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配達依頼

 そんなことを考えていると意外な人物が冒険者ギルドに勢いよく扉を開けて駆け込んできた。カタリナさんだ。ドタドタとカウンターまでやってきた。

 周りの人達も一瞬ギョッと扉を見て関心を示す。


「エレーヌ、お願い助けてぇ」

「急にどうしたの?」


 カタリナさんが手を膝に当てて肩で息している。

 エレーヌさんは、カタリナさんにハンカチを差し出す。

 ハンカチを受け取ったカタリナさんは、借りたハンカチで汗を拭きながら呼吸を整え、要件を告げた。


「あのね、レオンさんに頼まれていた品が完成したの」

「ああ、1ヶ月前にレオン子爵から頼まれていた件ですね。まだ終わってなかったんですか?」

「だ、だってぇ。作ってるいるうちに楽しくなっちゃったんだもん。とっても高性能になったのよ」

「納期をちゃんと守ってこその仕事よ」


 エレーヌさんがピシャリと言う。

 冒険者の尻(納期)を叩いてきたエレーヌさんが言うと言葉に重みがある。

 部屋にいた冒険者達は関心を失い、視線をそらす。ちょっと気まずそうだ。


「私もね、納期って大切だと思うの。だ、だからね、なるはやで配達してくれたら嬉しいなって」


 両手の人指し指をちょんちょんしながら上目遣いでお願いするカタリナさん。


「依頼は受けます。でも速達出来るかは約束しかねます。順番通りに処理するからね」


 エレーヌさんは淡々と受け答えした。

 しゅんとするカタリナ。

 そんなカタリナさんの変化を確認してから、エレーヌさんは言葉を続けた。


「……カタリナを助けてくれる親切な冒険者がいたら速達が出来るかも知れないよね」


 エレーヌさんの視線がツツツと僕の方に向かった。

 それに釣られたようにカタリナさんも僕に視線を向ける。


「……!!!」


 カタリナさんは、僕に気付き、ぼくの右手を両手で掴み、胸元に引き寄せる。バルンバルン。


「ジャスティス君! お願い。私を助けてっ!!」

「ぼ、僕でよければ喜んでやりますよ」

「ありがとう!!!」


 相変わらず距離感が近いカタリナさんにドギマギしながら僕は返事をした。

 昇格試験でお世話になってるし、ちょうどゴブリン退治もなくなって手持ち無沙汰になってるわけだから断る理由がない状態だ。


「うおっほん!」


 突然の咳払いに僕はビクリとする。

 モラルが何か不機嫌そうにむくれている。まるで睨むかのようだ。


「私はやるとは言ってないですよ」

「えっ、何で? カタリナさんにはお世話になってるし、話だけでも聞いてみようよ」

「何でもするからモラルちゃん、私を助けて」


 僕の右手をより力強く掴むカタリナさん。僕の手がカタリナさんの胸元で更に沈んでゆく。

 モラルの表情が更に歪む。


「あんまりジャスティスにベタベタ触らないでください。それが条件です」

「分かった!」


 カタリナさんが両手が僕の右手を離した。

 すると幾分、モラルの表情が和らぐ。

 カタリナさんのスキンシップは少々大胆だ。モラルもドキドキしちゃうのかな?

 とりあえず場の雰囲気を仕切り直そう。


「エレーヌさん、配達ということですが、誰に何を配達すればいいいんですか?」

「カタリナが作った品を、王都レペンス在住のレオン・ゾディアック子爵に配達をお願いします。私としてもジャスティスさんに受注してもらえると助かります。……出来るだけ常識的な対応の出来る素性のはっきりした方に頼みたいですからね」

「ハハハ……」


 エレーヌさんは、僕に届けて欲しい理由については小声で補足してくれた。確かに冒険者は荒っぽい人達が多いから、それでお鉢が回ってきたのかも知れない。


「ちなみにですが、レオン・ゾディアック子爵とはどんな方ですか?」

「神殿騎士をやられている立派な御仁ですよ。私とカタリナが学生だった頃に臨時講師としてギルド運営のための法解釈などについて教えてくれたりしたのですが、それは別の機会にしましょう」

「分かりました」


 中々興味深い話だ。

 神殿騎士と言えば、剣を持った法務官として誉れ高い。

 市民は言うに及ばず、貴族すらも裁くことが出来る特別な立場の人だ。怖い人でなければいいんだけどな。

  後、エレーヌさんとカタリナさんの関係も気になる。特にカタリナさんは普段何をやってる人なのか全然分からないからな……。


「ジャスティス君、君だけが頼りだよ。お願いね」 

「任せてください。無事に届けてきますから」


 カタリナさんから、20cmほどの長方形の木箱をお預かりする。

 大きくもなければ、小さくもない。中身はちょっと見当つかない。


「ジャスティスさん、申し訳ないですが、守秘義務の関係で配達する中身についてはお伝えすることは出来ません」

「分かってますよ。僕達はエレーヌさんとカタリナさんのこと信じてしますから」


 僕がそう返事を返すと、申し訳無さそうにしていたエレーヌさんの表情が和らいだ。


「ありがとう。私もジャスティスさんのこと信じてますよ。───後、折角でしたら配達後に王都を散策してみるのはいかがですか? よい勉強になるかと思いますよ。王都の冒険者ギルドに完了報告してくれれば良いですから」

「お気遣いありがとうございます。配達終わったら街を巡ってこようと思います」


 と言っても、正直寄りたい所ってないんだよな。剣術の模擬戦とかやれたら良いと思うけどさ。モラルは希望あるかな?


「モラルは寄りたい所、どこかある?」

「えっ? ……そうですね、出来れば教会に寄ってみたいです。王都の教会は立派だと聞いてますから」

「じゃあしてくる配達終わったら教会に寄ってこうか」

「分かりました!」


 モラルは嬉しそうに笑った。

 まずはカタリナさんの配達を完了させよう。

大変お待たせしました。

配達クエストは、5話位で終わる内容になるかと思います。

週1で更新出来るように善処します。

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