モノ書き辺境令嬢は執事に紅茶を入れてもらう
ほのぼの応援系小話です。
今日も遅くまで頑張ったんですね。
執務の後だというのに、お疲れ様です。
●●様、お紅茶、作ってありますよ。
「お砂糖二つにミルクはたっぷり」でしたよね。
はい、ロイヤルミルクティですよ。
はい。書き終えた後は、甘いものが欲しくなる、でしたよね。
ふふ、●●様の好みは、すべて覚えていますよ。
今日はお話どこまで進んだんですか? 昨日、ちょうどいいところで終わりましたからね。
続きが気になって……
見せてくれてもいいじゃないですか。
恥ずかしい? そんなことありませんよ。●●様の書く小説、面白いですから。
後で一人で見たらって……今、見たいんですよ。
――ふう、今日は、ビックリしました。主人公にあんな秘密があるなんて……
あ、すみません。近づきすぎてしまいました。申し訳ございません。
自分には才能がないんじゃないか、ですか。
書きあがるかわからないものに時間を使うなんてって思ってるでしょ?
思っていません!
主人公と、ヒーローの執事がこれからどうなっていくのか。
こんなに面白いんですから、頑張って完成させましょうよ。
主人公の子の秘密を打ち明けようか悩んでいる気持ちがぐっと胸に迫ってきますよ。
ヒーローの執事もとってもかっこいいですよ。
二人の掛け合いも、出会ったころよりドンドン心が通じ合ってきているのが伝わって、
●●様の小説を読んでると、ほっこり幸せな気持ちになれますよ。
私はがんばっても作家になれないかもしれない?
領民に配ってもみんな同じように面白かったしか言わない?アレはウソなんだ?
わざわざ配り歩かないと、見てももらえない?
●●様、●●様!
気を落とさないでください!
耳を塞がないでください。
こちらを向いていただけませんか。
――ならば。
すみません、●●様を抱きしめるなんて許されないのはわかっています。
ですが、背中を通して私の心臓の音が聞こえますか、私の体温が伝わっていますか?
●●様が書いた作品の主人公は悩んでいても、絶対に立ち上がります!
●●様が、悩んでも苦しんでもそのたびに立ち上がる。
そんな主人公になって欲しいって思いを込めて、この物語を書いたのではありませんか?
立ち上がるのが大変なら、私が手を貸しますから。
あ、すみません。もう離れますね。
私の体温が伝わりましたか?
心臓が頑張れって話しかけていたと思うのですが。
●●様のお話、きっと面白いものになると思いますよ。
私は紅茶を入れるくらいしかお手伝いできませんが、完成するのを待っていますよ。
読んでいただき、ありがとうございます。
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