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初クエスト 薬草採取

 翌日早朝。薬草採取のためにサウレア森林に僕とモラルは向かった。

 森の入口にはゴブリン注意の看板。中をを覗き込むとやや暗い。


 初めてということもあり内心ドキドキしている。

 モラルも緊張しているのか少し体をこわばらせ、言葉少なくなっている。


「二人でやれば上手くゆくさ。大丈夫」 「・・・そうですよね!」


 声をかけると、安心したようにモラルは微笑んだ。

 僕たちは地図を片手に森の中へと足を踏み入れた。


 おっかなびっくりではあるが、時折ある標識を目安にしながら薬草の群生地を探す。

 モンスター図鑑とクエストガイドブックを熟読してきたので順調に探索を進められている。肩の力が抜け始めた頃に子供の悲鳴が聞こえてきた。


「わ、わっーーーー!!!」


 モラルに顔を向けるとコクリと頷いてきた。


「行くよ!」


 僕とモラルは急いで声のした方へ向かうと少年とゴブリンがいた。

 少年は尻もちをつき後ずさる。赤茶の錆が浮いた短剣を右手に持ちながら、ゴブリンはニヤニヤ笑いながら近づく。

 錆びているとはいえ、ゴブリンに短剣で刺突されたら少年はタダではすまないだろう。


「うおおおぉぉぉ!!!!」


 僕はゴブリンを威嚇するように怒号をあげながら茂みから飛び出す。

 ゴブリンはぎょっとしたように僕に振り向き体を硬直させる。

 ゴブリンに通常のスマッシュ(スマッシュLV.10)を叩き込みゴブリンを撃破する。


 <スキル爆速強化によりスキルポイントを1取得しました>


 脳内に流れるレベルアップのお知らせ。

 最下級の魔物を倒すだけでレベルが上がることに驚きつつも今はそれどころではない。


「大丈夫かい?」

「う、うん」


 僕が少年に声をかけると、少年は首をコクコクしながら返事をした。

 辺りにモンスターの気配ないことを確認してから剣を払い血糊を飛ばし大剣を納刀する。


 少年を確認すると年は10歳程でゴブリンと同じ程度の背丈だ。逃げ回っていたためか木枝と擦れて衣服はところどころ破け、顔や腕などに擦り傷がある。


「傷を癒やすね」


 モラルは一声かけてから少年にヒールをかけると傷はたちまちに癒える。

 少年は目を丸くした。


「お兄ちゃん、お姉ちゃんありがとう!」


 少年は安堵し、僕達を信用してくれたようだ。

 とりあえず何で森の中にいたのか聞いてみるか。


「お父さんやお母さんとはぐれたの?」

「ううん、独りで森に入ったんだ」


 少年の勇敢さと無謀さに驚く。完全武装でおっかなびっくり探索している僕達とは真逆だ。


「森の入口の看板は見たよね?」

「うっ……。母さんが病気してるから薬草が欲しくて森に入ったんだよ。シヘンの薬屋にここ最近薬草が並んでいないんだ。だから採りに来たんだ!」


 少年が逆ギレ気味に事情を説明する。別に頭ごなしに怒るつもりはない。

 それよりも昨日の冒険者ギルドで戦士が提出したヘナヘナの革袋が脳裏によぎる。冒険者が採ってくる薬草が少年とも密接に繋がっていたわけだ。


「君はお母さん思いなんだね。偉いね。今日は一緒に薬草採取をしようか。次からは僕達が薬屋に並ぶだけ採ってくるから薬屋に通う。いいね?」

「分かった! お兄ちゃんありがとう!!」


◇ ◇ ◇ ◇


 3人で探索を始めると、暫くして薬草の群生地を見つかった。

 少年───ヤグ少年は意欲的に薬草採取をしていた。僕達も精力的に薬草採取を行った結果もってきた5袋の革袋は全てパンパンになった。その頃には日が傾き始め、慌てながらサウレア森林を出るのであった。


