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魔女の館

「あっ、あのボウズ何者なんだ!?」

「テーブルが真っ二つってなんなんだよ」

「ジュリアンの一人勝ちか。マジかよっ」


 ボブが腕相撲に負けたことが意外だったらしく、自警団員達が驚きの声を漏らした。やいのやいのと口々に言い合っている。

 そんな中、一人だけ終始態度を変えないのがモラルだ。宣言するように高らかと告げる。


「皆さんジャスティスの雄姿を見ましたか! 彼は犯人探しに相応しくない人物ですか? そう思う人は彼と正々堂々腕相撲してください」

「「「……」」」


 どよめきから一転、場がシンと静まり返る。

 ボブが周りの反応を確認した後に立ち上がりながら声を上げる。

 


「完敗だ。ボウズがこんなに強いなんて思ってもみなかった。これなら捜索中に遅れをとることはないだろう」

「認めていただけて嬉しいです。繰り返しになりますが、僕達は自警団の手柄を横取りするつもりはありません。レオン子爵とマリアちゃんの悩みを解消したいだけです」


 ボブと話しつつ、こちらの意図が団員の皆様に伝わるように再度周知する。

 特に不満の声は上がってこない。

 ボブが僕に手を差し出す。握手を求めてきた。


「よろしく頼むぜ。期待している」

「よろしくお願いします」


 ボブの手を握る。こちらを労るような握り方。今度こそ友好関係を築けたようだ。

 あっ、ついでにジュリアンの件も注文つけさせてもらおう。

 ジュリアンを無理矢理賭けに誘った男に声をかける。


「そこの貴方」

「えっ、なんだよ」

「ジュリアンにちゃんと賭け金渡してくださいよ。変な因縁とかつけるのも無しですよ」

「わ、分かってるって!」


 男が急にあたふたしだした。

 とりあえず釘を刺しておけば問題ないだろ。

 ジュリアンはホッとしたような表情をしている。彼にとっても気がかりだったのではないだろうか。


「それではボブさん、捜索の件でお話出来ませんか?」

「おう、いいぜ」


 パンパンっと、お開きと言わんばかりにボブは手を叩く。注目がボブに集まる。


「ボウズには俺から話をしておくから、お前らは引き続き捜索を頼むぞ」

「「「分かりやした!」」」


 ぞろぞろと団員達は部屋を出てゆく。


「それじゃ俺達も話をするか。場所を少し変えよう」

「分かりました」

「ふふん、行きましょう」


 モラルは得意げにうなずく。あの、モラルさん、そろそろドヤ顔辞めてくれませんかね。僕はそろそろ居心地が悪くなってきた。



※※※※※※※


 僕達はもう一度会議室に戻りボブと情報共有を行った。

 捜索対象を貧民街として探しているが、どうやら見つからないらしい。


「探して見つからないとなると、誰かが匿っているか、貧民街以外の場所にいるってことですかね」

「恐らくはそういうことだろうな。現時点じゃ判断材料が少なすぎて何とも言えない所だけだとな」

「なるほど……」


 こう言ってはなんだが、あの3人組はそこまで有能そうには見えなかった。叩けばホコリが出てきそうなタイプだ。

 そんな人間が見つからないということは、そういうことなんだろう。

 こちらからも情報提供をしてみよう。

 懐は裏冒険者ギルドのバッチを取り出す。するとボブの表情に驚きが浮かぶ。


「おいっ、これをどこで拾ったんだ?」

「暴漢を撃退した際に奴らを落としていったものです。何か調査の手がかりになりませんか?」

「くそっ、彼奴等(裏冒険者ギルド)も絡んでるのか」 

「レオンさんから話を聞いたんですが、裏冒険者ギルドに尋問しても何も分からないということですよね?」

「ああ。顔も名前も分からないままやりとりが進むからな。彼奴等だって他人事じゃねえはずなのにな」

「裏冒険者ギルドに殴り込む以外でこのバッチに使い道ってないですか?」

「そうだな……」


 腕組しながら熟考するボブ。

