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2次試験 模擬戦

 蓄光石を採取後にヤグ少年と別れ、僕たちは冒険者ギルドに戻って来た。

 時間にすると13時過ぎ。

 冒険者ギルド内部は閑散している。

 室内には翡翠色の髪をした女エルフと、見たことのない金髪の20歳位のお姉さんがお喋りしていた。


「だから聞いてよ。あんなモンスター私でも倒せるっての。なのに危ないからお前は下がってろと言うのよ。失礼しちゃうわ!」

「あはは、大変だったねー。紅茶とクッキー食べましょ?」


 金髪のお姉さんはニコニコと人好きする笑みを浮かべている。

 女エルフは言われるがまま、クッキーを頬張る。すると目を丸くする。


「美味しい! どうしたのこれ」

「うふふ、私の自信作よ。気に入ってくれたなら嬉しいわ」

「あーもぅ、カタリナ、私の嫁になりなさい!」

「いや〜ん」


 目の前で謎の漫才が繰り広げられている。

 女エルフに求婚されてる人も冒険者なのだろうか?

 接点があるわけでもないし、僕たちはスルーする。


「エレーナさん、こんにちは」

「ジャスティス君、こんにちは。何か忘れ物ですか?」

「蓄光石を採ってきました」

「えっ、もうですか!?」

「ええ、採ってこれました!」


 嬉しさを共有したくて、思わず声が上ずってしまった。

 すると、エレーナさんは酷く驚いたように目を丸くした後に、少し微笑を浮かべながら言葉を続けた。


「では蓄光石の提出をお願いします」

「分かりました。よろしくお願いします」


 カバンから蓄光石を2つ取り出した。

 エレーナさんは蓄光石を掴むと手の中で転がしながら確認する。


「この蓄光石はどこで採取してきましたか?」

「ソトヘム村の傍にあるプルーセーヴ川で採取しました」

「よろしい。合格です」


 エレーナさんがこちらを労るようにニッコリ微笑む。


「よっしゃぁあ!!」

「やりました!!」


 思わずガッツポーズをしてしまった。

 モラルもぴょんぴょん跳ねて喜びを体で表している。


「おめでとう〜」

「模擬戦も手ぬくなよぉ〜」

「よっ! ご両人。お熱いねぇ〜」


 周囲から野次が飛んできた。

 

「……あはは」


 ちょっとバツの悪い気持ちになりながら、後頭部に手を当てながら周りに頭を下げる。

 周囲からの関心が無くなった後にエレーナさんが続ける。渡したはずの蓄光石を差し出してきた。


「蓄光石はお返しします。記念に持っていたらどうですか」

「えっ、いいんですか」

「あなた達が採ってきたものなんですから、おかしくないでしょう」

「ありがとうございます」

「嬉しいです!」


 僕とモラルはエレーナさんから蓄光石を受け取る。

 状況がヤグ少年と全く同じで、人のこと言えないと思う。でも素直に嬉しい。

 更にエレーナさんは少しイタズラな笑みを浮かべながら言葉を続けた。


「蓄光石は照明以外にも装飾品の素材として活用されます。そのサイズなら装飾品に使えるかも知れませんね」

「なるほど……」


 エレーナさんの意味深な言葉について逡巡してみる。

 蓄光石を加工して装飾品になるなら加工して良いかも。ポラドック爺さんに頼めばやってくれるだろ。それでモラルにプレゼントしたら喜んでくれるかな……?

