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配達完了

 僕達はマリアの案内で目的地(配達先)であるレオン・ゾディアック家に到着した。ゾディアック家から20m手前にいる。

 ゾディアック家は富裕層が住居を構えるエリアにあった。

 このエリアは王都の中で高級住宅街に相当する。どの屋敷も3階建、レンガ造りが標準であり、赤を初めとする色とりどりの屋敷が並んでいる。そんな中ゾディアック家は白を基調とした格式ある屋敷だった。


「なぁ、マリア。本当にジャスティスさん達と一緒に屋敷に入るのか?」

「あ、当たり前よ。私だってゾディアック家の末席よ。恩人であるジャスティスさん達に失礼なことは出来ないわ」


 ジュリアンが確認すると、マリアはテンパっていた。

 何でこうなっているかと言えば、先程あった不審者の一件をマリアは誤魔化せるわけだ。家の者に言わなければなかったことに出来る。僕達が一緒に付いてゆけば当然なんで? という話になる。

 一応、自分からも助け舟を出した。


「マリア、僕達は気にしないから先に戻ってもいいんだよ?」

「駄目です! さぁ行きますわよ!!」


 マリアはキッとした表情をとると僕の手をとりズンズンと引きづられるように進みだす。

 何かを思い出したかのように、ジュリアンが僕を呼び止めた。


「ジャスティスさん! ありがとうございました。何かあったら是非声をかけてくださいね!!」

「ジュリアン、分かった! ありがとう。じゃあね」


 手を降振って見送ってくれたジュリアンに僕も手を振り返す。

 彼は僕達が屋敷の入り口につくまで見送ってくれた。


◇ ◇ ◇ ◇


 勝手知ったる我が家といった具合で、マリアは屋敷の白いドアを開けた。

 あけた先には、パリッとしたスーツを着た初老の男性がいた。

 毛髪は真っ白で背丈は僕より高い。そして腰は曲がっていない。

 マリアの姿を見ると思わずいった具合に口を開けていた。

 そんな老人をマリアは気まずそうに見つめた。


「セバスチャン、ただいま」

「お嬢様、どこへ出かけていたのですか! 爺やは心配しましたぞ!!」


 セバスチャンと呼ばれた老人は、眉をヘの字にしてマリアに詰め寄る。


「ごめんね、どうしても出かけたかったの」


 セバスチャンに神妙な表情でマリアは謝った。自分のことを心の底から心配していたためか、ジュリアンや僕に対して接するものと違う。そういや我が家の爺やも元気でやっているだろうか。マリアがほんのちょっとだけエイル(実の妹)と重なる。


 セバスチャンは言いたいこともあっただろうが、僕達がいるからかマリアへの詰問をやめた。

 