 それから苦虫を潰したような表情で続ける。


「気乗りしないがアテが無いわけではない」

「詳細を教えてください」

「出し惜しみしてる場合じゃないわ!」


 僕とモラルがボブに対して催促する。

 ボブは出し渋っているけど、捜索が進展するなら何でもやる所存だ。

 なんせこちらは余所者で、信頼を得る所からスタートしなければならないのだから誰に聞いても正直大差はない。多少の手間暇なら出し惜しみするつもりなどないぞ。


「貧民街に魔女の館と呼ばれる道具屋があるんだ。そこの女主人にこのバッチを持っていけば何か分かるかも知れねえ」

「分かりました。僕達が魔女の館に行って話を付けてきますよ。ですから、まずは魔女の館について教えていただけませんか?」

「そうしてもらえると助かる。魔女についてだが───」


 ボブから魔女の館について確認すると、年齢不詳の老婆が貧民街に居座っているらしい。

 ちゃんと対価を支払えば怪我や病気に効く得体の知れない薬草とか、トカゲの干物とかを提供してくれるらしい。

 魔女は呪術に精通しているようで、犯人の所有物から何か分かることとかもあるんじゃないかとのことだ。


「分かりました。そういうことでしたら善は急げです。早速僕達で行ってきますね。────モラルからは何かある?」

「そんな心強い人がいるなら何で最初から頼ろうと思わなかったんですか?」


 バッサリだ。

 モラルが無自覚にボブをえぐる。ボブに対しては本当に容赦ないな。

 ボブの表情がピシリと固まる。


「い、いや、それはだな。判断材料がないと頼みようがないじゃねえか。そういうことだよ。そういうこと」

「ふーん、そうですか」


 心底どうでもいいような、気のない返事をするモラル。

 一応、ボブの主張に正当性がないわけではない。まぁ、正直とってつけたような言い訳だが。

 組織のリーダーがそれで良いのかと思わないでもないが、僕達がアプローチすればよいだけの話だ。


「それじゃ行ってきますね」

「おっ、おう。任せたぜ!」


◇ ◇ ◇ ◇


 さっそく魔女の館に向かい、そして到着した。

 魔女の館はその名に違わぬ建物だった。

 周辺の貧民街建物は四角いボックスのような建物だが、魔女の館はレンガ造りの煙突から屋根までやたらと尖った建物だった。自己主張の激しい建物だ。


 後、気になる点がもう一箇所ある。

 正面扉のから見て手前に左右に大きな柱がある。その上にガーゴイルの石像が鎮座している。配置を考えると訪問者を威嚇する意図があるのかも知れない。あるいは魔除けか何かだろうか。


「何となくだけど気味が悪いね」

「うん。歓迎されてない印象もっちゃうな」

「ここでモジモジしててもしょうがないね。とりあえず中に入ろう」

「う、うん……」


 モラルがやや気後れしている。

 扉を開けて恐る恐る中に入る。

 室内は暗い。


「ごめんくださーい」


 返事はない。

 暫くして目が暗さに慣れて室内の様子を視認出来るようになる。

 天井に薬草やトカゲの干物などがぶら下げられていた。


「うひゃっ!」


 モラルが短い悲鳴を上げる。

 直後、パッと室内が急に明るくなる。眩しさで目がやられる。


「うっ!」

「眩しい!!!」


 僕達が手をかざしながら目を白黒させていると建物の奥の方からしわがれた声が聞こえてくる。


「イッヒッヒッヒ。おチビちゃん達、何のようかね」


声のした方を振り向くと部屋の 奥で、鷲鼻の老女がカウンターテーブルを挟んで椅子に座っていた。老女としては 以外と大きい。僕と同じくらいの大きさがある。

 少し呼吸を整えてから僕は話しかけた。


「こんにちわ。ジャスティスと申します。あなたが館の魔女さんですか?」

「ああ、そうだよ。私が館の主さ。一体何の要件で来たんだい? そこのかわいいお嬢ちゃんを口説くための惚れ薬かい。ヒッヒッヒ」

「えっ、それは困っちゃうなぁ」


 モラルが頬を染め、顔に両手を当ててイヤンイヤンしてる。急にどうしたんだ?

