表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ろば耳  作者: 楠木あいら
32/48

情報とオススメの本

 吹田と生徒会長は本屋にいた。


「ふうん、ふっきーは さゆりん推しかぁ」

「あわっ、飾磨!」


 アイドルの写真集を穴が空くほど見続けていた吹田は、声をかけるまで気づかないでいた。

 写真集に夢中になっていた事がバレた焦りと、頭だけの俺が、振り返った吹田の間近にあるんだから仕方ない|(マロンに手伝ってもらった)が、吹田の驚きぶりは見てて面白かった。

 驚き慌てた吹田は、まるで鳥が羽ばたくように腕を大きく振り回し、写真集と俺を派手に跳ばしてくれた。マロンがキャッチしてこれ以上の損傷を防いでくれた。


「わぁ、何なんだ、何なんだ」

「ここに来る途中、トラブルに巻き込まれたんだよ」

「現実では体験できない事をする。これもアルモニーを楽しんでいる証拠だな」


 優雅に言う生徒会長だが


「生徒会長、そのクッションは、どこから……」


 大きなビーズクッションにどっかりと座っている。

 本屋の中で


「近くの三角印良品から購入した。もちろん、店員には許可をもらってあるよ」


 本屋にもNPCである魔法生物がいるが、誰も生徒会長を変な目で見ることなく、ただの通行人Aと認識して通り過ぎていく。

 生徒会長も特別空間を楽しんでいるようだ。

 待機状態なのか、生徒会書記|(生徒会長の相棒)とオリオンはNPC同様本屋内をウロウロしている。


「生徒会長……」


 もう一つ気になる事があった。会話に参加しているもこの、さっきからずーっと視線が本から離れていない。


「魔法使いのイベントに参加したいのだが、ページをめくる手が止まらないのだ」


 本に興味がもてない者にとって、一生手を伸ばすことない分厚いハードカバー。本に書かれたタイトルは。


「限界集落のハOジ……」

「某有名ストーリーの限界集落版だよ。

 年金で生活する男の家に、孫娘が子供を押しつける所から始まる。少年の代わりにニートで、幼女趣味の中年男。薬物中毒で療養と言うより、半ば幽閉生活するお嬢様」

「身も蓋もない設定ですね」

「だが、近所の者たちが皆温かく、何よりも主人公が純粋で前向きなのだ」


 説明が終わると生徒会長は読書に戻る。話しかけづらいので、吹田から情報収集を始めることにした。


「魔法使い? ああ、見た」

「何か言ってたか?」

「何でお前に言わなければならないんだ?」

「情報収集してんだよ。魔法使いがそれぞれに言ったメッセージから推理できないかと思ったんだ」

「何か得られたのか?」

「何で言わないとならないんだよ」

「仲が良いな。ろば耳ファイターの交友が深くなるのは良いことだ」


 生徒会長の発言に俺らは否定したが、同時にしかも同じ言葉だったので、生徒会長に笑われてしまった。


「魔法使いだけど……」


 話題を切り替えたいため、吹田はしぶしぶ魔法使い情報を提供してくれた。


「通路を歩いていたら、肩を叩かれて振り向いた先に魔法使いが浮遊していた。そのまま、通り過ぎて行った」

「メッセージは?」

「ああ……君は面白いねって言った」


 面白い……オリオンを指しているのだろうか。


「魔法使いなら、私の所にも訪問してくれたよ。本を読んでいたから『読書中、失礼しました』と謝罪して、その場から消えた」

「消えた。どこかに移動したんじゃなくて」

「そう、消えた」

「…………」


 さらなる疑問と言ってもよいのだろうか……


「それはそうと吹田は魔法使い、捜さないのか?」

「捜すよ……」


 吹田の視線が写真集コーナーに向かう。生徒会長も含め、しばらく行動しないようだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