驚愕の事実
僕の名前は佐々木 信也―いや、元佐々木 信也と言った方がいいだろう。
何を言っているのか分からないかもしれないが、僕は一度死んで大路 尚人という少年に生まれ変わった。
前世の記憶を思い出したのは僕が5歳の時だった。
高熱で魘されているときにふと頭の中にその記憶が蘇ってきたのだ。
ここで少し前世の佐々木信也について語ろうと思う。
前世の僕はただただ普通の日常を過ごしていた。
普通に勉強して全国で1位になり、普通に運動してあらゆる部活の助っ人になっていた。銀行強盗をぶっ飛ばしたのは今は懐かしい思い出である。
しかし、そんな日常にも終わりが訪れる。
学校の帰り道、いつものように友達と一緒に帰宅していると、ふと横断歩道を渡っている女子小学生が目に入る。
お小遣いで買ったのかソフトクリームをおいしそうに食べている。
その笑顔に思わずこちらも笑顔になると、少女の方めがけて赤信号を無視したトラックが突っ込んできた。
「危ない!」
僕は迷わず少女のもとへと駆けるとトラックの正面から突き出す。
当然その代わりに僕がトラックの前に投げ出されることになり、結果、僕はトラックに衝突した。
宙を舞った僕はそのまま地面に激突――すること無く空中で姿勢を修正し地面に足から降りると同時に後ろに勢いを殺して体操選手顔負けの技を繰り広げながら着地した。
しかし、それで終わりではなかった。
僕が着地した場所はビルの工事現場だったのだ。
僕が着地した場所に頭上から数本の鉄骨が降ってくる、ぎりぎり5本は避けれたが6本目で避けれず上から潰された。
僕の死因は鉄骨による圧死だった。
そして5歳の時に前世の記憶を思い出したわけだが、僕の家はどこかおかしいと感じる。
まず6歳になった時、僕は小学校に入学しないのを不思議に思った。
母に聞くと、
「尚人君は勉強しなくてもいいんだよ~ お母さんがしっかりやしなってあげるからね!」
と実に良い笑顔でサムズアップしていた。
僕は父も見たことがないし何か複雑な事情が有るのだろうと思い笑顔で「そうなんだ!」と返事をするがどこか腑に落ちないしこりを残した。そしてその2年後、我が最愛の妹はしっかりと近くの小学校に入学していた。
次に僕が12歳の時、僕はすっかり中学校に入学すると思っていたが、これも入学することはなかった。不思議に思った僕は再度母に尋ねる。
すると、
「尚人君はそんなにお外に行きたいの? もうお母さんのことが嫌いになったの! うわ~ん!」
とマンドレイク級の大泣きをしてしまった。
困った僕はとにかく謝ってその場は収めたが、その2年後我が最愛の妹はしっかりと中学校に入学していた。
「いや、おかしい」
現在僕は14歳であり来年は高校に入学する歳だ。
しかし、入学するような動きは我が家では全くない。
それどころか家の外に出さないようにしているとしか思えない。未だに僕は外の世界に出た覚えがない。14年生きて外に出ていないのは僕以外にはペットショップの動物しかいないのではないだろうか?
まずい・・・非常にまずい・・・このままでは親の金で生きるニートまっしぐらだ。
せめて学歴はほしい、就職するにも確実に必要になるだろう。
今の僕はまさかの幼卒未満である。そんなの前世の日本では聞いたことがない。そんな人物を雇うような人がいるなら是非教えて欲しい。
「うーん、どうするべきか・・・うん?」
部屋の中を右往左往していると、妹の社会の教科書が目に入る。
僕の世界と同じなのだろうかと興味本位で教科書をめくっていくと一つのページで思わず手が止まる。
そこには世界の人口割合を示しているグラフが載っていた。
そこにはこう記されていた。
世界人口約50億人
割合:女性 96.8%
男性 3.2%
「・・・は?」
驚愕の数字に思わず呆けたような声が漏れる。
僕は前世と同じ世界だと思っていたがどうやら全く違う世界に転生したらしい。
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次回、19時予定