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16 冬先輩から急に誘われました

 今日は日曜日で学校は休み。

 悪崎の影響で、他のクラスメイトよりコミュニケーションが良くなったのだが、未だに陰キャの烙印を押されてる影響で不安を抱えたままだ。

 そこに関しては知り合った先輩達や二学年や三学年の先生たちを信じるしかない。


 今日はその疲れを癒そうとしてベッドで横になっていたが……。


「冬先輩から……?」


 冬先輩からの着信が突然入った。

 慌てて起き上がり、電話のマークをタップして応対する。


「もしもし、春日井です」


『やぁ、ゆーくん。 ボクだよ、冬だよ。 急に電話してごめんね?』


「確かに急に着信してきたのでびっくりしましたけど……。 それで、何か?」


 急に電話してきたことについては、やはり冬先輩も思う所があったようで謝って来た。

 あまりそれで時間を取らせるわけにはいかないので、用件を聞く事にした。


『今日、有名な新作RPGが発売される日だからね。 購入戦争は免れるために大量に入荷してると思うけど、ボク一人ではアレだしね。 一緒に近くのゲームショップに行かない?』


「構いませんが……、ダウンロード販売はないのですか?」


『ボクが買うのは限定品が付いているタイプの高額なものだからね。 ダウンロード販売では手に入らないんだよ』


「ああ、限定版か……。 納得しました。 一緒に行きましょうか」


『ごめんね、急な誘いで。 どうしても欲しい限定版だからさ』


 冬先輩は僕と一緒に近くのゲームショップに行きたいようだ。

 購入戦争対策としての意味合いが強いが、彼女が欲している限定盤は当然ながら数が少ない。

 それでもあのゲームショップは、多く入荷しているので他のと比べたら手に入りやすい。

 しかし、『予約戦争』ならわかるが『購入戦争』か……。

 パワーワードじみてるのは気のせいだろうか?


「それで待ち合わせ場所は? 後、服装に自信がないので……」


『大丈夫。 ラフな格好で来てくれればいいよ。 待ち合わせはいつもの交差点で』


「分かりました。 じゃあすぐにそこに向かいますね」


『うん、よろしくねー』


 そう冬先輩が言ったところで、通話が終わる。

 しかし、有名RPGの限定版か。

 僕も幸いお金があるので、限定版を買うのに事足りる。

 最悪、冬先輩に譲ってあげればいいし。


 急いで僕は外出用の服に着替えて、待ち合わせ場所を目指して家を出た。


 待ち合わせ場所に着いた僕はスマホで今回の限定版について調べてみた。

 どうも、サウンドトラックCDと設定資料集とフィギュアが付与されたタイプの物で、予約枠は既に一日で終わってしまったようだ。

 そこで、冬先輩は直接購入する事にしたのだろう。

 おそらく彼女は、その中のサウンドトラック辺りを欲してるに違いない。


 あのRPGシリーズが人気なのは、僕でも理解できる。

 それだけクオリティが高いし、やり込み要素もあるからね。


「お待たせー」


 少し待つと、冬先輩がやって来た。

 フリルブラウスに下は緑のプリーツスカートだ。

 彼女にしてはラフな格好だが、それも可愛いからヨシ!


「大丈夫ですよ。 僕も今来たところですから」


「そっか、良かったよ。 今なら開店前に着くことが出来るから、すぐに行こう」


「そうですね」


 少し早足ではあるが、目的のゲームショップを目指して、手を繋ぎながら一緒に向かったのであった。



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