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夏の怪談ちょっと置いてきますね

作者: 光露

これは少し前の話。


僕の母校の中学の話です。あれはとある夏の暑い日の話でした。期末テストを終え、後は終業式を待つだけだった僕たちはあの日、太陽が深く沈むまで話し込んでいました。もう気がかりな事は残されていない、そんな解放感が僕たちをあの日、あんな時間まであの場所にいさせてしまったのです。


迫る夏休みに向け仲間たちと話していたとき、仲間の一人がある異音を聞きつけました。


「おい…、何か変な音が聞こえねえか?」


「何かってなんだよ?」


「いや、ピポパピポッてな感じの一定じゃないこれは…リコーダーの音か?」


「別にリコーダーの音なんて珍しくも何とも無いだろ」


妙な事を気にする彼が気になりましたが、実際なんともないことなので僕はそう返しました。そうすると彼は少しむず痒い反応を見せましたがそれだけでした。しかしもう一人の友人が口を開き。


「いや、でもさ…」


「でもなんだよ」


「あっち、ただ道があるだけで家なんか見えなくね?それに…」


「あ?」


どうも要領を得ない友人の言葉に苛立ち、僕もその音とやらに耳を傾けてみました。すると、先程までは意識から締め出していたのか、不規則なリコーダーの音が嫌に明瞭に聞こえてきます。そしてその方向に目を向けると。


林の向こうの電燈、その下に不自然な影が蠢いていました。


「何だよ、あれ…」


そう呟いた自分の声がやけに掠れていたのが今でも思い出せます。


「行って…みるか」


そう呟いた友人の言葉に、僕たちは静かに息を飲みました。俗に言う怪談話と言われるような体験はめったにすることができません。そんな怖いもの見たさな気持ちが僕らを一つにし、気付けば僕らはその言葉に顎を引いていました。


「おい、逃げる時は一斉に行くぞ。置いてくなよ」


「わかってるって、それよりここら辺暗いんだから気をつけろって、自転車転ばすぞ?」


そんな軽口を叩きながら、近ずく度に高まる緊張と比例するような恐怖に身を任せ、その歩を進めました。そしてついに電燈の近くに辿り着きました。辺りは林で木々がうっそうと茂り、遠くの方で違う電燈がちかちかいってます。そんな電燈の下には只の影ではなく、うつむきながらリコーダーを口にした子供がいました。大分近くに来ましたが、その子供はこちらに気付くそぶりをまったく見せず、ただひたすらにリコーダーを吹いています。


その明かりの中に入ることがためらわれた僕らは、近くの木の影の中から彼に声をかけました。友人からの視線で、渋々と僕が。


「ど、どうしたんだい?」


僅かに声がうわずってしまったが、それは彼にきっちりと届いたらしく、彼はゆっくりとその顔を上げて、じっとこちらを見ています。そしてついに口を開き…。




「誰………?」




「「「ううぅぅぅわぁぁぁああああああ‼」」」



掠れた彼の声、それは見た目違わず、声変りをしていない小さな子供の声でした。その声を聴いた途端に友人の一人が全力で逃げ出し、それにつられて僕らは全力でその場から逃げ出しました。


二百メートル程逃げた後、僕らはまた集まって話し合いました。彼は逃げた後を追って来る気配は無い、とりあえずは何も無いことを確かめて、話に上がったのはもう一度確かめに行ってみないかという事でした。


「まぁ、普通に考えれば幽霊なんていない…、だからもう一度だけ確かめに行かないか?」


要約すればそんな内容の話し合いをし、僕たちは早めの二度目のアタックをすることにしたのです。襲われないと分かれば大した恐怖は無い、けれどもそこには代わりに膨れ上がった好奇の塊が置いてありました。


「じゃあ、行くぞ」


既に一度往復した道、僕らはもう一度そこを歩きました。そしてもう一度出会う先程の少年、彼は先ほどと何ら変わりなく、何事も無かったかのようにリコーダーを吹いています。だから、今度も僕が、今回はちゃんと明かりの範囲にも入ってもう一度同じ質問をしました。


「どうしたの?」


するとその子は顔を上げて、わずかに微笑んで言いました。


「暗い家に入るのが怖くて、親が帰って来るのを待っているんです。それで暇だったからリコーダーを吹いていて」


その返答と、電燈に照らされた少年の顔を見て、体から力が抜けていくくのを感じました。見れば反対側には明かりの点いていない家があり、友人も肩から力を抜いています。


「あのさ、怖いから止めてくれないかな?そこそこ遠くまで聞こえてて」


「そうなんですか、分かりました」


そう言って笑う彼に手を振り、僕らはそのままもといた場所へ、そして家に帰りました。少ししてからまた鳴りはじめたリコーダーの音を聞きながら。


こうして僕らの怪談話は終わりました。しかし、この話にはまだ少しだけ続きがあったのです。




なんとこの男の子………。











作者ぼくだったんですよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお‼




よし、これで七割の予想は裏切れたと思うぞ。3割家族の話、3割友人の話だと思ってた人達、残り一割は大穴で何も考えていなかった人達だ!!


とまあ、こんな感じの怪談っぽい話です。実のところ中学生の会話とか、少しだけわざとらしくした描写はフィクションですが、これの内容は完全に100パーセントノンフィクションです。描写も90パーセントくらいは本当です。あくまで周りが林なだけでそんなに山の中の話ではないんですけどね。近くにバリバリスーパーありましたし、今は林がかなり切り倒されてスーパーの明かりで照らされていますしね。そんな話の怖そうに書いてみてるけど実際全然そうじゃない話でした。


あ、ちなみにこの時の僕は小学三年生で鍵っ子でした。終業式前でいろいろ荷物を持って帰って来ていた時期だったんでリコーダーがあったという事です。以上で終わり‼

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