。


 ◇◆◇


 ――翌日、ダイゴはマナミに電話する。

 大学のカフェで飲み物を奢った。

「『カズマ先輩』となにかあった? 昨日の反応が変だったけど……」

「え?」

「ん? どうした?」

「『カズマ先輩』って誰ですか? 人違い?」

「な、なに――」


 ◇◆◇


 さらにその翌日、ダイゴはシンゴとカフェにいた。

「あのさ、マナミが『カズマ先輩』のこと知らないっていうんだけど……」

「お前さ、なに? 誰かと間違えてない? 『カズマ先輩』って、俺も知らないぜ。バイトか昔の知り合いか?」

「え? いやそんな。マナミと……」

「そもそも、『マナミ』も誰か知らないぞ。昔の女か!?」

「な、な――!?」


 ◇◆◇


 一、カズマ。

 二、マナミ。

 三、シンゴ。

『狐高雲神社』の巫女にもらった玉に書いてある番号で、ダイゴがそれぞれに配った。



 カズマとマナミが消えた?

 大学で名簿を見せてもらったが、名前がなかった。

 恐ろしいのが、ダイゴのスマホの連絡先からも名前と番号が消えている。

(なにが、なにが起こった? 俺、変な薬でも飲まされた!?)

 ダイゴは震えた。

 寒い。

(玉に刻まれた番号――!? なにか関係する?)

 ダイゴはスマホを見る。

 シンゴを検索した。

(ない。シンゴの番号がない。なんでっ!?)


 ◇◆◇


「はあ、はあ、はっ……」

 ダイゴは『狐高雲神社』にいた。

 あの巫女さんに会いたい。

 しかし、神社に人の気配はない。

(あの狐の像を!)

 ダイゴは裏へ回る。

 像を見つけた。

 近くに、古い立て看板がある。

 古くて、何を書いているかわからない。

『触れば消える』

 だけど、それだけは読めた。

「なんだ、それ!?」

 どぷり。

 なにかに纏われた雰囲気がした。

「次は、四番目……」

 声がした。ような気がした。


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