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腕相撲

「ジャスティスさん、本当に良かったんですか?」


 ジュリアンが上目遣いでこちらに尋ねてきた。


「うん、問題ないよ。ああなってしまった以上、腕相撲やらないとボブさんも納得してくれなかっただろうしね」

「……白黒決着が付けば、話は聞いてくれるはずですから、その、頑張ってください」


 ジュリアンはなんとも言えない、いたたまれなさそうな表情をしている。

 もしかしたら責任みたいなものを感じているのかも知れない。


「ありがとう。些細な行き違いなんだ。ボブさんともすぐに分かりあえるさ」


 恐らく団員の面前でボブは僕を負かしたいのだろう。マウンティングをとった状態でお願いを聞くスタンスで話を進めたいのではないかと邪推している。

 先程はああ言っていたけど、レオンさんからのお願いを蔑ろにするのも本末転倒だ。

 余所者である僕達にデカイ面をおさせたくないのだろう。こちらはそういうつもりはないけどボブがそう捉えてしまっている以上どうしようもない。


「ジャスティス、今回は分かり合いより分からせが大切よ! ジャスティスが侮られてよい言われなんてないわ!」


 モラルが納得いかないという調子で息巻いている。

 

「全力を尽くすから落ち着いて。後、目的を達成出来るなら僕のメンツなんてどうでもいいよ」


 ほんと、何でボブはあそこまでメンツに拘るのか理解に苦しむところではあるが。


「あなたが全力でやるならあんなやつに負けはしないわ。ふんっ、どちらが負け面を晒すのか分かってもらいましょう」


 メラメラと昏い炎を燃やしているモラル。

 ジュリアンがおずおずと尋ねてきた。


「あの、ジャスティスさん」

「ん? どうしたのジュリアン」

「ジャスティスさんって、本当に力持ちだったりするんですか? なんというか、スピードタイプの剣士なのかなって思ってたんですが……」

「他の人と比べたことがないから分からないけど、冒険者始めてから力はついたと思うよ」


 なんせ、筋力向上の上限値を越えて上昇してるからね。

 ジョブ補正がないから実際どの位身体能力が秀でているのか自分でもよく分からずにいる。


「そうですか……。その頑張ってください!」

「うん、ありがとう」


 ジュリアンにい案内されて大広間に移動する。

 人が30〜40人位は入れるような広めの場所だった。

 それから暫くしてボブと自警団の団員が続々と集合する。

 僕とボブは部屋の中央にある長方形の机を挟んで相対する。


「へっ、よく逃げ出さずにいられたな。この場に団員全員がいる。お前がいい所を見せればみんな納得してくれるさ」


 自信満々に解説するボブ。

 周囲からヒソヒソ声が聞こえてくる。


「あの成りでリーダーに啖呵きったのか? 俺でも勝てそうな気がするんだが……」

「リーダー相手にどこまでやれるか、きっちり拝んでやろうじゃねえか」


 予想はしていたけど、皆僕に対して懐疑的な目を向けている。

 モラルが面白くなさそうに吠える。


「ジャスティス、遠慮する必要はないわ。ぶっちぎりで勝っちゃいなさい!」


 モラルの発言に周囲がざわつく。

 僕もドキドキしちゃう。


「あの嬢ちゃんなんなんだ? リーダーに真っ向から喧嘩うってやがる」

「あのボウズが負けたらどんな表情するんだろうな」

「ボウズに賭けるやつはいねえか? 大穴だぜ! ───ジュリアン、お前は勿論ボウズに賭けるよな!」

「えっ!?」


 モラルの一言を契機に賭け事が始まる。ジュリアンは泣く泣く賭け事に強制参加させられている。

 ボブは止めるつもりがないようだ。周囲から聞こえてくる倍率に満足している。1:30。ジュリアン以外に僕が勝つ方に賭けた人はいないようだ。こうなってくると負けられないよな。


「ボブさん、もう一度確認させてください」

「なんだ?」

「腕相撲で健闘出来たらマリアちゃん襲撃の犯人探しに協力いただけるということでしたよね?」

「ああそうだ。お前さんがあっさり負けるようなら諦めてもらうしかないけどな」

「もしも、もしもですが、僕が勝った場合は文句なしで協力いただけるんんですよね?」

「勿論だ。───お前、俺に勝てると思っているのか?」


 憮然とした顔でボブが僕に尋ね返してきた。


「ただの確認ですよ。確認」


 曖昧な笑みをボブに向ける。

 今の自分でボブに勝てるかは未知数だ。だから勝率が上がるよう最善を尽くしたい。

 ───ステータスオープン。


───

スキルサーチ

スキル爆速強化

スキルポイント 11


 スマッシュ (LV.40/100,000)

 筋力向上  (LV.40/100,000)

 体力向上  (LV.40/100,000)

 素速さ向上 (LV.40/100,000)

───


 レオンさんとの模擬戦も踏まえてスキルポイントが余っていることを確認する。

 これをこうだ。


───

スキルサーチ

スキル爆速強化

スキルポイント 0


 スマッシュ (LV.40/100,000)

 筋力向上  (LV.51/100,000)

 体力向上  (LV.40/100,000)

 素速さ向上 (LV.40/100,000)

───


 ───ドクン!

 体カッと熱くなり、全身に血が巡るような感覚。

 ひょっとして、これはひょっとするんじゃないだろうか。

 そんな僕に向かってボブが怪訝そうに視線を向ける。


「どうした? 急に宙を眺めて。現実逃避か?」

「おまじないをしてました」

「ハンッ、今更神頼みか。勝てないと今更気付いてももう遅いぜ。まずは現実を分からせてやる」


 ボブがテーブルに右肘を当てて手を差し出してくる。

 僕もそれに習い、ボブの右手を握る。

 手の大きさの関係で、僕の手はボブに覆われるような形だ。

 それを見て団員達も声を上げる。


「おいおいおい、そんな手で本当に大丈夫か?」

「こりゃ勝負あったな」

「へへっ、ジュリアン。今度飯を奢ってやるから今日は諦めろ」

「うう、なけなしのお小遣いが……」


 集中。集中。集中。集中。

 周りから音が消えてゆく。目の前の手に焦点が絞られてゆく。

 審判が僕とボブの中央に立ち、手を振り上げる。


「はじめっ!」


 試合の合図とともに全力全開。

 自身の手を剣に見立てて渾身のスマッシュ。

 

「スマッシュ<ヘヴィ(強撃)>!」

「うおっ!?」


 虚を突いたのか、さしたる抵抗も感じずにボブの手は傾きテーブルに接触する。

 バキンッ!

 テーブルが鈍い音を立てて真っ二つに割れ、周囲に吹き飛ぶ。団員が慌てた様子で飛んできたテーブルを避ける。

 ボブは支えを失い尻もちをつきながらひっくり返る。


「しょっ、勝者、ジャスティス!!」


 審判が信じられないといった表情で僕の勝利宣言を告げる。

 周囲もにわかに騒然としだす。


「うぉぉぉぉっまじかよ!!」

「くそっ、ジュリアンの一人勝ちか」

「えっ、えっ!?」


 ジュリアンは団員たちにもみくちゃにされている。

 僕は尻もちをついているボブに告げる。


「約束は守ってもらいますよ」


 <スキル爆速強化によりスキルポイントを3取得しました>

想定してたものとちょっと違ってましたが、何とか書けました。

まずは元々想定していた週1ペースで投稿出来るように精進します。

今後ともよろしくお願いします。

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