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冒険者登録

 僕とモラルは比較的近い距離にある冒険都市シヘンを目指して平原を歩く。


「ふーん、冒険者に助けられたことがあってモラルも冒険者になろうと思ったんだ」

「ええ。それで道中でオークに遭遇しました」

「そりゃ災難だったな」


 道中で世間話をしながら過ごしていた。

 二人でシヘンを目指した方が安全だからこうして一緒に向かっている。

 僕の過去を知らずに接してくれるモラルのおかげで気持ちが軽くなったような気がする。


「それにしてもジャスティスさんの剣技すごいですね」

「ん? ああ、僕もびっくりだよ」


 スキルウィンドウを呼び出す。


───

スキル爆速強化

スキルポイント 10


スマッシュ (LV.31/100,000)

筋力向上  (LV.1/100,000)

体力向上  (LV.1/100,000)

素速さ向上 (LV.1/100,000)

───


 もう一度確認してみたが、スキルレベルの上限は10から10万に拡張されている。

 スキルポイントもしっかり10増えている。

 この世界ではスキルレベルの最大値は10までとされている。なのに僕は10万まで上げることが出来る。

 LV.31のスマッシュをオークに放つことで勝利することが出来た。


「あんなすごい剣技、私見たことないです。」

「まぐれだよ。まぐれ。それにモラルがいなかったら負傷してあれ以上戦えなかったよ」


 そう、LV.31のスマッシュに僕の肉体は耐えることが出来なかった。

 折角だから筋力にスキルポイントを振っておくか。


───

スキル爆速強化

スキルポイント 0


スマッシュ (LV.31/100,000)

筋力向上  (LV.11/100,000)

体力向上  (LV.1/100,000)

素速さ向上 (LV.1/100,000)

───


 筋力にスキルポイントを割り振ると体が軽くなったような気がする。

 革鎧を着て腰に剣をさしているにも関わらず普段着で歩いているかのようだ。

 

「ジャスティスさんも、冒険都市シヘンに向かうということは冒険者になるということですよね?」

「いや………、特に決めてないよ」


 何せこちらは外れジョブを引いて実家を追放された後だからね。

 まずは日々を暮らせるだけの収入が得られる仕事に就ければいいと思っていたのだから。


「でしたら、私と一緒に冒険者になってください! お願いします!!」


 モラルが勢いよく頭を下げてお願いしてきた。


「モラル、頭を上げて。いいよ。どうしようか決めてなかったからさ」

「本当ですか!? ありがとうございます!!」


 モラルが満面の笑みを返してくる。僕はちょっとくすぐったい気持ちになる。

 流石におおっぴらに正義の味方になりたいなんて言えないよ。

 『ヒーロー』がどこまでやれるジョブなのか分からないけど剣士としての道がちょっとひらけたような気がした。


◇ ◇ ◇ ◇


 カランカラン。

 冒険都市シヘンに到着し冒険者ギルドの扉を開ける。

 室内には剣士に魔法使いに弓使い。熟練っぽい者から初心者まで複数人いる。

 そんな冒険者たちの一員になることを考えるとちょっとドキドキしてくる。

 前方カウンターにいるメガネをかけたギルド受付嬢に声をかけてみた。


「冒険者になりたいのですが、どうすれば良いのでしょうか?」

「こちらの用紙に書き込んでくれれば冒険者登録できますよ」


 ギルド受付嬢が手慣れた様子で用紙を2枚出してくれた。

 案内に従い僕とモラルは用紙に書き込む。


「ジャスティスさん、字が綺麗ですね」

「ん? ああ、習字も子供の頃からやってたからだね」


 結局は自分のためだたんだろうが、父親だったカットナルは教育熱心だった。教師を雇い入れて剣技を始めとして学問も勉強してきた。

 モラルの字はやや拙いながら丁寧に書かれていた。丸っぽい女の子らしい字だった。

 用紙を書き終えたのでギルド受付嬢に受付用紙を提出した。


「モラルさんのジョブは『ビショップ(司教)』ですか。良いジョブを授かりましたね。ジャスティスさんは『ヒーロー』?? 初めて聞くジョブですね・・・」


 困惑を浮かべながら僕をギルド受付嬢が見る。


「ええ、ジョブ鑑定士の方にもそう言われました。出来ることはスマッシュと基本的な身体能力向上のスキルのみです。なのでタイプとしては前衛職です」


 なるべく正直に僕はギルド受付嬢に説明した。<スキル爆速強化>とスキルレベルの上限値が1万倍になっていることは伏せておく。伝えない理由はその全容を自分自身も掴めていないからだ。


「スキルツリーはどうですか? 今持っているスキル以外に取得可能なスキルはありませんか?」

「他に取得出来るスキルもありません」


 ギルド受付嬢の表情が曇る。モラルがおずおずと尋ねた。


「あの・・・、スキルツリーとは何ですか?」

「スキルツリーは使用出来るスキルのスキルレベルを上げることで使えるように派生スキルの早見表です。心の中で『スキル一覧』と念じれば確認することが出来ますよ」

「なるほど・・・、本当だ! はぁ───私、頑張ればリザレクション(死者蘇生)も授かることが出来るのですね。───でも最短でスキルポイントを90取らないといけないなんて現実的じゃないですね」


