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セオドラ・ペップバーンの困った義父

  ごくごく普通の高校生、瀬尾虎之助せおとらのすけは、授業中に居眠りをしていたら謎の組織に拉致されていた。

  恐ろしいことに、自分の体は10歳前後に若返っているし、自分を囲む白衣を着たマッドサイエンティストっぽい人たちは、虎之助を見下ろしてニヤニヤ笑ってる。

  「異世界人」や「異界を見る目」だのと訳のわからないことを言われた挙句、なんかファンタジーでお馴染みの隷属してきそうなアイテムを無理やりつけてこようとしてきた彼らに恐怖を抱いた虎之助は、子どもゆえの小柄さと俊敏さを全力で使って逃走。

  追手を交わして逃げた虎之助だが、追い詰められて捕まってしまう。

  あわや、というところで現れたのは金髪の男性。見るからにブチギレてるその男は、「僕の研究結果を盗作した上に悪用してるクズどもはお前らか」といって、謎の機械(というか兵器)で白衣連中を昏倒させる。

  帰ろうとしたその人に助けを求めた虎之助は、衝撃的な一言を言われる。


  「キミ、もしかして違法召喚された異世界人?」___と。


  首をかしげた虎之助に男は大袈裟に天を仰ぎ、次々捲し立てる。


  「人間は潜在的に、未知なるものに恐怖を抱く」


  「恐怖から逃れるために人間は常に事象を解き明かしたいという渇望を抱く。

  渇望は学問という形になり、文明として世界に根付いてきた。

  既知とは力だ。解き明かす力こそ、この世で一番強い力なのだろう」


  「でもこの世にはどうしても解き明かせないものも存在する。というか、人間は常に未知を探してしまう習性があるんだ。

  既知だけで身の回りを固めたいのに、日々の暮らしに未知を探す。どうしようも無い生き物さ」


  「そして未知はまあ、オカルトとか、そういう系になる。

  未知は自分が暴かれて既知になってしまうことを恐れるから、暴く人を襲う。そう、つまり学者、研究者、化学者……そういう立場の人間を襲うんだ。

  僕らみたいな解明者は事象に理由を見つけようとしてしまうから、オカルトに襲われるとどうにも弱い。

  圧倒的に向こうの方が状況的に有利だからね。なにせ、世界そのものに目隠しされてしまうのだから、解き明かしようが無い。一方的に襲われて死ぬ」


  「でもね、未知たるオカルトに対抗する手段がある。

  それが、そう、異世界人だ。異世界人っていうのはその名の通り別の世界の人間だから、この世界のコトワリから外れてる。だから、未知の「本当の姿」を目視できるんだ。

  精度と耐久値に差があるけれど、彼らの瞳は有用だ。なので、僕みたいな研究者は異世界人を召喚するんだ、護衛役としてね」


  __と、いうわけである。



  「なんか、思ってたのと違うけど__つまり俺は拉致られたんだな?」

  「イエス!

  でも、勘違いしないでね、キミみたいなケースは基本的にあり得ない。つまり、違法なんだ。

  だって、異世界召喚ってちょっと倫理的にアレじゃない? 実質的に拉致だし。

  研究者蔓延るこの世界はちゃんと理性的だからね。

  倫理委員会で異世界召喚は規制されてるし、異世界人と護衛契約を結ぶときは委員会役員の監視下で契約書作成しておしまいだ。本当にやばい怪異事件が起きた時だけ契約した異世界人を召喚して倒してもらう。

  報酬もきちんと支払われるし、契約書で定めた「出動不可条件」に該当する場合は召喚拒否もできる」

  「じゃあ、なんで俺は……」

  「キミを召喚したのは、裏社会の奴らだ。あいつら、後ろ暗い研究するからね。だいたいそういう奴らは正式な手段で召喚契約を結べないから怪異事件に巻き込まれて死ぬ。

  でも、単なる噂話だったんだよ。まさか、倫理委員会により完全に撲滅された抹消済魔術(ロスト マジック)を独自に開発した上で使うアホが本当にいるとはね……」

  「……」


  「君が召喚された魔法陣はタチが悪いことに、帰り道がない。存在抹消系だ。

  キミが異世界人だとバレないように、世界の目を誤魔化すために、向こうで生きていたら痕跡を丸ごと消した上で連れ去ってる。

  こういうのされると、世界のつながり消えちゃうから元の世界に帰れないし、帰ったとしてもみんなに存在忘れられてるわけだからキミにとっても地獄だと思う。

  ご丁寧に肉体年齢も偽装してるんだろう? この組織は相当周到みたいだね。しかも、手慣れてる」

  「俺以外にも拉致された人がいるのか?」

  「多分、使い潰して新しく召喚してるんだと思う。同時に何人も召喚したら、流石に世界の防衛機構にバレる」


  「ということで、キミはどうあがいてもこの世界で生きるしか無い。拉致されたこの世界で、生きてもらうしかないんだ。

  僕は嘘ついてないよ、全身全霊で本当のことしか話してない。

  それでもいいから帰りたいというなら協力するけれど、どうする?」

  「……一度、試しに戻ってみるとかできないのか?」

  「いいけど、そしたらもうこちら側には来れないかもしれない。というか、これ無い。そもそも、完全にキミが元いた世界に戻れる確証もない。

  キミは今、糸の切れた凧みたいな状態なんだ。だから……二度目は無いんだ」

  「そんな…」

  「本当にごめん。僕の世界の人間バカがごめん。

  でも、キミがもしもこの世界で生きてくれるなら……僕と契約してみない?」


  「キミが違法拉致者だとバレないように契約する。

  強制的とはいえ、異世界人がこちらの世界に定住するんだ。いいように使いまわされるに決まってる。

  だから、キミが僕と契約してくれるなら僕は全力で君を守る。

  真名を差し出したっていい」

 

  「真名を差し出すってどういうことですか?」

  「……ああ、そうか。キミの世界には魔術が無いんだもんね。

  結論を言うと、真名を握ると言うことは生殺与奪の権利を握ると言うことになる。真名さえあればいくらでも呪殺できるし」



  「俺、異世界人だけど。俺でもあんたを呪えるのか?」

  「ああ。呪いなんて、真名を握れば簡単に行使できる。

  たとえば、そうだな。僕はアリーシュ・ペップバーンを名乗っているけれど真名は【アリソン】と言うんだ。

  キミが「アリソン、死ね」とでもいえば僕の心臓は次の瞬間止まる」

  「おい! 何サラッと真名バラしてるんだ!」

  「キミに信頼してもらうために。試しにやってみる?」

  「いい、やらない……」


  「アンタの誠意を信じる。で、アンタの真名を俺が一方的に握ってるのはフェアじゃ無いから俺の名を明かす。

  俺の名前は【瀬尾虎之助】、アンタみたいに二つ目の名前とか、隠し名なんてものはないからつけてくれよ」

  「ばっ! ちょ、何したんだばか!!」


  「契約しようか、アリソン。

  俺はアンタを未知から守ってやるから、アンタは俺をこの世界から全力で守れ」

  「ああ……勿論だ、セオ」


  そういう流れで義理の親子になる二人。セオドラと二つ目の名前を得た虎之助は新しい人生を歩み出すのだが___しかしアリーシュは天才ゆえにめちゃくちゃ「怪異/未知(オカルト)」に狙われていた!


  しょっ中オカルトに巻き込まれるアリーシュを、未知の本質を見抜く瞳をもつ異世界人・セオドラは守り抜けるのか!?

  困った義父を世話する義息子のドタバタコメディ

 


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