 一緒に冒険するようになってから4ヶ月以上経つけどプレゼント類を渡したことがないことに気付く。


「ッッ」

「??」


 モラルと目線が合うと顔をサッと下げられてしまった。目が泳いでいる。


「どうかしたの?」

「どうもしません!」


 モラルが挙動不審になってるのは分かるけど、その理由が分からない。

 エレーナさんだけがクスクスと笑い、僕は狐につままれた気持ちになった。

 エレーナさんはひとしきり笑い終えた後に続ける。


「ジャスティスさん、2次試験はどうしますか? 今日採ってきたのは想定外でした。明日でも構いませんよ」

「今日やります。元気は有り余っていますから」


 元々、すぐに模擬戦をやる展開は想定のうちだ。後日に回しても状況が好転しないものは即断即決する。

 チラリとモラルを見ると、コクリと頷き返す。冷静さを取り戻している。


「分かりました。───カタリナ、ちょっときて!」


 エレーナさんは声を張り上げた。

 目線の先を追うと、同フロアの壁際に向かってだ。その先には先程の女エルフと金髪の女性がいた。

 僕は女エルフの方が模擬戦の試験官なんだと思った。ナイト、プリースト、ウィザードとパーティを組んでクエストに出かけてゆく所を見たことがある。トロール(食人鬼)を退治したとか言っていたから熟練の冒険者だ。


「ん? どうしたのぉ、エレーナ」


 ……しかし、返事をしたのは別の人物だった。隣りに座っている金髪の女性だった。


「模擬戦よ。も・ぎ・せ・ん! お客さんがきたよ」

「あらあら、分かったわぁ」


 カタリナと呼ばれた金髪の女性は、女エルフに何か言った後に席を立ち、僕たちがいるカウンター前にやってきた。

 女性としては伸長が高い。僕と同程度で175cm位だろうか。小柄なモラルと比べると頭一つ分大きい。

 金髪碧眼で、ニコニコと人の良い笑みを浮かべている。歳は20歳〜25歳位だろうか。そして体を動かす度にバルンバルンと自己主張する胸。ちょっと目のやり場に困る。


「まぁ、二人ともかわいいわねぇ。お姉さんウキウキしちゃうわぁ。私、カタリナって言うのぉ」

「よろしくお願いします。モラルです」

「え、えーと、よろしくお願いします。ジャスティスです」


 年上で、今まで会ったことがないタイプの女性だったので、応対の仕方が分からなくてタジタジになる。

 モラルの方は不思議といつもよりも滑舌もよく、ハキハキしている。控え目なモラルにしては珍しいなと思った。


「模擬戦の教官をカタリナにやってもらいます。───分かってるとは思うけど二人を怪我させないでね」

「もちろんよぉ。任せてちょうだい」


 エレーナさんが僕達にカタリナさんを紹介した後に、カタリナさんに釘を刺していた。カタリナさんは終始笑顔を崩さない。


「カタリナさん、お手柔らかにお願いします」 

「ジャスティス君、よろしくね。お姉さん張り切っちゃうから!」


 カタリナさんが僕の右手をガシっと両手で掴む。


「わっ」


 いきなり掴まれて声を出してしまう。

 そして僕の右手をブンブン振り回す。バルンバルン。

 思わず視線を逸らして赤面してしまう。 

 モラルはムスッとした表情でこちらを見ていた。


「ジャスティスはお姉さんが好きなんですね」

「えっ、いやっ、その」


 モラルがトゲトゲしく詰問してきた。

 YES・NOどちらを言っても邪推されそうなので僕は言葉に詰まる。


「それじゃ広場にいきましょうね〜」


 我関せずと、カタリナさんは僕の右手を掴んだまま先導する。僕はたじたじになりながら冒険者ギルドを退出した。

 モラルは面白くなさそうについてきた。



◇ ◇ ◇ ◇


 カタリナさんに先導されて街の外、冒険者ギルドが管理している訓練用の空き地に到着した。

 土は赤茶で踏み固められている。草木は生えていない。

 モラルの機嫌は回復していない。それが目下の懸念事項だ。


「……本当にカタリナさんが試験官をするんですか?」

「もちろんよぉ。エレーナちゃんのお気に入りだからって、手は抜かないからね」

「……分かりました」


 カタリナさんは右手を右頬に当てながら笑みを絶やさずに答える。

 エレーナさんとカタリナさんの関係も気になるが、今は聞くべきタイミングではないと思い自重する。


 ちなみにカタリナさんは、あまり運動は得意そうではなかった。何もない所で躓きそうになるし、その度にバルンバルンしてるし……。はっきり言って身体能力だけなら僕の方が上だろう。何故カタリナさんが試験官をやっている分かりかねている。


