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ろば耳  作者: 楠木あいら
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アルモニーの朝

 寝不足にはならないが、眠れないまま朝になった。


「はぁ……」


 昨日の琴子さんが言った好きな人。当てはまらないようで、当てはまるような気がする。なので、もしかしたら失恋にはならない、かもしれない。


 外見も中身も格好良いい。

 自分がイケメンではないが中身、ほら、琴子さんを助けた事(ゲーセンとスマイルとバトル)は格好良いいことにはならないのか?


 モテる。

 hodakaさんには踝のお陰で好かれている。

 3番目は……俺の最寄り駅と琴子さんが降りる駅は同じ。もしかしたら見られているのか? 1度も気づけなかっただけで……


「…………」


 考えてて空しくなった。

 琴子さん|(友だちとしての)の仲なら、挨拶してくれるだろうし……


「いや、諦めてはならない。希望を持て……」

『マスター、生徒会長みたく、もっと勇気を出してストレートに言えば良かったんですよ。

 そしたら2択で返事を貰えたんだし』

「…………」


 何を考えているのかバレバレの俺に、マロンがダメ出しをしてくる。

 反論はできないのでため息をついて、話題を変えるしかなかった。


「魔法使い……」


 生徒会長と恵凜先輩のバトルを観戦した者は除外できると琴子さんと話したが、朝になってここがアルモニーという名の電脳世界|(多分そうだろう)という事を思い出した。


「姿をコピーして部下の魔法生物に動かしてもらう方法もあるか。

 マロン、それって可能?」

『グランドマスターのお力は未知数ですからね』


 それ以上答える様子はなく、かわされた。


「まあ……それでも生徒会長と恵凜先輩はないだろうな」


 色々あった早朝。俺が店を離れる時にはマロン以外 誰もいなかった。

 恵凜先輩と琴子さんは朝から服を買いに行ったし。

 生徒会長は三角印良品にすら戻ってこなかった。

 まあ、あの後何かあったのは間違いはないだろう。恵凜先輩、憤慨して動揺してたし。


「………」


 俺は無意識に腹をさすった。

 特別空間なので腹も減らないが、まあ、朝ごはんを食べたくなる整理現象だろう。


「何はともあれ飯にしよう」


 俺らは最上階のフードコートに向かっていた。

 全てタダになり、周りの目を気にしなくて済む魔法生物しかいないので、ここは高級料理で優雅に朝食をと、思ったのだが、ここに落ち着いた。

 まあ、ヘアピン購入で少しでも費用を浮かすため、フードコートで食事なんてめったにしない。

 スーパーや場所によっては店内にあるコンビニで、パンやおにぎりを買い、1階の狭いフードコートで胃を満たす。


「最上階フードコート。広いな」


 俺にとってはワンランク上の食事場に感動した。

 いつもは、チラリと見て通り過ぎる最上階のフードコート。そこで朝メシが食えるなんて……。


「お前も節約しているから、滅多に来ないだろ」


 おはようの挨拶をしてから、同じ節約している隼兎は、上機嫌な表情をしていた。斜め後ろには、にこにこ顔の相棒シャルムもいる。


「隼兎は堪能ナイトを送ったようだな」


 夢のバルバニアファミリー専門店で、しかも同じサイズで過ごした隼兎の感想は、子供のような純粋スマイルだった。強面の奴が。


「飾磨の方こそどうなんだよ。同じ店で一晩すごしたんだろ」

「……色々あった」

「色々ね……」


 隼兎の奴、俺の表情を見て答えを知った。


「まあ、飯にしようぜ」


 それ以上は聞かない方が良いと判断した隼兎は、ずかずかと歩き始めたが、視界に生徒会長が入り慌てる。


「キング、おはようございます」


 席につき色鮮やかで豪華な海鮮丼を食べていたが、何も知らずに接する隼兎に、いつもと変わらない挨拶を返した。

 何事もなかったかのように見えるが、なぜが左手は腹を押さえている。


「寝冷えですか?」

「いいや、生理的減少と言うものだよ。アルモニー空間内に痛みは感じられない設定になっているのだから」


 一体、何があったんだ?


「滞在時間が気になり始める頃合だが、魔法使い捜しは順調かね」

「なかなか絞れなくて、行き詰まってます」


 2人の会話を聞きながら、自分の思考に入った。

 アルモニーの滞在時間は正午まで。皆の意識もバトルから魔法使い捜しに移行する。


 魔法使いは誰なんだろう?


 一応、候補はできているのだが……


「それはそうと……魔法使いかもしれない人に聞くのって勇気がいるよな」


 正解の人ならともかく、違う人に『あなたは魔法使いですか?』って聞いた時は恥ずかしい。


『マスター、その心配はいりません』


 マロンが正面に移動すると、手のひらサイズの厚紙を差し出した。

『ここに魔法使いだと思う人の名前を書いてください。マロンがグランドマスターに送信して、それを見たグランドマスターが指示するので、そのお店に行けばOKです』


 受け取った厚紙には、参加者の名前と、名前を書くスペースがあった。


『これなら間違えても、大丈夫です』

「間違える気はないんだけども」


 視線を隼兎たちに戻すと、皆、同じ厚紙を手にしていた。


「……」


 視線を戻した。

 さて、名前を書くか。



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