42 桐生君の現状
「そういえば、桐生さんはどうなってます?」
「桐生君か? なんで知ってるの?」
部活が終わり、みんな帰ろうとしていると桃花さんが桐生君について話しかけられたのだ。
やはり桃花さんのクラスも知っているのか……。
「陽キャグループによって陰キャ指定された男子が情報通で、彼から教えてもらったので」
「ああ、あの情報通の……」
「こっちは花蓮ちゃんから聞いたけど、まだ決まらないみたい。 あと2日しかないからそろそろ決めないと先生によって決められちゃうからね」
あの情報通は桃花さんのクラスの人間だったか。
それを横で聞いていた冬先輩も参加し、現状を告げた。
「新聞部はダメって聞いてますし、妹さんの事があって」
「そうなんだよな。 どうもあいつの妹さん、左派のメディア会社の記者に性的暴行された挙句に殺されたらしい」
「そうなのですか!?」
「うん。 これは桐生君の妹さんの友人の姉である【清光の十女神】の一人の先輩から聞いた話だけど、その記者は何故か逮捕されなかったんだって。 自殺にされたって」
「酷いですね」
「そう思う。 彼の両親や親族が怒りを露にしたが、証拠がなかったんだとか」
「証拠隠滅したんだって。 あの記者は悪崎の親戚筋が関わってるから、そこからの圧力で自殺に仕立てられたんだ。 だから逮捕されなかったんだよ」
冬先輩の交友関係が深いのは驚かないが、まさか桐生君の妹さんの友人の姉がここで【清光の十女神】の一人となっていたとは。
知ってる限り、冬先輩と神薙先輩、そして太田先輩を合わせて現在四人が判明しているわけだ。
その人から冬先輩にもたらされた情報がこれまた酷い。
桐生君の妹は左派の記者に性的暴行を受けた挙句に殺されたらしい。
なのに、その記者と繋がっている悪崎の親戚筋が圧力をかけて自殺に仕立てたことが許せないらしい。
だから新聞部は即座に拒否している。
「でも、このままではダメなんですよね。 残り2日で何とかしないと、最悪の場合はその拒否している新聞部に強制入部の可能性だってありえるでしょう?」
「その懸念はあるんだよな」
「うーん……。 今日も花蓮ちゃんが付き添ってくれてたみたいだけど、いい感触は得られなかったって言ってたし」
冬先輩も僕も桃花さんも頭を悩ましている。
彼は悪い意味で中途半端だから、殆ど何も出来ない状態になっている。
僕や冬先輩みたいにゲームや漫画で盛り上がればいいけど、それなりにジャンルを体験する必要もある。
しかも彼は料理が出来ないから、料理部もダメ。
完全に桐生君の件は八方塞がりらしい。
「あー、その事なんだけどね」
「部長?」
そこに部長の梓先輩が話しかけて来た。
やはりさっきの話が気になったようだ。
「明日特別に部活をするよ。 そこでもう一度彼に部活見学をさせようと思うんだよ」
「そうするしかないですね」
「ボクもそう思います」
「異論はないですね」
「じゃあ、私は生徒会と教師にそれを伝えておくから君達はそのまま帰っていいよ」
「お疲れ様でした」
部長である梓先輩からの提案を受け入れ、僕達三人はすぐに第一パソコン室を出た。
明日はここに桐生君を見学に来させるようにするらしいから、悪崎達が何らかの形で襲って来る前に解決しないとなぁ。




