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それでも俺は  作者: 咲ヶ丘ゆづき
幼少期編
9/9

飛び散る赤黒と焼き付く悲鳴……そして……。。

グロ表現があるので苦手な方はごご注意ください。

日は沈み、空は闇に包まれる。見送った背中は既になかったけど


頬の感触と、胸のドキドキと少しの痛みはまだ残っている。


食料もない、カラスも鳴き終わり、周りは真っ暗。人生で最大の反抗は呆気なく終わり、仕方なく僕はため息を吐きながら帰路へ就いた。


家に着くと、鍵は閉められていた。中からはお兄ちゃんの声、お父さんお母さんの笑い声が聞こえる。


やっぱり僕なんて必要ないんだ……。


自分から反抗して、自分を認めてもらえなくなったら落ち込んで


自分でもどうしたいか、自分もよく分からなくなった。


やっぱりここにはもう戻らない。


今度こそ固い決心を決め、家の前から去ろうとすると、玄関の照明が付き、中から母親が出てきた。



母親は睨んだが、僕の後ろに車が通ると、柔らかい笑顔になり、玄関を開ける。わかりやすい人間。汚い大人。こんなのと一緒にいると頭が狂ってくる。


「今日はあなたの好きな鮭よ。」


……僕が魚嫌いなの知ってるくせに。魚は生臭い。こいつらみたいで臭くて臭くて、食べる気にもならない。だから嫌いだ。


もっと……僕に力があれば……。



「ほら。風邪引くわよ。早く中へ入りなさい」


母親のこんな優しい声を聞いたのはいつぶりだろうか。生まれて抱かれた時?歩いて感動した時??


それとも―――初めて?



ここで叫んでもいいんだ。でもこいつらは事実を隠すだろう。例え虐待が発覚しても、僕は施設に入れられる。こいつらは僕が要らない存在だからそれを狙ってる。邪魔だから、だったら施設に入れる。自分達は手を焼かなくていい。楽。めんどくさい。

そして、居なくなった時笑いながら言うのだろう。


「なんであんな奴生まれてきたんだ?」そんな考えお見通しだ。


それをされるのは一番癪だった。人生最初で最後の親への反抗。お前らは恥をかけばいい。俺は俺の全てでお前らに抗う。どんなに弱い力でも、プライドをボロボロにしてやる。悪魔でもなんでもいい……。絶対に。


「やったー!!!お魚さん大好き!!!お魚さんの命頂くんだから、美味しく食べないとね!お母さん!!!」


「そうね。美味しく頂かないといけないわね。あ、

そうそう」


母親は、一瞬だけ目は鋭くなったが、声音は変わらず柔らかいままだった。それを僕は見逃さない。


「なあに。お母さん」


「お父さんがお話()あるって言ってたわよ。お母さん、健介と明日の食材買ってくるから、話しててね」


こいつ逃げる気か。買い物ってのは嘘だろう。包丁か何か買ってきて殺すのか。今日殺されるのかな俺。


「えー、お買い物僕も行きたいー」


柄にもなく言ってみる。馬鹿なふりをしながら、相手の動向を探る。こいつらは僕がここまで知ってるなんて考えられるとは思ってもいないだろう。


「お父さん、足悪いから一人にすると危ないのよ。それに明日の食材がもうないから明日お腹すいたままよ?いいの?私は嫌よ?」


こんな所出るから別にいい―――――とは言えないので


「分かった。話聞いてくる」と言って玄関に入った。


ご飯作ってくれてありがとうも、気をつけてねも言わない。これからの行動全てでそんな気持ち消えるから。


いつの間にか陽は昇り、空は明るくなっていた。


眠っていたみたいだ。

僕は体を起こそうとすると、至る所に傷があることに気づいたと同時に手や足、胸に痛みが走る。


髪が切られていたり、手には切り傷、煙草の跡。足にも同様に煙草の跡があり、パンツは濡れていてびしょびしょのまま。周りは液体と赤いのが混ざっていて、涙の跡があった。頭もクラクラするし、首も痛い。手首は捻ってるのか骨が折れてるのか動かすと痛い。痣もある。これだけで昨日の記憶はないけれど何があったかは検討はついた。


