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完璧超人

バスケットボール部の顧問である山吹 藤子、現在27才彼氏募集中は職員会議が終わるとバスケ部の練習している体育館へと移動する。


いつもは練習の声が聞こえてくるのだが、今日は少し聞こえてくる声の質が違うことを疑問に思う。


(ああ、確か今日は五十嵐さんが助っ人に来てくれる日だったわね。また部長の矢吹さんと遊んでいるのかしら?)


そう結論づけるといつものように更衣室で手早く着替え、準備する。

着替え終わると体育館を登り選手達の声が聞こえる扉の前に立ち息を整える。


「よしっ!」


気合いを入れて扉を開いた。

中を見回すとどの子も手を止めてある一カ所を見つめているのが分かる。

そこにはやはり矢吹さんと五十嵐さんがいた。ただ、全く予想していない人物もいることに驚く。

近くにいた部員を捕まえてどういうことなのか訪ねる。


 「男の子がいるんだけど!どういうこと?!」


 「あっ矢吹先生こんにちは! いえ、それが、彼は助っ人部の見学で最初ここに来てたんですが、途中からやりたいと言い出しまして・・・部長も危なくなったらすぐにやめるということで始めたんですが・・・」


 「ど、どうしたの?」


 「彼が凄すぎて誰も止められないんですよ! 男の子なのにダンクするわ人間離れしたドリブルするわ、怪我なんて全くしそうに無いので誰もやめさせることが出来ないんです!」


 「?」


 彼女が何を言っているのか理解できなかった。もしかして辛いことでもあるのだろうか?

 あとでご飯を奢ってあげようかしら。


 「先生そんな可哀想な子を見る目で見ないで下さい! ほら試合見て下さい試合!」


 彼女の妄想の中では大活躍しているらしい男の子を見る。

 よく見ると何かがおかしいように見える。


 「あら?」


 疑問の正体は彼にマークが入っていることだった。

 それも部長の矢吹さんだけでは無く五十嵐さんまでマークしている。


 男の子は蝶よ花よと育てられる為、スポーツをするようなことはほとんどの場合あり得ない。

 もし怪我でもしたら大変だからだ。当然そんな男の子がバスケをすることになればただ怪我をさせないように気をつけ、ボールから遠ざけようとするはずである。


 それなのに、あの配置だといかにも彼が得点を入れまくる要注意人物として警戒されているように見えてしまう。


 試合は進み彼にボールが渡った。


 (なんでボールを渡すの?!)


 ボールを受け取る際に怪我をしなかった事に安堵するが、彼がボールを持っても何も出来ないだろう。

 この瞬間までは、そう・・・思っていた。


 「ふっ!」


 しかし、彼はクロスオーバーしながら五十嵐さんを抜き、目の前に現れた矢吹さんを自らの体を反転させてロールターンで躱す。まるでバスケを長年してきたかのような動きに目を見張る。


 一見そこまで難しいようには見えない・・・見えないがその節々には相手に取られないように凝らされた技術が潜んでいるのが分かる。ボールの緩急の見せ方であったり、視線の向きで相手を翻弄している。


 そして何よりも仲間に対しての鼓舞が上手い。


 「全然大丈夫ですよ! ドンマイドンマイ!」

 「ナイスです! そこから上がって下さい」

 「巻き返せますよ! あとちょっとです!」


 と、常に声をだしている。

 それによって点数では負けているはずの少女達には笑みが絶えない。

 今、あのコートを支配しているのは完全にあの男の子だ。


 男の子がなぜこんなことが出来るのかと驚愕していると、ふと入試の時に話題になった男の子が浮かび上がる。


 「あの・・・もしかして彼の名前って大路 尚人君?」


 「あれ?やっぱり先生も知ってたんですか?」


 己の発言を肯定する部員の発言に思わず天を仰ぐ。

 天才的な頭脳にここまでの身体能力、控えめに言って完璧すぎる。

 明日の職員会議で彼の事について話そうと思うがどれだけの人が信じてくれるだろうか?運動の出来る男子なんて物語の中にしか存在しないとつい先ほどまで私も思っていたのだから、逆に心配されてしまうかもしれない。


 どうしようかと考えている中で、その目はしっかりと王子様のような少年に釘付けになっていた。




 **************************




 やはり体を動かすのは楽しい!

 生きているという実感が持てる。

 目の前には五十嵐さんと部長さんが必死に僕を止めようとしているが、未だ僕を止めるには至っていない。恐らくこんなプレイスタイルの選手に会うのは初めてなのだろう。部長さんの目には未知の物に出会った高揚感が溢れ出ていた。次はどうするのかと全身から語りかけてくる。


 再び僕にボールが回ってくると毎度のごとくドリブルで抜こうとする。

 しかし、どれだけ躱そうとしても僕の動きに完璧に着いてきて全く抜けそうには思えない。


 (凄い! この短時間でもう抜けないのか。途轍もない吸収力だな・・・)


 しかし、別に抜く必要など無いのだ。


 二人からの猛攻を耐えながら周りのチームメイトを確認する。

 そして少しの余裕が出来るとボールを持っている右手を背に回し、左側にいた黒井さんにパスする。


 「なにそれ!」


 「えっ!」


 楽しそうな部長さんと困惑した黒井さんの声が聞こえるが、黒井さんはしっかりとボールを掴みそのままシュートする。川崎さんが止めようとするもぎりぎり届かずそのボールはネットの中を潜った。


 ピッピー!


 そのシュートを最後に試合終了のホイッスルの音が鳴る。

 結果は68対65。

 僅差ではあるがなんとか勝つことが出来た。


 「大路君本当に男子なの!」

 「どこでバスケットボールやってたの!」

 「あ、あの、もしよかったら手を繋いで下さい!」

 「いや~お前さんすごいねえ!」


 いろんな人に声をかけられ楽しく談笑する。

 勿論、手をつないで欲しいと言った少女には手を繋いだ。

 まあ、その後なぜか体育館中の女子が僕と手を繋ぎたがったので一人ずつ繋いでいった。

 最後にはバスケットボール部の顧問の先生も顔を染めながら手を出してきたのには驚いたが、今日対戦させて頂いたお礼も込めてしっかりと感謝と共に握らせて貰った。すると顔を真っ赤にさせて口をぱくぱくさせていた。どうやら少し初心な先生のようだ。


面白いと思って頂けた方は下の評価ボタンを押してもらえるとやる気が出ます!

明日からは分量を増やして19時に一本投稿しようと思っています(*^_^*)

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― 新着の感想 ―
[一言] 女のコに混じってバスケするとかマジか!? 前世の記憶があるのに身体接触がなかなか激しいバスケを女子チームに混ざってやろうとするとは、もしや変態さん? ただそういう感じには見えないから前世はこ…
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