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逮捕

「別に触ったからって何ともないだろう?」

「ええ、そのようですね」


 レオンさんがワルガスをリラックスさせるようにおどけて見せた。

 ワルガスは内心不安があったのか、やや大げさな身振りをしながらレオンさんに答えた。

 筒状のアーティファクトに付いている振り子は、少しスピードを落として左右に揺れる。それを見て感心したようにモラルが口を開いた。


「ジャスティス、凄い。振り子のペースがゆっくりになったよ」

「うん、凄いね。このジョークグッズは良く出来ている。これなら、お互いを知るのにうってつけだろうね」


 チラリとレオンさんに目配せすると、レオンさんは、小さく頷く。目に理解の色が灯る。


「ではワルガス君、始めようか」

「ええ、お手柔らかにお願いします。ちなみに自制心を試すとのことですが、何をされるんですか? 夜中に苦行は避けたいすね」

「痛みはないから安心してくれ。知恵を借りたい。後、君の人となりを知りたい」

「どういうことでしょうか?」


 わけが分からんと、理解が追いついていないようで、ワルガスはレオンに尋ねる。


「実は今日、娘のマリアが暴漢に襲われたんだ」

「えっ!?」


 ワルガスが驚く。

 内心を表してか振子がギュンッと左右に揺れる。

 ワルガスの驚き具合以外にも振子の様子も確認するレオンさん。


「ワルガス君は、我がことのように受け止めてくれるとは。痛みいる」

「え、ええ……」


 振子は幾分落ち着きを取り戻すが、素早いままだ。カチカチカチ。カチカチカチ……。振子の音だけが室内で響き渡る。

 ワルガスの頬に汗が垂らしソワソワしだした。


「幸い、暴漢を退けることが出来たので娘は無事だ」

「それは何よりです」

「暴漢達を探しているのだが、見つかっていない。つまり、捜査が手詰まりになっている状況だ。この状況で打つべき手は何だと思う?」

「地道な調査が必要かと。相手の目的が分からないことには有効な手は打てないでしょう」

「全くもってその通りだ。本件についてはそれとなく周囲にちらつかせて周りの反応を窺ってみるよ」

「それがよろしいかと」


 レオンさんが、この話はこれでおしまいというように、肩をすくめた。

 ワルガスは場の空気変わったことに対して心底ホッとしたようにしている。振子のペースも始めた時点のペースに戻っていた。


「君のお陰で調査方針が固まったよ。感謝する」

「お役に立てて何よりです。犯人捕まるといいですね」

「全くもってその通りだ」


 レオンは満足げに頷く。

 モラルはワルガスを冷ややかに見ていた。


「方針が決まると話すことが無くなってしまうな」

「もっとお役に立てれば良かったのですが……」

「ああ、そうだ。マリアから預かっていたものがあるんだが、心当たりはないかね?」

「何がですか?」


 レオンさんが、懐から経典を取り出す。

 ワルガスが驚きの声を上げた。


「そっ、それは!!」


 振子が今までにない速度で左右に触れている。

 ……今までで一番分かりやすい反応を彼はした。

 レオンさん何も分かっていないフリをしながら不思議そうにワルガスへ尋ねた。


「何をそんなに驚いているんだ? 何かあったか?」

「そ、その経典は私のでございます。恥ずかしながら落としてしまいまして。いやぁわざわざお持ちいただきありがとうございます!」

「では、君がマリアの経典を持っているのかな?」

「はい、その通りでございます! すぐにご息女の経典をご用意いたします!」


 慌てて出てゆこうとしたワルガスをレオン子爵が手で制した。


「ヨイヨイ。落ち着くんだワルガス君。話の続きを聞いてから動いて欲しいな」

「つ、続きとは何でしょうか?」


 レオンさんはもう一度懐に手を伸ばす。

 出てきたものは用紙───会計帳簿だ。


「君の経典の中から出てきた。期待していたのに残念だよ」

「あっ、ああ……」

「娘に手を出して、タダで済むと思うなよ?」


 レオンさんが、アーティファクトに手を触れる。アーティファクトに真っ赤な灯り、振り子は壊れそうな勢いで左右に揺れる。

 ワルガスはへなへなとその場に座り込んだ。その表情には絶望が滲んでいた。

想定よりも短くなりましたが、第2部のメインストーリーはこれで終了です。

後はエピローグをチマチマ書いてます。

お付き合いいただきありがとうございます。

ワルガス側の抵抗がない、主人公が活躍しないなど、ここら辺は今後の課題っすね。

お陰様で何とか区切り良い所まではこぎつけられそうです。

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