表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/53

救出

 カチューシャのナビに従い、ルビーが捕らわれている部屋へと向かう。

 途中、突風で窓際に置いてあった花瓶が揺られ落下した。床に落ちる直前でエイルがキャッチし事なきを得た。

 僕達はなんとかルビーが捕らわれている一室の前に到着した。

 ルビーが捕らわれている部屋は物置小屋だった。父上はルビーをモノ扱いしているのか。そのことを納得出来ず内心で憤った。


「エドリックさん、お願いします」

「任せてくれ」


 エドリックさんに音遮断の付与魔術を依頼する。

 エドリックさんは懐から御札を取り出し小声でブツブツと呪文を唱え、御札を張った。


「OK、これで暫くは室内で音を立てても漏れない。室内では室外の音も聞こえないから注意してくれ」

「助かります」


 僕とエイルが剣を抜き、いつでも突入出来るよう構える。

 室内に何人いるか分からない。敵が少人数であることを祈る。僕達は突入と同時に一撃のもと敵を無力化する必要がある。失敗したらルビーを危険に晒すことになる。


「それじゃゆくぞ。3,2,1,ゴー!」


 エドリックがカウントに合わせて扉を勢いよく開ける。勢いに反して扉は音を立てない。

 エイル、僕の順番で床にうっすらと埃が積もり、カビ臭い室内になだれ込む。

 室内最奥にある丸テーブルの上に鳥カゴがあり、ルビーがいた。

 敵はサラディンとサラディンの部下のみ。二人は僕達に背を向けルビーを見ていた。ルビーがお腹を抑え苦しんでいるように見える。

 サラディンの部下がこちらに気付く剣を構えようとする。エイルはそれより早くハイキックで剣を弾き、剣の柄で側頭部を叩き失神させた。


「曲者か!」


 サラディンが吠える。咄嗟に剣を抜き振り返ろうとする。僕が放った平打ちが偶然防がれ、サラディンは無理な体勢だったためかルビーの鳥カゴが置いてある丸テーブルの位置まで後ずさった。

 同じタイミングでモラル、カチューシャ、エドリックも室内に入り、エドリックが扉を閉じる。


「坊っちゃん! それにエイル様も何故ここに!?」


 サラディンが驚きの表情を見せる。ルビーの入った鳥カゴを手元まで寄せる。


「大人しくルビーを解放しろ。これ以上罪を重くするんじゃない」


 サラディンに警告する。そして聞き入れられないことを予測し、どうやってルビーを助けるか算段を立てる。僕がサラディンの気を引いてる間にエイルの隙をついてもらうか?

 そんなことを考えている間にサラディンは油断なく僕達を見回した後、あっさりと剣を離し手を上げた。


「ええ、指示に従います。どうやら潮時のようですな」

「えっ」


 驚くほどあっさりとこちらの指示に従ったため思わず拍子抜けしてしまう。

 

「何でそんなにあっさり降参するだ?」

「このような悪事が近衛騎士であるエイル様と、神殿騎士の御仁に目撃されてしまったのです。もう旦那様でも隠し通すことは無理でしょう。私もやりたくない仕事はここまでとさせていただきます」


 サラディンが嘘を言っているのか一瞬疑うが、そうではないと判断した。元々嘘が嫌いな性格だったし、発言にしたって至極真っ当だ。それにやや自暴自棄気味ではあるが、妙に晴れ晴れとした表情をしている。


「分かった。降参を受け入れよう」

「私の同様の処置をお願いできますか? こやつもやりたくてやったわけではございません」

「分かった。そのように便宜する。 エドリックさん、いいですよね?」

「勿論」


 エドリックさんからも了承を得た。

 鳥カゴの扉の施錠機能を果たしていた手の平サイズの鉄の棒を横にスライドさせて引き抜く。

 ルビーが勢いよく中から飛び出てきた。


「ルビー姉さん!」


 カチューシャがルビーに勢いよく抱きつく。ルビーは驚きつつもカチューシャをしっかりと抱きしめ、感謝の言葉をつぶやいた。


「ありがとう、カチューシャ。カチューシャの勇気に救われたわ」

「ジャスティスのお陰だよ。勇気をもらって私も頑張ろうと思ったんだ」

「なるほどね」


 ルビーがカチューシャから離れ、僕の正面に浮遊する。


「助けに来てくれたことを感謝するわ。人間にも良い奴がいる。考え方を改めるわ」

「そりゃどうも。悪い人間もいるから見極めて付き合ってくれたら嬉しいよ。それじゃ早速トンズラしよう」


 ルビーを救えたとはいえ、こちらが不利なのは変わりない。わざわざ屋敷に居続ける理由もない。さっさと撤収しよう。後はエドリックさんに父上を訴求してもらうだけだ。

 そんなことを考えているとモラルが扉が開いたままになっている鳥カゴを凝視している。


「ねぇ、何か揺れてない?」

「どういうこと?」


 モラルに釣られて僕も鳥カゴを見る。

 鳥カゴが小刻みに震え、カタカタと音をたてる。


「鳥カゴから離れて!」


 室内にいるメンバー全員に聞こえる叫ぶ。

 鳥カゴの震えはおさまらない。むしろ酷くなりポルターガイストのようにバタバタと揺れ、ベルをかき鳴らしたような音が室内に響き渡る。

 全員が鳥カゴを警戒し、体を硬直させる。これから良くないことが起きるような気がする。


「とにかく部屋から出よう。脱出を最優先で!」


 この際、父上に見つかっても仕方がない。鳥カゴの側にいることの方が危ないと判断してドアに視線を向けると、ドアが勢いよく開く。

 父上と見慣れない男が現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