鈍色のハッピーエンド
湿気が世界を牛耳っている季節にかつての恋人である、宇崎に呼び出された。そして【君の最期に立ち合わせて欲しい】と復縁を求めるような、プロポーズにも捉えられるような告白をされる。しかし、続け様に【俺は未来を知っとる、君は23歳の12月に死ぬ。だから俺に最期を看取らせてくれん】とにわかに信じがたい発言をする。未来を知っている宇崎は私の運命の人ではなくて、私は23歳で死んでしまうのか。あまりの情報量に脳内コンピューターはショート寸前である。この日を境に長い間止まっていた物語が、23歳の12月、有栖文香が亡くなるまで止まらず流れていく。何故、宇崎は未来を知っているのか、何故、有栖は死んでしまうのか、有栖を取り巻く人間関係、宇崎はどうしてそこまで有栖に固執するのか。時間としては有栖が亡くなるまでの半年間、沢山の人の過去と未来を何度も行き来するため数えきれない時間を一つにまとめた物語です。