 ちょうど陽が沈む頃、ヤグ少年と共にソトヘム村につく。僕達に村人が気付く。


「おい! ヤグが帰ってきたぞ」


 わらわらと村人が集まる。

 そんな中、頭一つ大きい屈強な男がヤグ少年にガバッと抱きつく。


「ヤグ、心配したぞ! どこ行ってたんだ!!」

「薬屋に薬草なくて森に入って……父ちゃんっっ!!!」


 釈明をしようとしたが、父親の顔を見てヤク少年は泣き出した。

 暫くしてヤグパパが僕達の存在に気付く。


「貴方達がヤグを助けてくれたのですか?」

「ええ。間に合ってよかったです」

「ああ、何とお礼申し上げたらよいか……。ちょっと待っていてください!」


 大慌てでヤグパパは家に戻りソーセージを沢山持ってきた。


「今年一番の出来だ。持ってってくれ」

「ありがとうござます」


 断るのも失礼かと思い、僕はソーセージをいただいた。

 村人達を見ると、僕の革袋に目を向けている。

 村人達に僕は聞いてみた。


「あの、もしかして薬草が足りていなかったりしませんか? 多めに薬草を採ってきたので欲しい方がいましたら分けますよ」


 僕が声をかけると、最初は控えめに、徐々に村人たちが列にを作り僕達の前に並びだし、薬草を均等に分配した。

 村人達は、「ありがとう」とか「恩にきる!」など口々に感謝の言葉を投げかけてきた。最終的にギルド提出分を除くと全て村人たちに分け与えた。


「多めに採ってきて良かったですね」

「うん。悪い気はしないよ」


 満足げなモラルに僕は同意した。

 ソーセージをマフラー代わりに首に巻けるくらい貰っちゃったしこれで釣り合いがとれる位だと思う。

 他の村人達からもお礼の品々を渡そうとしたが、両手が一杯だからと丁重にお断りさせていただいた。


 薬草の分配が終わる頃には陽が完全に落ちた。辺りに夜が訪れた。

 帰りがあまり遅いとギルド受付嬢のエレーヌさんに怒られるかも知れない。


「また今度来ます」


 手を振りながら村を去る。


「お兄ちゃん、お姉ちゃんまた来てね!」


 ヤグ少年と村人たちが口々に声をかけてもらいながら僕達は冒険都市シヘンに戻った。


◇ ◇ ◇ ◇


 大慌てで冒険者ギルドに戻ると入り口に『CLOSE』の木板が扉にかかっていた。

 室内はまだ明かりが点いている。


 どうしたものかと扉の前で立ち往生する僕とモラル。

 辺りに目をやると同じ通りに飲食店からも明かりが漏れ、喧騒が響き渡る。

 風が吹いてを身をブルリと震わせる。まだ春先の夜ともあって少し肌寒い。


「どうしましょう・・・?」


 モラルが入ってよいのか判断がつかず僕に聞いてきた。


「扉が開いたら薬草だけでも渡そっか。報酬はいいけどさ」

「そうですよね。薬草だけでも今日渡した方がいいですよね」


 モラルは僕の言葉に背中を押されたのか、自分を納得させるようにコクコクと頷く。

 僕は恐る恐る扉を押すと開いた。

 ソロリと中を伺うとテーブルカウンターでエレーナさんが作業を続けていた。

 エレーナさんが目元をゴシゴシ拭って顔を正面に上げると、僕と目線があった。

 少し気まずそうな、ホッとしたような表情をした後にじーっと僕の顔を見る。僕は射竦められたように動けなくなる。


「戻ってきたのですね。もっと早く戻ってこれなかったのですか? 心配しましたよ」


 エレーナさんが恨めしそうに目尻をちょっと上げてクレームを言う。


「す、すみませんでした」


 エレーナさんに僕は平謝りした。返す言葉もない。

 すると、エレーナさんの目尻は下がる。


「次からは陽が沈む前までに戻ってきてください。まだまだ外は冷えますから風邪を引いたらどうするのですか? ……中に入って温まってください。後、クエストの報告をお願いします」


 エレーナさんは、いつも表情の薄い顔に戻る。

 表情は薄いけど物凄く親身になって接してくれる。そんなエレーナさんの心配りに感動して僕は胸が温かくなるのを実感した。モラルも顔を綻ばせている。後、自分の立場はヤグ少年とあんまり変わらないな。

 僕達は恐る恐る中に入る。

 

「それでは採取品を提出してください」


 エレーナさんはトントンとカウンターを叩くと離席する。

 離席している間に採取した薬草とソーセージ、ゴブリンの魔石を提出する。

 暫くして両手に湯気が昇るマグカップを持ってエレーナさんが戻ってくる。まじまじとカウンターの上に乗っている薬草とソーセージを見て一言。


「……何で薬草とソーセージがあるのですか?」

「実は……」


 マグカップ───お茶をいただきながら僕が説明をすると、少し呆れつつやれやれといった表情をしながらエレーナさんは納得する。


「こちらが提示した薬草を収めていただければ、余剰分をどう取扱おうと冒険者の自由です。───まぁ、売却する手間を考えたら素直に冒険者ギルドに収めた方が楽だとは思いますが」

「なるほど……」


 怒られるわけではなさそうで良かった。多分本当はエレーナさんの言う通り、冒険者ギルドに薬草を全部買い取ってもらった方が良いのだろう。冒険者ギルド以外にも、鍛冶ギルドや薬剤ギルドがある。個人的に薬草を消費者に売り捌いたりすると薬剤ギルド良い顔はしないだろう。僕個人が薬剤ギルドに売り込みにいっても同様だ。なるべく冒険者は冒険者ギルドを介して取引する。エレーナさんにだったら任せて問題ないだろう。


 そうこうしている内に査定が終わる。


「一人銀貨3枚です。街の薬草供給が滞っておりましたから大助かりです。ぜひこの調子で頑張ってください」


 エレーナさんが依頼票に『済』を示すハンコを押す。

 そして銀貨3枚(報酬)を渡してくれる。僕の3日分の生活費に相当する。


「やりましたね!」

「うん。モラルもお疲れ様」


 モラルの声は弾み、嬉しそうにしている。色んな気持ちがごっちゃになって僕も嬉しい。これで地に足つけて暮らしてゆけるし、冒険者として一人前に認められたような気がした。やったことが誰かに認められてお金も貰えるなんて嬉しい。


「後、このソーセージどうしますか?」


 モラルはカウンターの前にあるソーセージを指差す。流石に食べきるには量が多すぎる。10kg位はあるのではないだろうか。


「お二人が良ければ、ソーセージも買取ますよ。上等なやつですから飲食ギルドが喜んで買い取るでしょう」

「エレーナさん、お願いします。───それと、3人でソーセージ食べませんか? 余ったのを買い取っていただきたいのですが・・・」


 感謝の気持ちを表したくて上目遣いで聞いてみると、エレーナさんは苦笑する。


「私はまだ就業中なんですけどね。いいですよ。今日はここまでです。パンやサラダを飲食店でテイクアウトしてきてくれますか?」

「はい!」


 僕は冒険者ギルドを駆け出した。

 その後、3人で肉の旨味いっぱいのソーセージをお腹いっぱい食べた。

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