いっしょに奇跡をみにいこうよ
『冬の童話祭2017』に投稿したくて、書きました。
童話は初めての挑戦です。初めてのことはやはり難しかったです。
楽しんで読んでいただけたら嬉しいです∘☃*
わたしは一度だけ、雪のなかに奇跡をみたことがある。それはわたしがまだ幼かったころ。
たいへん可愛がってくれたりょうしん、それと、ちいさな赤子であったいもうとにたいして、こころの壁をつくり内にこもっていたころのことだ。
わたしはあの大晦日、ふてくされひとり部屋にとびはいった。ふすまをピシャン!と閉じ、しいたままであったお布団にもぐりこんだ。
りょうしんはふすまの向こう側、まことに困ったようすでいた。しかし赤子のいもうとがウギャァとないたため、そちらに注意をかえ、あやした。
わたしのことは、すきにさせてあげましょう、というけつろんにおさめてしまった。
わたしがウギャァともしないたら、あんたらはどうしてくれるのか。
怒りがフツフツとわき、そして静かにおえつした。
まくらに顔をおしつけていたら、しばらくするとねむってしまっていた。
シャンシャン、シンシン。
ひかえめになる雪のおとで、めを覚ました。
みぎとなりではちち、ひだりとなりでははといもうとがねむっていた。いもうとはしあわせそうに、ははのむねに寄りそっている。
みみたぶをつねってやろうかとおもう。しかし、わたしがわるものになるのはシャクなのでほうっておく。
わたしにはもう、ひつようないわ
窓のそとをみやる。雪はしとやか。
白い、暗いよぞらのなかでもあんなに…
ゆきなるつちに、しみほろぶ…
ゆきなるつちに、しみほろぶ
わたしのなきがらうるおうよう…
なんのうたかしら?
わたしはだれかのうた声にきづき、首をかしげた。
わたしのなきがらうるおうよ…
ゆきなるつちに、しみほろぶ
こんにちは!
白い雪にまみれたちいさなキツネが、ひょこと窓から顔をだした。
わたしはただただおどろいてしまって、ことばをわすれたようになっていた。
あいさつもろくにできないのかな?さいきんのにんげんのこどもは…
なかなかナマイキなキツネだわ
わたしはすこしむっとして、ことばをおもいだし、子ギツネにむかっていいはなった。
あんたみたいなちいさな動物は、きをつけないとうどんのだしにされちゃうのよ
子ギツネは目をまあるくした。
なんておっかないにんげんのこどもだろう!そんなやばんなこころでは、きっとだれもかれもに恐れられて、ゆくゆくはひとりなんだろうな
まとを得ている。
わたしはふすまを開けてかぞくがねむる部屋をとびだし、ウワァーン!となきじゃくった。
おおなきで床をころがる。ドタバタドタバタ…ゴロゴロゴロ。
だれもおきておいかけてきてくれない。おとうさん、おかあさん。
わたしが悲しくなっても、なぐさめてくれない。もともと悲しかったことなんてもうわすれたけれど、ひとりで立ちなおるなんてそちらのほうがよっぽどだわ!
ひとりの暗やみにおちていくように、床のうえをどこまでもころがっていった。なみだの道ができていくのを想像した。
そろそろなきすぎた
フッと冷静になった。頭がくらくらする。
わたしは寒い、とおもった。
なぜかそとにいるのだ。ましてやしらない
ところ。葉に雪がつもる、木々のなか。
ころがりすぎてしまったのだろうか。
ふあんになり、とりあえずおきあがろうとした。手がつめたい雪につつまれてふるえる。
ほんとうのほんとうにひとりかもしれない。
寒さと恐ろしさで、歯がカタカタとなる。
…なるほどね、きみのじじょうはわかったよ
顔をあげると、さきほどのナマイキな子ギツネがうでをくんでこちらをみていた。
よくみると首に赤いマフラーをまいている。
そんなに悲しくなっちゃったなら、おれがあたたかい、素敵なところにつれてってあげるから、なぁ、げんきだせよう
まえ足をさしだす子ギツネ。寒さで縮こまって、かたそうな肉球。
ほんとうにあんな残酷なことをいいあてた、あの子ギツネかしら?
じつにふしぎなイキモノ。そもそもなぜことばをはなせるのか。
わたしは多少、ふしんにおもいながらも、しかしもうりょうしんといもうとのもとへは帰りたくなく、ゆうきをだしてその子ギツネのまえ足にふれた。
キュッと握ってくるちいさすぎるまえ足。肉球は意外にもつよい、だんりょくせいをもっていた。