 ランク昇格試験の試験官を任されているわけだから、Fランク冒険者より弱い道理はないだろう。

 装備も鎧ではなくローブを着用している。帯剣していないことからも前衛職ではなく魔法使いのような後衛職と考えるのが妥当だ。油断したら痛い目に遭うのはこちらの方だろう。

 そんなことを考えていると、クスクスとカタリナさんが笑い出す。


「ひょっとして私のことを運動音痴な鈍臭い女だと思ってるんでしょ?」

「い、いえっ、決してそんな」

「戦うのは私じゃないから安心して」

「えっ、じゃあ誰が……」


 この場にいるのは、僕・モラル・カタリナさんの3人だけだ。

 カタリナさんが戦わないなら、これから対戦相手が来るのだろうか?

 モラルもカタリナさんの発言を捉えかねて首をかしげている。


「ふっふっふ、私が疑問にお答えしましょう。ジャジャーン!」


 カタリナさんは懐をまさぐって何かを取り出した。バルンバルン。

 その度にモラルは苦悶の表情を浮かべていた。

 取り出したものを僕達に向かって突き出してきた。


 ───手の平の上には、小さな土人形が立っていた。

 見た目はきつね色で全体的に丸みを帯びている。顔には大きな●(黒丸)が2つと盃のような口がついていた。要するにニコニコマークだ。


「ゴーレムのゴレムス君がお相手します!」


 自慢げに豊かな胸を反らすカタリナさん。

 ゴレムス君は僕達に小さな右手を振ってくれた。


「か、かわいい」

「え、えーと、よろしく」


 モラルは目を輝かせている。僕は反射的にゴレムス君へ手を振り返していた。


「ゴーレム……、カタリナさんはアルケミスト(錬金術師)ですか?」

「ジャスティス君、正解。物知りなんですねぇ」

 

 錬金術師とは人工生命を創造する職業と理解している。その代表例がゴーレムだ。自身を守るためにガーディアンとして使役される。


「恥ずかしながら詳しくは知りません。分からないも同然です」

「ジャスティス君は謙虚ですねぇ。アルケミストって何でも屋だから、私も悩んじゃいますね」


 カタリナさんはそう呟きながらゴレムス君をコチョコチョと撫でる。くすぐったそうに身悶えすると、ゴレムス君は頭をカタリナさんの指に擦りつけてくる。


「キャッ、カワイイ!」


 モラルが頬を赤らめ、ゴレムス君の姿に悶絶している。

 女の子って丸っこいもの好きだよな。


「……あの、本当に僕達はゴレムス君と戦うんですか?」


 ちょっと気まずい気持ちになりがらカタリナさんに訊ねてみた。

 こんな可愛らしい人形を相手に僕達は戦うのか? 気をつけないと踏み潰してしまうではないか。正直、とても強そうには見えない。


「勿論。ふっふっふ。ゴレムス君は可愛くて強いんだから。君達にゴレムス君を倒すことができるかな?」


 必要以上にキザっぽく、格好つけるカタリナさん。威厳はあんまり感じられない。微笑ましい気持ちになってしまう。

 ピョンっと、ゴレムス君がカタリナさんの手の平から飛び降りて、シュタッと着地する。

 そして、両手を左上に向かって突き上げる。何かのポーズだろうか。


「すごい、すごい!」


 そんな姿にモラルが両手をパチパチさせている。


「マハリクマハリタ。大きくなぁれ♥」


 懐から取り出したワンド片手にカタリナさんが呪文詠唱した。


 ゴレムス君が大地───土を吸い上げて全身に土を纏い巨大化を始める。

 突如として身長4mの土人形が出現する。


「なっ」

「えっ、えええぇえええーーー!!!」


 絶叫する僕達。

 そんな僕たちの反応にイタズラが成功した子供のようにカタリナさんは満足げな笑みを浮かべる。


「カワイイカワイイ冒険者を捕まえちゃいなさい♥」


 こうして、僕達は模擬戦を開始したのであった。

巨乳お姉さんが好きな人はブクマお願いします。

貧乳お姉さんが至宝な方は☆5お願いします。


まだまだ会話のやりとりが唐突、ぎこちない感じするので精進します。

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