 魔女はそんな僕達をニヤニヤと眺めている。


「えーとですね。ゾルディアック家のマリアちゃんってご存じですか?」

「ああ、知ってるよ。あのお転婆嬢ちゃんがどうかしたんだい?」

「実はですね、マリアちゃんが暴漢に襲われたんですよ」


 魔女は眉をピクリとひそめて、ニヤケ顔をやめる。


「........それで?」

「幸い怪我はありませんでした。僕はその件についてレオン子爵から任されて調査しております。自警団のボブさんから魔女さんを紹介いただき参上しました」

「本当に二人と面識があるのかい。嘘つくと酷い目にあうよ?」


 魔女はまだ懐疑的だ。

 自身の立場を証明するために懐からレオンさんの紹介状を取り出す。


「これがレオンさんからの紹介状です。納得いかないようなら中身を確認いただいてもいいですよ」


 魔女は紹介状を受け取り確認する。


「ふむ、嘘をついてるわけではなさそうだね。それで私に何をさせたいんだい?」

「自警団が犯人を探しておりますが見つかりません。犯が持っていた所持品ならあるのですが、知恵をお借り出来ませんでしょうか?」


 懐から裏冒険者ギルドのバッチを取り出し、魔女に渡す。

 魔女は思案するようにバッチを見ている。


「私は便利屋ではないんだけどねぇ。───バッチを手に入れたのはいつだい?」

「今日の午前中ですね。暴漢達を撃退したのは僕達です」

「なるほどね。それでレオンから依頼されたわけかい。拾って日が経っていないのであれば道具に宿る残留思念を辿ることは可能だよ。迅速に動いた自分自身を褒めてやるんだね」


 魔女の見解に、モラルの表情がパアッと明るくなる。


「ジャスティス、良かったね!」

「うん!」


 捜索を進展させるためのアテが見つかって一安心する。

 一安心と思った所で、魔女から冷や水をかけられた。


「誰がタダでやるって言ったかい?」

「えっ?」

「まさか対価なしで請け負うと思っているのかい」

「……えーと、お幾らでしょうか」

「金貨10枚だ」


 あっ、レオンさんからちょうどいただいた金額だ。これなら支払えるぞ。


「……分かりました。それでお願いします」


  再度懐からガサコソと金貨を探す。


「ほーう。子供の割に随分とお金持ちじゃないかい。こりゃもっと吹っ掛ければよかったかねぇ。ヒッヒッヒ」

「それは勘弁してください」


  頼れる相手は目の前の魔女だけだ。こちらは足元見られても首を縦に振らざる得ない。 気持ちが顔に出ていたのか、魔女がフォローしてきた。


「冗談だよ。冗談。これが適正価格だよ。まぁ、信じるかどうかはお前さん次第だけどね」

「はぁ……」


 魔女は机の上に水晶を載せ、その傍に裏冒険者ギルドのバッチを寄せる。

 そしてブッブッと呪文を唱えだす。

 すると水晶に男の姿が浮かび上がってくる。

 それを視認したモラルが叫んだ。


「あの時の男達だ!」


水晶に浮かびあがった場所はどこだ?

出来について思う所がありますが、形になったので投稿しました。

主人公様がヨイショが薄いのと、魔女にいいようにやられちゃってるのが特にいただけない。

魔女にギミックを用意していたんですが、話のテンポがダレると思って、レオンさんから頂いたお駄賃をリリースして終了としています。

一応展開としては話の筋は通っているのでそのままゴーした形です。


またある程度の文字数になったら投稿します。

よろしくお願いします。

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