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ろば耳  作者: 楠木あいら
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男のプライドを懸けた戦い2

「理央君、どうしたの?」


 見上げてみると琴子さんとお揃いの服を来た恵凜先輩……。それから双子のような相棒たちが近くの店から出てきた所だった。


「バトル中なんだけれども、ちょっと、色々とあって……」


 立ち上がり2人に手首の電子ブレスレットを見せると、琴子さんは首をかしげた。


「arata…さん?」

「琴子ちゃんは知らないか。ああ、うちの学校の子。その子ね……」

「そ、それはそうと2人とも同じ服ですね」


 恵凜先輩が吹田の事について話そうとしていたので、慌てて話を変えた。


「双子コーデだよ、理央君。一度やってみたかったんだ」

「服もタダだから、思いっきり、とっかえひっかえ、服が変えられるのよ。

 さあ、琴子ちゃん、次、行くわよ」

「はい、恵凜姉さま。じゃあね、理央君、マロンちゃん。バトル頑張ってね」


 とりあえず、琴子さんの耳に吹田情報が入るのは阻止できたが、時間の問題なんだろうな……


『マスター、バトルに戻らないとやばいですよ。arata様、お題の品を見つけたみたいです』

「…………」


 無意識に琴子さんの後ろ姿を見つめてた俺にマロンが現実に戻した。


「順位で勝敗が決まるわけじゃないから、焦らなくても大丈夫だろ」


 とはいえ、さっさと見つけないと……。


「レベルアップするために、今、自分が欲しい物……」


 …………………………


 またも無意識に向いていた視線を戻してから、俺はマロンに店内検索をして貰いながら走りだした。



『それなら、2階にあるheart shopがオススメです』


 レベルアップしたいものというより、足りない物は『勇気』だと思った。勇気を形に表すとしたら、ハートの形をした物。ハートのグッズだらけの雑貨屋に向かう。


『いらっしゃいませ、借り物競走ですね』


 ハート柄のエプロンを身につけた魔法生物が、バトルを知っているようで向かい入れてくれた。


「奥にあるクッションを借りて行きます」


 目に入った真っ赤なクッションに手を伸ばした時、同時に伸びた手があった。


「吹田、3階にいたんじゃなかったんか」

「そう言う、飾磨だって1階を走ってたろ」


 驚いていた俺からクッションを奪うと、吹田は一気に走りだした。


「………」


 俺は改めて店内を見回したが、このクッション以外、大きかったりインパクトがありそうな商品は見当たらない。


「それ、俺が先に見つけたんだからな」


 聞いてはいないだろう苦情を吐きながら、同じクッションをつかんで走りだした。



魔法生物『どうやら、同じハートのクッションを選んだようです』


 必死に走っている中、インフォメーションセンターの実況が聞こえてくる。


隼兎「魔法生物さん、この場合、ルールは先にゴールした方の勝ちで、良いんですか?」

魔法生物『はい。ここ、インフォメーションセンターに到着し、ハヤト様に渡した方が勝利となります』


「……くそぅ」


 全力で走るものの、特別空間内では吹田と差が変らない。足が速いわけではないから現実でも難しいそうだが。


『マスター、お困りのようですね。お助けカードを使いますか?』

「お助けカード?」


 特別空間内なので全力で走っても息切れせず普通に会話ができるのは便利である。


『はい。1回だけ仕えます。甲羅を飛ばして相手を妨害したりとか』

「某カートレースみたいだな……まあ、やってみよう」

『わっかりました。ルーレットを回します。マスター、ストップ宣言してください』


 走っている目の前でルーレット画像が現れぴぴぴっと音を鳴らして回り始めたが、ルーレットに書かれている文字は


 振り出しに戻る。

 移動速度が亀並みになる。

 当たったら大変! 重りがふってくる。

 魔法生物の着ぐるみを装備。

 自分だけ時間が止まる。


「おいおいおい、マロン。不利なのばっかりでお助けになってない」

『えー、速度がチーターになるとか、相手の時間が止まる、というのもありますよ。

 あ、マスター……』


 後方から衝撃がして、俺は前のめりに倒れた。


『甲羅…みたいな物が飛んできて危ないですよと警告したかったですが、遅かったみたいですね』

「…………」


 吹田の奴が、お助けカードを使ってきたのは間違いなさそうだ。


「とは言え、これで奴の妨害はもうない。マロン、ルーレットを回してくれ」

『わっかりました。ルーレット再スタート|(妨害で止まった)です』


 ルーレットを睨みつけ、ここだと思った瞬間まで待った。


「ストップ」

『止まったのは……うまくいけばゴール前? どこに行くかは運次第、ランダム瞬間移動です。では、発動』


 体がふわりと浮いたと思った瞬間、背景が変わった。


「ここどこだ?」


 広い空間だろうか? 壁や店の棚とか商品とか視界に入らなかった。


『あらら、マスター。半分大ハズレですね』

「半分?」


 顔を動かして周囲を見回すと……俺らは改めて広い空間にいる事が判明した。

 店もNPCもいない。あるとすれば天井が手を伸ばした所にある。

 俺らは最上階の天井スレスレの所にいた。

 近くにエスカレーター設置されている何もない空間に俺らは瞬間移動していたのだ。


「…………」


 足に密着するべき床はない、後は落ちるだけである。


「うわあああっ」

『大丈夫ですよ、マスター。特別空間だから落ちても骨1本折れません』

「そう言う問題じゃあ…」


 1階に激突した。

 しかし固い床の感触はない。特別空間だからと思ったがそうではないようだ。

 そういえば、ぐにゃりとした感触があったような。


「……な、何が起こったんだ?」


 足元から声が聞こえた。

 吹田がいた。どうやら落下した時、運悪くここを走っていたんだろうな。


「悪い、吹田。瞬間移動したら、こうなった」

「謝る前にどいてくれ」


 最上階から落ちたはずなのに激痛は感じない。ついでに吹田も痛みを訴える様子はなかった。


「隼兎、受け取ってくれ」


 落下した先はインフォメーションセンター前で、隼兎が状況を把握できずにぽかんとしていた。


魔法生物『ハヤト様が受け取りましたので、借り物競走バトルはsikama様の勝利です』




「これで、オリオンのコーデは俺が見るからな」

「……っていうか、いい加減にどけよ」

「あ、悪い悪い」


 バトルが終了したのでマロンとオリオンも人間サイズに変わる。

 さて、オリオンの服装をどうしようかと視線を向けたのだが……オリオンとマロン以外に人の数が増えている事に気づいた。


「うふふふふ。恵凜姉さまに聞いちゃった。本当にオリオンと同じなんだね」


 ………………………………

 恐れていた事が目の前で起きていた。


「こ、こここ琴子さん」

「バトルしてるって聞いてね、こっそり観戦してたの」


 実況の音量下げたり、後半、それどころじゃなかったから、2人が観戦していたのには気づけなかった。


「……………………」

「ねぇねぇねぇ、理央君。もしかして、やっぱり、吹田君が運命の人?」


 目をキラキラさせて問う琴子さんに嘘はつけず、俺はうなづくことしかできなかった。




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