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禁断主従の立志伝

  禁断主従の立志伝


 21世紀に隕石が墜落し、隕石とともに飛来した未知のウイルスによって地球人は滅亡の危機に瀕していた。

  隕石により主要都市は破壊され、ビルは倒壊し火災等の二次災害で電気・ガス・水道全てのライフラインが停止。

  火山は噴火し地震が起きる。津波に飲まれた都市多数。さらには終末論者カルトのテロにより世界はまさに世紀末。

  追い討ちをかけるように、宇宙のウイルスに感染したものは悪魔に取り憑かれたように凶暴化し、化学では証明できない、超能力や魔法とでも言うべき未知の現象を引き起こしながら街を破壊し無辜の民を惨殺した。

  人は感染者を怪物モンスターとよんで恐れ、ウイルスはdemonvirusデモンウイルスと、わざわざ悪魔の名をつけるほど恐れられた。

  生き残りの人類は一つの場所により集まり、隠れながら暮らしていた。

  感染爆発から十余年、「時透夢二」という一人の天才が一つの論文を発表。

  demonvirus感染者は皆、未知の毒素(demotoxin)に遺伝子情報を書き換えられてもはや別の生き物になっていること。

  そして、ウイルスは2〜5年ほど体内で潜伏し、ある時突然発症することなど。

  今の人類はまだ発症していないだけで、いずれ怪物病を発症すると。

  同時に発表された、人類が生き残るための治療法。それは透析。

  体内から機械を通して人口的に毒素を排出させ、遺伝子情報の書き換えをこれ以上進行させなければ発症することはない。

  10年前と比べてわずか一割へと数を減ら続けた人類は、ようやく宇宙からの侵略者と戦う術を得た。

  時透博士はさらに研究を進め、demonvirusに感染した母体から生まれた赤ん坊は生まれながらに細菌のキャリアであり、例外なく「人間には存在しない臓器」をもつ奇形児として出生していることを発見。

  その赤ん坊たちは透析を行わなくても、その新たな臓器である程度のdemotoxinを代謝できることも発見した。未知の臓器は三日月のような形から「朏臓」と名付けられた。

  やがて透析装置は使いやすいように小型化されてゆき、開発の副産物として発見された魔法の正体。

  demotoxinが体外に排出され、空気に触れることで空中で火や水、電気などさまざまな未知の現象へと変化していた。

  化学者たちはさらに研究をすすめ、 demotoxinは特定の電気信号を流すことで外気に触れた時に起こす化学反応が異なることを発見し、これを利用して魔術兵器を作るに至る。

  体外にdemotoxinを排泄しつつ魔法事象を起こさせる「出力機」と、これを効率的に魔法へ変換するための電気信号(術式)を流す装置、「演算装置」の発明。

  これにより人類は「魔術」を獲得した。

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  そして、それからおよそ400年後の25世紀。

  人類はdemonvirusと共存していた。

  かつての名残で国家は未だ一つのままで、「統一国」と呼ばれている。

  昔の国名は都市名となり、今でも残り続けてる。

  怪物に侵略された名残で、六大陸のうちユーラシア、アフリカ、北アメリカ、南アメリカ、南極の五大陸は未だ怪物に支配され、人類の生息域は未だオーストラリア大陸とインドネシアのみ。

  人間は怪物に支配されている残りの大陸をもう一度取り戻すことを目標にしていた。(人類は魔術と共存し、科学技術と同時に魔術技術が発達している)


  そして、そんな大陸奪還のための勇敢な戦士こそが魔術士。魔術士養成学校を卒業した一部のエリートのみが名乗れる特別な称号だ。

  鵜戸大樹うどたいきもそんな魔術士を目指す一人の学生だったが、彼には魔術士を目指す上でとても大きな欠陥があった。

  それは、demotoxinの後天的過剰代謝障害。原因は幼い頃の無理な魔術行使により代謝酵素誘導が起きたこと。

  ゆえに、大樹は一つの魔術を使うのに他人の10倍ものdemotoxinが必要だった。生成量に使用量が追いつかないという、魔術士を目指す上では致命的な欠陥。しかし普通に生きる分には他人よりも長生きができるお得な能力。

  諦めろと何度も言われたが、どうしても魔術士になりたい大樹はdemotoxinを魔術に変換するための電気信号___通称術式の開発に力を注ぐ。

  低コストで行使可能な術式をいくつも開発した功績で魔術士養成学校には入学できたものの、魔術士養成クラスではなく術式開発クラスへの入学になってしまう。

  劣等感に苛まれる大樹だが、ある一人の《少女》との出会いで運命が変わる。

  その少女とは、自分と同じく血管を抱える()()使()()……真崎司まさきつかさ

  彼女の抱える障害は大樹とは反対にdemotoxin過剰生成障害。さらに彼女は変換魔法使いだったのだ。


  (魔法使いとは、変換装置と出力機を使わずに魔術が使える特殊能力者たちのこと。

  魔法使いにもタイプがあり、身体負荷をdemotoxinに変え、より多くの魔法が打てる変換型と、身体負荷をdemotoxinに変えてより強力な魔法を打ち出す出力型の二つがある。

  しかし、出力機と演算装置を使わない魔法というのを恐れられ、数十年前までは「準怪物」などと呼ばれ隷属魔術で奴隷として扱われていた。


  *隷属魔術を使うと、命令の絶対服従や体罰の行使のほかになぜか主従でdemotoxinが共有できるようになる。


  先代の国主による奴隷解放宣言後に人権を得たけれど、未だに差別は残る。

  そして、その負の歴史から隷属魔術は禁術として規制されることになる)


  彼女は自分と隷属契約を結び、自分とdemotoxinを共有しようと言い出す。

  大樹は「違法行為だ!」とそれを咎めるけれど、

  「人類は魔法使いを同族と認め、これを隷属させることはあってはならない」という法律の文面を逆手に取り、「魔法使いが魔法士を隷属させるのはあり」と抜け道を提案。(ちなみに隷属魔術を故意に使ったものは問答無用で死刑になり、その死をもって隷属を解除することになる)


  「このままだと僕はそう遠くないうちに怪物病を発症して怪物になってしまう。

  でもキミと契約を結べば、僕は助かるんだ。人助けだと思って、僕と契約しないか?」


  真崎にそう言われ、大樹はそれを了承。自分で隷属装置を密造し、一度こっそり捕まえた怪獣を使ってテストしたうえで己に使用。

  そして、死刑のリスクを背負いながら、大樹と司は魔術士への道を歩く___。


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