 ガラス越しから欲しい物を眺めるような表情でモラルが嘆息する。

 スキルポイントは、名前の通りスキルに割り振るポイントだ。

 修業をしたりモンスターを倒して経験値を貯めることでスキルポイントを獲得出来る。


 【一般的】にはスキルポイントを獲得するのは大変なことだとされている。ましてや90も獲得している頃には間違いなく熟練冒険者の仲間入りだ。

 しかしヒーローは、【スキル爆速強化】は既にスキルポイントを40も取得している。はっきりいって異常だ。


「気長に頑張ってください。───ジャスティスさんはいかがですか?」


 僕が記入した用紙を確認しながらギルド受付嬢が尋ねてきた。


「僕にスキルツリーはないです。用紙に記入したものが全てです」

「なるほど・・・、そうなると冒険者としては大成出来ないかも知れませんがよろしいですか? 勿論こちらとしては大歓迎です。ドラゴンや魔族退治だけがクエストではありません。ゴブリン退治は人手が足りなくて困っている位ですから。これ程達筆なら事務仕事デスクワークの進路があることも忘れないでくださいね」

「どこまでやれるか分かりませんが冒険者になりたいです」


 元々剣の道に進みたくて厳しい修業をやってきたのだから冒険者をやりたい。どうしても駄目だと思ったら事務仕事の道を目指せばいいだろう。


「わかりました。二人の申込みを受領します。今後は私、エレーヌがお二人をサポートさせていただきます」


 エレーヌさんが、微笑を浮かべながらペコリとお辞儀する。


「こちらこそ、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 僕とモラルもお辞儀した。モラルはニコニコしていた。

 それからエレーヌさんは机の引き出しの中にあった首飾りを差し出してきた。首飾りの先端には堅木───クスノキが括られており、ギルドのエンブレムである剣と杖が焼印されていた。


「識別票をどうぞ。Fランクからスタートです」

「ありがとうございます」


 エレーナさんの話によると、冒険者ランクはF〜Sまであり、ギルド評価でランクが昇格・降格するらしい。

 また、ランクが上がることでより困難なクエストを受けることが出来る。結果、より多くの報酬を貰えるようなる。

 最初のうちはエレーナさんが紹介するクエストを受けてほしいとのこと。クエストは安全第一で行うように念入りに注意された。

 様々なチュートリアルを受け、エレーナさんが本題に入った。


「では早速お願いしたい依頼は【薬草採取】です」

「薬草採取ですか?」


 エレーナさんが提示したクエスト(薬草採取)にモラルが少し拍子抜けしていた。モンスター討伐を想定していたのだろうか?

 内訳としては近隣のサウレア森林で薬草採取をしてくる。森にはゴブリンがうろついているから単独なら撃破してほしい。まずは1ヶ月、薬草採取を頑張れとのこと。


「分かりました。やります。───しかし、ちょっと怖いですね。森の中でゴブリンと遭遇する恐れがあるなんて・・・」


 モラルはオークの一件を思い出したのか、顔を少し強張らせる。


「ええ、怖いですよ。だからこそまずは1ヶ月ちゃんとやってほしいのです。ギルド内にあるモンスター図鑑やガイドブックもちゃんと読んでくださいね」


 モラルの所感に対して満足げにエレーナさんが頷く。

 森の中で歩き方やゴブリンや動物の痕跡の見つけ方。そもそもゴブリンがどの程度の強さなのかも分かっていない。

 恐らく表の目的は薬草を採ってくることで、裏の目的は外敵がいる場所で活動出来るようになることなのだろう。


 薬草採取クエストを受注した所で3人組の冒険者がやってきた。構成は戦士・ハンター・魔法使いだった。

 革袋を乱暴に放り投げ、戦士がエレーナさんに話しかけてきた。


「エレーナさん、薬草採ってきたぜ」

「規定の量に達していないようですが・・・」


 エレーナさんは眉をひそめる。

 中身を確かめるまでもなくカウンターにある革袋は中に入っている量が少ないためかヘナヘナと萎れている。彼らは本当に薬草を採ってきたのだろうか?


「あんまり生えてなかったんだからしょうがないだろ。その代わりゴブリン共を蹴散らしてきたぜ」


 懐から赤い石を叩きつけるようにカウンターに置く。───魔石だ。

 魔石はモンスターの体内に含まれている石だ。燃料になったりマジックアイテムの制作材料になったりする。希少品として取り扱われている。

 ゴブリンからも採れるって言ってたよな。撃破したゴブリンの魔石は買い取るとも。


「エレーナさんも言ってたよな? 俺たちには才能があると。だったら薬草採取や野良ゴブリンの駆逐じゃなくてゴブリンの巣穴討伐をやらせてくれよ。俺たちのランクでも出来るんだろ?」


 戦士の乱暴な物言いに僕は面食らう。

 冒険者達の首飾り───識別票をチラリと確認する。僕達と同じFランクだ。


「まだ薬草採取を始めて1週間ですよ。薬草採取でまだまだ下積みをした方がよいかと思いますが・・・」

「それが余計なおせっかいなんだよ!」


 戦士がバンっ! とカウンターを叩く。


「俺達はさっさとランクを上げて、もっと美味い酒を飲んで美女をはべらせたいんだ。こんなところでチマチマ草むしりなんてやってらるか!!!」


 戦士は顔を真っ赤にしてエレーナさんを睨みつける。

 エレーナさんは短くため息をつく。引き出しから依頼票を取り出す。


「・・・分かりました。ではゴブリンの巣穴討伐を任せたいと思います。少しでも危険だと思ったら戻ってきてくださいね? 絶対ですよ」

「ああ! 任せてくれ!! 流石エレーナさん」


 エレーナさんから依頼票を毟りとると戦士達は意気揚々と去っていった。


「果たして生きて帰ってこれますかね」


 無表情でエレーナさんが呟く。感情の篭もらない声に僕は胸騒ぎを覚えた。

クールビューティーなギルド受付嬢が好きな人はブクマをお願いします。

世話好きなギルド受付嬢が好きな人は☆5お願いします。

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