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ろば耳  作者: 楠木あいら
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仲間たちのバトル2

『マスター知ってます? フレンド登録した人同士のバトルなら観戦できるんですよ』


 マロンの一言で隼兎と琴子さんにフレンド登録をした。

 これで俺も観戦が可能なのだが……ただ、見ているのもなんだな。


『実況でもしますか、マスター』


 俺の考えている事が読めたのか、マロンは頭の中で面白そうなこと提案してきた。


 なので隼兎と琴子さんのバトルを実況マロン、解説者は俺でお送りします。

 チャット機能を使ってマロンと会話しているだけなのだが。まあ、2人のバトルを邪魔しないから支障はないだろう。


実況 マロン:『さて、ろば耳杯 路地裏バトルが始まるわけですが、マスターいかがですか?』

解説 理央:『2人とも屈強のろば耳ファイターですからね、かなり白熱した展開になりそうです』

実況 マロン:『さて、バトル申請が出来たようです。

 両者の相棒が肩からダイブしました。

 琴子プレイヤーのムグラは、銀髪で赤い目の美少年。武器は黒い柄の刀です』

解説 理央:『前回のバトルも同じ形と言うことは。愛用の武器なんでしょう。

 以前、琴子プレイヤーからムグラは『不夜城の宴』というコミックに出てくる登場人物『葎 (むぐら) 』で、本人もびっくりするほど似ているそうです。

 武器も固定化するほど『葎』愛が出ています』

実況 マロン:『一方、隼兎プレイヤーのシャルムは、淡い水色に青のドット柄のワンピース。ゆるふわのダークグレーの髪に黒色の目。白色のうさ耳にうさ尻尾ですが……手にしている武器は、フォークでしょうか? 1メートルほど巨大化していますが間違いなくフォークです』

解説 理央:『早くも隼兎プレイヤーの顔が青ざめていますね。フライパンに薄切りレモンにホォーク。どれもシャルムの武器履歴は温かみのある武器ですが、隼兎プレイヤーにとって初女子バトル時にホォークは不安が隠せないでしょう』

実況 マロン:『さあ、バトルスタートです。

 おおっと両者とも後方に跳んでから一気につめよる。このパターンは間違いなく大技モード!』


『バルバニアファミリー草原のパン屋さん』

『美少年花魁の最新巻』


実況 マロン:『いったぁ!両者とも光を放った一撃。ムグラが振り下ろす青黒い一撃をシャルムのオレンジ色の一撃で受け止めた!

 両者が放つ光の衝撃波がフィールド近くにあった自販機横のゴミ箱をぶっ飛ばし自転車が横倒しになっています。カランカランとゴミ箱中にあった空き缶が音を立てて地面に転がっていますが、両者とも気にすることなく。後方に跳んで距離を放しました』

解説 理央:『いやぁ、迫力がありますね。自分でバトルをしているとなかなかじっくり見られないだけに、こんなに凄かったんですね。

 それはそうと、今の一撃。両プレイヤーには衝撃の技名でしたね』

実況 マロン:『と、いいますと?』

解説 理央:『隼兎プレイヤーの技名はバルバニアファミリーの商品名そのまま。琴子プレイヤーの方も、最新巻で明らかに文庫やコミック名。初めて聞いた俺でも花魁の美少年版では? と想像できてしまいます』

実況 マロン:『両プレイヤーの表情、青色を通り越して白くなってます』

解説 理央:『今の技名で明らかにバレたと察したのでしょう』

実況 マロン:『両プレイヤーは意気消沈してますが、相棒たちのバトルは続いています』


『DKA50新メンバー』

『ペルフェットの開店日』


実況 マロン:『今度は斬って斬って、斬り合っています。ものすごいスピードです』

解説 理央:『ただ、気になるのは、技の名前がどちらもテレビで聞いたことがあるアイドルグループやドーナッツ屋です。まるでプレイヤーの心境を読みとったかのような、普通の高校生が利用する言葉になってます』

