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ろば耳  作者: 楠木あいら
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下克上1

 揺れている、様な気がする……


「地震?」


 がばっと起きた俺の前に人影があった。


「うわっ、何でいるんだよ」


 鳥カゴの中に吹田がいた。しかも間近に


「お前がぐうぐう寝ているからだろ。お陰でこっちは鳥カゴに入れられて、たたき起こす……」


 叩かれた分を返すことにした。


『この場にkotoko様がいたら、さぞ、喜んでいたんでしょうね。残念です』


 鳥かごが上昇したかと思うと大きなマロンの顔があった。

 と言うことは、マロンが鳥かごを持っているのか?


「店? じゃない」


 目が覚めてきたところで、鳥かごの外を観察した。

 時間は夜のままで、たまに弱い照明が店内を照らし動いていく。マロンは移動しているようだ。

 深夜だからか、魔法生物は歩いていない。俺たちしかいなかった。

 俺と吹田とマロンにオリオン。それから……


「これは学校内の戦いだから。琴子ちゃんには、待っててもらったわ」

「君たちは、立会人として、つきあって貰う」


 恵凜先輩と生徒会長。もちろん、相棒の葎と生徒会書記も。


「立会人?」

「真の生徒会長は誰か、決める戦いよ」

「正確には下克上というものだ」

「……」


 恵凜先輩、生徒会書記が持つ鳥カゴを睨んだ。

 どうやら恵凜先輩の下克上バトルに、俺達は巻き込まれたらしい。


「こんな夜遅くにバトルしなくてもいいんじゃないですか?」

「ふっきー、夜遅くじゃなくて、もう早朝間近。日の出までにバトルをして、勝者だけが朝日を浴びるのよ」

「いや、全員浴びられます」

「飾磨君、細かいことを指摘していると、琴子ちゃんに嫌われるわよ」

「それを今、引っ張り出さないでくださいっ」


 関係ない事は、そっとしてほしい。


「それで副会長、バトルの場所は?」

「もちろん、中庭よ。朝日を浴びるなら庭でしょう」


 そこまで朝日にこだわる……。


「夜は施錠しているから、警備員さんが鍵を開けてくれるわ。出入り口で待っててくれるって」

「警備員……」


 恵凜先輩たちの後ろにいたので何があったのかはわからないが、戸惑う生徒会長の声からして、何かあったらしい。


「警備員に頼んで交代してもらったんだ」


 マロンが横に移動してくれた事と、音声読み上げソフトという独特な声で、魔法使いがいるのを確信することができた。


「魔法使い。どうしてここに?」

「面白そうなバトルがあると耳にしてね。怖がらなくても良いよ。ただの観戦だから」


 暗闇に紛れる黒ローブだが、金ぴかの肩当てと、オーラなのかそれとも魔力なのかはわからないが、強い存在感を持つ魔法使いはふわりと浮いていた。

 恵凜先輩から警備員の魔法生物に『バトルをするから鍵を開けてほしい』と言えば、当然、魔法生物は主である魔法使いに許可の有無を尋ねる。


「魔法使い自ら足を運んでもらうとは、光栄な事だ」


 生徒会長は動じることなく、魔法使いの観戦を受け入れた。


「そう言ってくれると嬉しいよ。鍵を開けるから、ついてきて」


 魔法使いが出入り口に進むと、鍵どころか扉まで自ら開いた。




 建物の外に出ると、ひんやりとした空気が鳥かごの中に入り込んでくる。

 巨大な空に水を足しているかのように、闇色が薄まっているが、闇が溶けるにはまだまだ遠く、夜が支配していた。


「真の生徒会長を決めるバトルだって聞いたけれども、生徒会長とは何なんだい? 」


 魔法使いは、この世界で生まれ育ってない者らしい質問をした。

 聞かれたところで無関係な人間は返答に困るが、関係者がいるので、大人しく黙っていることにした。


「生徒会の長です。

 生徒会は学校行事の企画や運営。あと、意見箱を設置しているので、そこに来た声を聞いて、場合によっては対処しています。

 生徒がより快適に過ごせる事を目指しています」

「良い心がけだね」

「私は彼の運営に不満を感じているわ。だから、バトルを挑んだのよ」


 模範解答と思っていたのに、恵凜先輩は反発する。


「私の運営は完璧だ。副会長が不満なのは、実権を握れない事だけだろう」

「私は1番じゃないと嫌なの。悪い?」


 恵凜先輩、開き直った。


「もちろん、生徒会の運営も生徒会長よりも上を行く自身はあるわ」



 中庭は一面の芝生で、何十人もの子供が駆け回っても、十分なスペースがある。

 そして広場の先に屋根付きの野外ステージがあった。

 そこに向かって進んでいたが、魔法使いは浮遊移動をやめる。


「君たち、バトルはステージかい?」

「はい。ステージに上がり、そこでバトルをスタートします」

「その場合、バトルフィールドは広場になる。

 バトルプレイヤーだけがステージのスポットライトを浴びるた方が格好いいな」


 魔法使いは、風でも人の動きではない魔力で、ローブを揺らした。

 その途端、視界から鳥カゴが消えたかと思うと、足元が金色になった。


「観戦者は邪魔にならず、迫力満点に見える所が良いだろう」


 いつの間にか魔法使いの肩当てに移動していた。隣にはマロンがいる。


「魔法使いの肩?」


 吹田の声がする。オリオンも含めて反対側にいるようだ。


「2人ともステージに着いたね。それじゃあ、始めるとしよう」


 ローブが魔力で揺れると、ステージに照明が2つ、生徒会長と恵凜先輩を照らした。



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