そしてその傷跡には、絆創膏がはられていたり、痛み止め、湿布、薬品が塗られていた。


旅立ちの日。朝の目覚めは最悪だったけど、出ていく準備を進める。


死にたい……。生きていたって、また暴力を振るわれ、暴言を吐かれ、そんな日々が永遠と続く。


そんなの耐えれなかった。


昨日までの勢いは痛みで失い、声を上げて泣きそうになった。


ダメだ……泣いたらダメだ。こんな仕打ちで負けるな。

こんな汚いヤツらに負けるな。強い。強い……僕は……強くならないといけない……。



今度こそ間違えないように荷物を持って、玄関で靴を履く。



母親は後ろからドンドンとうるさい足音で近づいてきた。



「学校は?あなた昨日あれほどお父さんに言われたのではないの?やっぱり学習能力ないわねー。学校にも行かないそんな甘えた子はうちの子じゃありません」


僕は鼻で笑ってしまった。その態度に母親の顔が般若のようになっていき、頭に血が上ってるのが分かった。


「元々僕はここの家の子供ではない。てめえらがてめえらの都合で勝手に作られた人間だ。お前みたいな豚に飼育されてきた覚えはねえ」



「な、ななな、なんてことを…………!!!親に向かって!!!!…………けいけ……………………。出ていきなさい!!!!!!!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()!()()()()()!()!()!()!()!()


「学習能力ないのはどっちだ?理解能力がないのかな?適応能力?僕はここの子供でもないんだって笑無駄に金浪費してただけだ。可哀想にね笑笑笑それにさ」



「!!!?!!!??」



母親のヒステリックな声を聞いて待ちわびていたかのように父親がでてきた。



「母さんになんて言った。答えなさい!!!!!」


パンッと、頬に血の味が混じる。



「せいぜい、潰し合いな。」



母親、父親が何か言っていたが、気にせず無視し、僕は家を出た。




逆に思わせてやった。この家に、『お前みたいな化け物産まなければ良かった』って。


気分は最高。本当に今までの中で一番気持ちがいい。


空は青い。空気も美味しい。雛が飛び立つ時のような開放感、自由な感じ。何者にも縛られない、爽快感。いつもと同じはずの景色が、今日は一段と綺麗で、まるで違うように感じる。


僕は、出てこれた。あの家から縁を切れた。強くなった。強い。強いんだ……。これであの子の事も守れるかな……。


これから先は長いし、どうなるかも不透明。でも、

一人で生きていくしかない。誰にも頼れないんだから。あの子も頑張ってるんだから。



「誰かが言ってた。一人で生きるって事は、孤独ということではなくて、どこにいても居場所がある事」って。



 いつもの河川敷に着き、腰を下ろす。寝転がり、手を伸ばし、空を見上げた。


 「何してるの?」


 「わあ!?!」



 女の子が笑みを浮かべながら顔を覗かせてきた。


 「また会ったね。えーと……」


 「端畑累利亜。はしばるりあ。僕の名前」


 「はしばる?りあ?変な名前だね!」


 「う、うるせぇ」


 「えへへ。でも、私は好きだけどね。」



 好き。と言われた瞬間、胸の奥が高鳴った。


 「君は?」 


 「私は林道さゆり。よろしくね。りーくん!」


 「そのりーくんってのはやめて」


 「えー、いいじゃん!ね?ね?」


 僕たちは笑いあった。青空の下で。



 「さゆりー、行くわよー。早く来なさい」


 女の人の声が聞こえた。


 「お母さんだ。ねえねえ!一緒にお買い物行かない?」


 僕は断ったが、押されるまま買い物に行くことになった。僕たちは、さゆりの母親の車へ向かう。


 母親が車に乗り込んだ瞬間、母親悲鳴が聞こえた。


 「お母さん??」



 黒い帽子に、黒いマスク、黒いサングラスに、黒い服。大柄の男が立っていた。


手には果物ナイフを持っており、そのナイフは、さゆりの母親の首元に突き付けられていた。


 「お母さん!!」


 「ガキ!!来るな!妙な動きしたらこの女は殺す。いいか、動くな」


 「さゆり、逃げなさい!男の子の君……助けてあげて……さゆりを……さゆりを!!!」


 「お母さん!!!」


 さゆりは泣きながら男に向かって走り出す。


 「さゆり!!!」



 男はナイフを女の腹に突き刺した。何度も何度も何度も……。


 

 僕は、理解できなかった。数分経った今でも、現状が理解できていない。足は、地面から根が生えたように動かない癖に、真冬の寒さにガタガタと震えていた。


 「さゆり。ごめんね。ごめんね。今までごめんね。」



 最期にした言葉は口パクで終わった。一番伝えたかった言葉は、声にも音にも出せなかった。



 赤黒い血が地面に流れ、辺りは真っ赤に染まっていた。人の血。自分以外の。血。


 頭が狂いそうで、吐き気がしてるのに、何も何もできなかった。


 男は、生きていた人間だった塊を蹴り飛ばし、さゆりに近づく。さゆりは、生気を失っていた。


 さゆりを乱暴に車に乗せ、立ったままの僕を蹴り飛ばした。僕は草むらに吹き飛ばされ、蹲る。


 顔を上げた時には、もう車はなかった。


 その後僕は、事件があった現場に来た警察官に保護され、事情を話せる精神ではなく、親に引き渡された。結局僕は戻ってきてしまった。もう二度と戻らないと誓った場所に。



 そして、施設に行くという名目により、家を追い出され、転校が決まった。

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