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ろば耳  作者: 楠木あいら
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メッセージ

 とうとう琴子さんに吹田が|(ヘアピンを好きになってしまったという)人生を変えた『運命の人』だとバレてしまった。

 その後は質問攻めで、彼女達|(恵凜先輩もいる)に誤解がないように説明するハメになった。

 今回のアルモニーでいつかはバレるんじゃないかと思っていたが……まさか、こんなに早かったとは。

 まあ、吹田にとっては良かったかもしれない。

 1度バレたら、もう隠す必要がない。開き直り、いやもう開き直るしかないのだから。


「これでふっきーも、ふっきれたわね」


 と、恵凜先輩がドヤ顔で言ってたな。

 彼女とのバトルに負けたらあだ名を『ふっきー』とつけられたらしい。色々あったとはいえ、恵凜先輩に勝って良かった。



「はぁ」

『まあ、マスター、ヘアピン売り場で一息つきましょうよ』


 そうだった。俺らはヘアピン売り場にいたんだった。

 吹田騒動が終わってから、一同はそれぞれの店に散らばって行った。

 何せ特別空間アルモニーは、敷地面積15000㎡延床面積70000㎡の3階建て。205の専門店がある巨大ショッピングモール……と、インフォメーションセンターの魔法生物さんが教えてくれた。

 様々な服屋に隼兎のオアシス、バルバニアファミリー専門店もある。

 もちろん俺のオアシスも。残念ながら『サラ・マロン』はないが、アクセサリー専門店にアクセサリーがある雑貨屋。

 それらの店が堂々と入れて人の視線を気にせずに手に取れて|(一時的だが)買えるのだ。


「はぁ、夢のようだ」

『マスター、アルモニー空間なので、マロンに買ってくださいよ』

「……。そうか、相棒に装備できたんだっけな」


 相棒とはいえ、女の子のためにヘアピンを選ぶ。それも悪くないな。


『そうだなぁ』


 俺は改めてマロンを見た。

 栗きんとん色の目に整った口。可愛いと言えるパーツが均等に配置されている美少女。

 肩に触れるぐらいの短めの髪は、栗の固い皮みたいな色をしている。


「マロンの髪は明るい茶色だから、シルバーが良いかな」


 ハートが3つついたヘアピンを手に取ろうとしたのだが、目はその前にある……

 いや、その前にいる2頭身の小さなキャラクターで止まったまま、動くことができなかった。


『ようこそ、私の招待客』


 そのキャラクターは一目で『魔法使い』と言えた。

 黒のローブに、金色の見事な装飾が施された留め具や肩当てを装備していて、相当な地位や魔力があるように思える。

 いや装備品よりも、深くかぶっているフードから向けられる目は、魔法に素人な俺でも相当な力の持ち主であると感じ取れた。


『やれやれ。皆、ショッピングに夢中になってくれるのは嬉しいんだけれども、主催者の存在を忘れているんだもん』


 魔法使いの声に違和感を感じた。某動画サイトで使われる音声読み上げソフトを使っているからだろう。


「すみません。普段、店でヘアピンを見られるのはなかなかできなくて」

『そうなんだよね。ろば耳ファイターは強い分、人に言えない好きなものがあるから』


 ……。魔法使いも、生徒会長が広めた『ろば耳ファイター』を知っているようだ。


「あの、あなたが魔法使いなんですね」


 俺は改めて、目の前にいる者に質問した。両腕はローブの中に隠れていて魔法の杖は確認できない。


『そう。ここのアルモニーを作り、何よりも『hmw』の生みの親である魔法使いさ』


 2頭身の姿が消えて、人間サイズに変わると、俺の目の前にふわりと浮いていた。


「あの、魔法使いさんの名前はなんて言うんですか?」

『それは教えられないよ。だって、それが答えになるんだからね』

「え?」


 魔法使いはするりと店の外に飛んだ。


『君とは、初めましてじゃあないから』


 それだけ言うと魔法使いは店から離れていった。


「まって、それって……」


 慌てて追いかけたが、店に出た時にはもう魔法使いの姿はなかった。


『マスター、グランドマスターから許可が下りたので、説明できます』


 後から着いてきたマロンがにこっと笑って言った。


「グランドマスター?」

『マスター達が魔法使いと呼ばれる方。マロン達を作った生みの親、それがグランドマスターです』


 マロンは魔法使いが作り出したゲームのキャラクター。それを再認識した時、少しだけマロンが遠くに感じた。


「マロン、俺は魔法使いと会ったことがあるのか?」

『はい。今日、アルモニーに招待された1人です』

「招待……」

『今回、アルモニーに招待されたプレイヤーはマスターを含めて8人。

 グランドマスターは、その中の1人なのです』

「…………………………」


 なんてことだ、近いところに魔法使いがいたなんて。


「マロン、招待客のリストは見られるか」

『もちろんです。ついでに今、誰がどこにいるのかも検索可能です』


 マロンは人差し指で円を描くとウィンドウが現れ、招待客の一覧と付近にある店の名前を知る事見る事が出来た。

 招待客は俺以外に

 琴子さん

 隼兎

 吹田

 副生徒会長の恵凜先輩

 生徒会長

 耳フェチの美人社会人 衣聖羅(いせら)さん

 くるぶしフェチのhodakaさん


「この中に魔法使いがいる……」


 俺は改めて巨大ショッピングモール、アルモニーを見渡した。


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