利用規約はちゃんと読もう 2
コスプレした美少女を連れて街に出る。
「本当に大丈夫なんだろうな」
言い忘れてたが、マロンの服装は、コスプレに近いものだった。アイドルみたいな服。
『大丈夫です。等身大のマロンはマスターにしか見えません』
『それよりも、マスター。アプリ内の会話モードにすれば、声を出さなくてもlineみたいに会話できますよ。
今のマスター、独り言を言う変な人になってます』
『それを早く言え!』
早速、苦情をスマホで書き込んだ。
周りに人がいなくて良かった。
とりあえず駅に向う。住んでいる場所は都心ではないので、ここら辺で人が集まる場所といえば、駅周辺となる。
改札口近くで足を止め、誰かと待ち合わせをするフリをしてスマホの会話機能を使い、マロンに指示を待った。
『ゲームの設定画面に進んでキャラクター項目を『外バトル機能をオン』にしてください』
会話は俺がスマホ画面で打って、マロンはテレパシーで返答している。
言われた通り設定画面をバトル機能オンに変更すると今まで横にいたコスプレ相棒が消えた。
「消えた」
『ここですよ、マスター』
マロンの声は左側の耳元でした。
顔を向けてみると、三頭身になった小さなマロンがセキセイインコかオカメインコみたいにいた。飼ったがある人しかわからないが、まあ、肩にいた。
『これが外バトル機能オン状態。マスター周りを見てください』
「あ…見える、見えた」
通り過ぎる人達の肩にいた。マロンのような小さな人型のキャラクターが。
もちろん、全ての人達ではない。ちらりほらりだが、色々な美少女たちがゲーム主とともにいる。
「これも魔法とプログラムの融合ってやつか」
『そうです。
さあ、マスター。バトル募集している人達に声をかけて初バトルするのです!』
「え、俺が声をかけるのか?」
『はい。そこは手動です。声をかけるのが嫌なら、かけられるのをひたすら待ちましょう。お、さっそく、こっちに近づいてくる人が』
マロンの言うとおり、キャラクターを肩に乗せ改札口から出てきた20代ぐらいの男が近づいているように見えた。
それを確認した俺は逃げるように改札口から移動した。
本当にバトルするために近づいてきたのか、ただ単に俺がいる方向に進むだけかはわからない。
とはいえ、もし、その人が対戦のために近づいてきたのに、俺が『逃げた』と思われないように……
『あ、いっけねぇ。マナーモード中のスマホから急に着信がきてしまったぜ』
……と、見えるよう、スマホを耳に当てて『もしもし』と、小さな声で言いながら、その人から離れた。足早に。
『マスター、逃げてどうするんですか』
「心の準備が必要なんだ」
通話しているフリをしているので、そのまま、声を出してマロンに答えた。
『初陣だから仕方ないか。マスター、あの人はどうですか?年下ですよ』
「ゲームを知らない人が見たら、女子中学生に声をかける怪しい高校生かナンパに見られるから却下」
『じゃあ、向こうにいる人は?マスター同い年ぐらいっぽいですよ』
「同い年で対戦に負けたら悲し過ぎる」
『もう!それじゃあこのいつになっても対戦できませんよ』
「………」
俺はスマホを耳から離した。
「帰ろうかな……」
別に何日以内にゲームを攻略しないといけないわけではない。
ゲームは楽しむものだ! 楽しめなければゲームじゃない!!
という言い訳が頭の中で浮び、その意見に賛同する事にした。
足取り軽やかに帰路に就くため振り返る。
「あの、ゲームしている人ですか?」
振り返った先に人がいた。しかも声をかけられてしまった。
逃げることもできず『はい』と答えてから、その人を見た。
同い年ぐらい、と言うことは女子高生だ。黒髪さらさらの清楚で可愛い子だ。女子高に通ってそうなイメージ。
相棒の方は中性的な銀髪で赤い目の美少年。女子が好きそうなキャラクター。どうやら相棒には男もいるらしい。
「あの、良かったら対戦してもらっていいですか?あたし、今日が初めてで」
「あ、俺もです。もちろんです。対戦、やりましょう」
「良かった」
女子に話しかけるなんて、さらに笑ってくれるなんて!
hmw始めて良かった。ありがとうマロン。と、心の中で感謝してから、スマホの会話モードでマロンに対戦の仕方を聞いた。
向こうもスマホ画面を見ているので、同じく相棒に聞いているようだ。