表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

和装の男 シリーズ

プロローグ或いは幕間

作者: カカカ
掲載日:2021/05/08

 

 ーーパシッ。


 清廉な和室に石音が響く。


 乾いた葦草いぐさが香る十畳ほどの空間。調度品はほとんど何も置かれていない。


 あるのは正面の壁に設しつらえられた床の間と、そ

こに飾られた白紙の掛け軸。


 そして、部屋の中央に置かれた碁盤だけ。


 ーーパシッ。

 

 盤上へと滑らかに指が運ばれ、真っ直ぐに黒石が打ち付けられる。

 その手の持ち主は、床の間を背にして浅葱色の座椅子に腰掛ける和装の男だ。

 彼はゆっくりと、一手々々の具合を確かめるように、一人で碁石を盤面へと並べてゆく。

 

「……ふむ」


 ふと、彼の手が止まる。

 それを見計らったかのように竹の音が響く。部屋の左手にある障子、その先からだ。



 カコン。



 障子の外に広がるのは波打つような砂利と苔生した大岩。

 枯山水である。

 造り込まれた園庭を囲うように立派な竹林が生い茂り、その先を見通すことはできない。


 畏れすら抱かせる静謐な庭。

 隠り世、そんな言葉がぴたりと嵌まる。


 そんなかすみたなびく枯山水の片隅には鹿威しが設置されていた。

 枯山水には当然ながら水など無い。

 しかし不思議なことに、竹筒は独りでに傾いてゆく。

 やがて、傾きが限度を超えて勢いよく揺れ戻され、


 カコン。


 乾いた音が響いた。

 和装の男が面を上げる。

 柔和な表情である。そう見えるがしかし、その相貌は焦点が合わずにぼやけている。

 

「お客さんかな?」


 妖怪変化か。あるいは神か。

 和装を纏った無貌の棋士は、並べた碁石を片付け始めた。 


 いそいそと、嬉しそうに。楽しそうに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