実況 マロン:『そう言えば、斬り合いの速度が少し遅くなっているような』

解説 理央:『ここから、どう立て直すかが、勝敗の鍵になるでしょう』

実況 マロン:『ん? 隼兎プレイヤー、握り拳を胸に当てました。』

解説 理央:『軽くうなづきましたね。心の中で何か考えて、答えが出たんでしょう。血色が良くなってます』

実況 マロン:『そして琴子プレイヤーも目を大きく開き、こちらも軽くうなづいた』

解説 理央:『とうとう開き直ったようです』

実況 マロン:『両プレイヤーが元気になったところで、相棒たちも新たなる攻撃に切り替えたようです。

 ん? おおっ、シャルムがジャンプして自販機、一軒家の一階屋根に飛び移り、それから電柱、さらに雑居ビルの3階、4階、5階。そのまま屋上まで駆け上がってさらにハイジャンプ』

解説 理央:『とてつもない大きな攻撃です』

実況 マロン:『そして迎え撃つムグラは、こっちも凄い。気を貯めてます。ムグラから赤いオーラが放たれています。

 いったぁー!!5階上からの大攻撃! シャルムからも緑色のオーラが放たれ迎え撃つつもりです』



『バルバニアファミリー草原の妖精さん』

『天上の主グランテ』


実況 マロン:『赤と緑色の光がぶつかったぁ!!』

解説 理央:『凄まじい威力です。これが現実なら簡単に吹き飛ばされてたでしょう。

 そして、堂々とした技名。2人ともお見事です』

実況 マロン:『両プレイヤーの表情も晴れ晴れとしています』

解説 理央:『間違いなく吹っ切れましたね』

実況 マロン:『吹っ切れたところで、ムグラとシャルムは……ん?ムグラが同じ場所に立ってます。荒い息をしているようですが同じ場所にいます』

解説 理央:『シャルムがいない……どこに? あ、電線だ』

実況 マロン:『電線にシャルムがいました。電線上に寝転がっています。まるで日干しするクッションのようです』

解説 理央:『シャルムの目がグルグルモードになっている。ムグラに吹き飛ばされたか?』

実況 マロン:『と言うことは、勝者ムグラ!!

 このバトルは琴子プレイヤーの勝利です』

解説 理央:『いやぁ、相棒たちの熱い戦いとプレイヤーの葛藤。実に手に汗を握る一戦でした』

実況 マロン:『実況は私、マロン。解説はマスターでお送りしました。それでは皆様、また来週』


 来週もやるつもりか?



 ムグラとシャルムが二頭身化して肩に戻った。


「抑野さん、強いなぁ」

「瀬斗谷さんこそ。楽しかったです」


 2人とも良い感じになっていた。というか、俺は置き去りにされ、少し寂しかったが。



 時間を見た琴子さんは慌てて学校に向かって行った。やっぱり真面目な人のようだ。

 電車はまだ動く気配はなく、とは言え、やることがないから駅までゆっくりと戻ることにした。


「そう言えば、隼兎。バトルの途中で握り拳を胸に当ててから、うなづいてたよな。どうしたんだ?」


 あの時の状況が知りたくなった俺は素直に聞いた。


「ああ、あれか?最初の技名がモロバレでショックだったんだけれども、途中で気づいたんだ。

 俺はバルバニアファミリーが好きだ。好きで何が悪い。笑いたければ笑うがいい。笑って笑って笑われ続けて、お笑いグランプリの王者になってやる! そして、このバルバニアファミリー愛を全ての人間に見せつけてやる!! とな」

「お笑いグランプリの王者……」

「もちろん、隠せるものは隠し続ける。飾磨、バラすなよ」

「そっちこそ」


 お互い笑いながら約束を再確認した。

 しかし、思いっきり開きなおったな。壊れる一歩前というべきか……

 というより、琴子さんも同じ考えなのだろうか……怖くて聞けない。




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