「───お嬢様、後ろの方々はどういった方々ですか?」

「私を助けてくれた恩人よ」

「な、なんですと!?」


 また慌てるセバスチャンさん。この人表情豊かだなと、僕はしょうもない所感を抱いた。


「御当主、レオン・ゾルディアック様に荷物の配達で参りました。道中でたまたまマリアお嬢さんと出会った次第です」

「そ、それで───」

 セバスチャンは口を開きかけて、閉じた。そして大きく息を吸ってから吐いて、喋り始めた。


「旦那様は現在屋敷におります。私に預かるより旦那様が受け取った方が都合が良いでしょう。どうぞ、ご案内いたします」

「えっ!? パパがいるの!?」

「おりますよ。私が言うより、旦那様自らで絞っていただいた方がお嬢様も反省してくださることでしょう。───どうぞこちらです」


 セバスチャンさんの案内で屋敷を進む。最後尾をマリアが顔を青くしながらノロノロと付いてきた。


◇ ◇ ◇ ◇


 案内された部屋は客間だろうか。

 テーブルには白バラが飾られていて、清楚な印象を受ける。

 絵画なども嫌味にならないバランスで飾られていた。


「旦那様を呼んでまいります。どうぞお掛けになってお待ち下さい」

「分かりました。失礼します」


 一言を断りを入れてから勧められたソファに座る。体が心地よく沈む。


「すごい。ふわふわだよ」

「ん、そうだね」


 モラルが嬉しそうに喜んでいる。

 僕も同じ感じだったけど、一応仕事モードでおすまし中だ。

 別のソファに座っているマリアの様子を見る。

 両手頭を抱えて項垂れている。


「マリアちゃん、……大丈夫かい?」

「大丈夫じゃないけど、大丈夫です。光の神様は私を見捨てはしませんわ。ふふふ……」


 僕が声をかけると、マリアは自分の世界に没頭しているようで帰ってこない。会話が何か噛み合わない。

 マリアを助けてやりたいとは思うけど、安請け合いするわけにもいかない。どう声をかけた方がよいか悩んでいるとモラルが口を開いた。


「そうですよ。光の神様は善き行いをしたものを見捨てたりしません。だから元気を出してください」


 マリアを右手をモラルが両手を使って包み込んだ。

 マリアの焦点が戻ってきた。


「うう、モラルさんありがとう!」

「ふふふ」


 モラルはニコニコしている。

 ぬか喜びにならなきゃいいけど……。

 とりあえず、気持ちを切り替える。


「ねえ、マリアちゃん。お父さんってどんな方なの?」


 僕はマリアに質問してみた。

 するとマリアはちょっと誇らしげに答えてくれた。


「すっっごく格好良いわ! パパにかかれば悪党なんてイチコロなんだから!」

「……確か、神殿騎士をやられているんだっけ?」

「そうよ、パパが王都の平和を守っているんだから!」


 父親自慢になると、マリアは饒舌になった。

 きっと素晴らしい人なんだろうな。エレーヌさんも大絶賛されていたし。

 父親、父親か……。ちょっと父上カットナルのことを思い出して寂しい気持ちになる。


「マリアはパパのこと好き?」

「うん! 大好き!! でもね、怒るとすっごい恐いけど───」

「恐いのは誰のことかな?」


 いつの間にかドアを開けて男が立っていた。

 マリアと同じ金髪の男だった。目鼻立ちが整っている。目はやや細い。体格は僕よりしっかりしている。30半ばくらいだろうか。


「パ、パパッ!!」


 マリアの表情が引きつる。対象的にパパと呼ばれた男性は朗らかだ。

 僕はソファから立ち上がる。モラルも同じく立ち上がる。


「お邪魔しております。ジャスティスと申します」

「モラルです」


 僕とモラルは軽くお辞儀する。


「これはこれはご丁寧に。ゾディアック家当主のレオン・ゾディアックです。お見知りおきを」


 レオンさんは細目で朗らかに笑いながら握手を求めてきた。握手に応じると手も僕より大きくゴツゴツしている。手は武人のそれだ。佇まいも只者でないような気がする。父上とレオンさん、どちらの方が強いのだろうか……。無意識的に父上とレオンさんを比べていた。父上は野性的な人だった。


「カタリナ教授からの荷物を届けにまいったと」

「はい、こちらです」


 今更ながらカタリナさんって教授だったんだと場違いな感想を抱きながら、鞄から荷物を取り出し僕はレオンさんに渡した。

 レオンさんは荷物の封は開けずに外観を確認した後に依頼票にサインしてくれた。


「お勤めご苦労。確かに受け取ったよ」

「こちらこそ、ありがとうございます」


 レオンさんは上機嫌に顔を綻ばしながら訪ねてきた。


「君達は若いがしっかりしている。カタリナ教授とはどんな関係なんだい?」


 言われてみて、ハタと思う。自分とカタリナさんの関係性って何なんだろう?とりあえず事実にみ述べてみた。


「僕達の冒険者ランクの昇格試験の際にお世話になりました。カタリナさんに試験官をやってもらったんです。それでご縁ですかね」

「とういうことは、カタリナ教授のお手製ゴーレムと戦ったのか?」

「はい。モラルと力を合わせて何とか倒すことが出来ました」

「今までで一番大変だったよね」


 はにかみながらモラルが感慨する。


「だね。倒しても無限に再生するゴーレムが相手とは思ってなかったよ」


 僕達のやりとりに対してレオンさんが唸る。


「普通、試験官は倒せないから試験官なんだがね……」

「それで印象に残っていたのかも知れませんね」

「本当に大した腕前だ」


 手放しで褒めていただき気恥ずかしくなってうつむく。だから話題を変えさせてもらった。


「そういえば、カタリナさんって何者なんですか? エレーヌさんと同級生とは聞いていたんですが……」

「君はエレーヌ君とも面識があるのか」

「はい。僕達はエレーヌさんから普段よくしていただいてます。今回の配達依頼もカタリナさんとエレーヌさんからの依頼でやらせていただきました」


 エレーヌさんの話も出てきたからか、レオンさんが破顔する。


「そうかそうか。君はあの二人のお気に入りか!」

「あっ、お気に入りかどうかは分かりませんが……」


 補足させていただいたが、あんまりレオンさんは耳を傾けてくれた感じではない。


「カタリナ教授、───カタリナ君は若干20才で教授になった正真正銘の天才児だよ。錬金術の業界では有名人だよ」

「あっ、やっぱり凄い人だったんですね。とても気さくな人だから良くしていただいていますが……」

「ジャスティス君のように礼儀正しい子なら気に入るだろうね。態度を変えない方があの子は喜ぶから、普段通りに接して上げてくれ」

「分かりました」


 ゴーレムの取り扱いで只者ではないと思っていたけど、やっぱり只者ではなかったんだな。普段のバルンバルン姉ちゃんのイメージが強いから忘れがちだけど。

 モラルの表情を伺うと、似たような反応だと思う。僕達にとってカタリナさんは天真爛漫なお姉さんだ。


 世間話がひと区切りついたからか、レオンさんが箱を開封した。中に入っていたのはメトロノームのような機械だった。細長い機械に棒がついている。……音楽の勉強でもするのかな?


 メトロノームの状態を確かめ、中に封入されていた手紙を読み、レオンさんは満足げに笑みを浮かべた。アーティファクトと説明書といったところか。


 レオンさんがわざとらしく咳払いをした。表情も穏やかなものからピリリとしたものに変わる。


「マリア、セバスチャンから聞いたよ。無断で貧民街に出かけたそうじゃないか。何か言いたいことはあるかな?」


 レオンさんの怒気が膨らむ。


「ヒィッ!」


 怒気にあてられてマリアは竦み上がる。

 ……さて、本番これからだ。

ちょっと全体的にもっさりしてすみません。

主人公ヨイショやりつつ、キャラクターが生き生きしてくれるのが理想なんですが、実力足りずといった具合ですね。とりあえず展開優先で地道にやらせていただきます。

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