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ろば耳  作者: 楠木あいら
1/48

利用規約はちゃんと読もう 1

 ゲームをダウンロードしたら、変なものが見えるようになった。


「………」


 俺は目の前に現れた『それ』を呆然と見つめつつ、ちょっと前まで暇を持て余していた自分を呪った。


 予定のない暇な日曜日。昼飯を食い終わってから、やることがない俺はスマホをいじっていた。


「そう言えば…」


 前から気になっていたゲームを思い出し、ダウンロードサイトを開いて『hmw』と文字を打って検索した。


 hmw

 正確には『Hand mirror warrior(ハンド ミラー ウォーリアー)』という名前のゲームで美少女を育てて戦うゲームなのらしい。

 美少女育成ゲームなら良くあるのだが、気になっているのは


 評価が4.8


 4.5を超えるアプリは滅多にないというのに4.8はありえない数値。ダウンロード数は1000万


 評価が高いのならば、なぜもっと早くダウンロードしないと思うだろう。

 俺がダウンロードをしぶってたのはコメントにあった。


 外プレイwwww

 恥ずかしいを越えたら、他のゲームはできない!

 俺だけの、マイキャラ。もはや嫁


 などなど

 他のアプリコメントなら『重い』だの『さくさく進める』とか『課金』やら『アップデート後がどうのこうの』とかなのに。

 外アプリには見られないものばかり。


「外プレイって……恥ずかしいって……」


 そこら辺が気になって、ダウンロードに手を伸ばさなかったのだが、今日はあまりにも暇過ぎてとうとうダウンロードする事にした。


 剣を持った美少女のアイコンをタップして、最初に現れたウィンドウに『キャラクターの名前を入力してください』とウィンドウが出たので、俺は好きなブランド『サラ・マロン』から『マロン』と入力する。

 普通のスマホゲームなら、キャラクターの外見作成かゲーム世界の説明になるのだが『hmw』は違った。


 目の前に美少女が現れたのだ。


『初めましてマスター。マロンです』

「……」


 もう一度言おう。俺は、退屈で暇すぎた自分を呪った。

 予定があればゲームをダウンロードすることもなければ、変なことが起きず、ちょっと変わった趣味を持つただの高校生ですんだのだ。


『マスター……やっぱり驚く?』

「当然…って、あれ?」


 俺は違和感に気づいた。

 マロンと名乗る美少女の声は耳からではなく、頭の中から響いている。

 テレパシーという能力が使えたら、こんな風に聞こえるんだろうな。と思える感じに。


「って、は?え?ダウンロードしただけで、なんでテレパシーができるんだ」

『テレパシーと言っても、マロンがマスターだけに送るだけですよ』


 またもや、頭の中に声がした。


「いやいやいや、おかしいって、何でゲームをダウンロードしただけで、目の前に現れて、テレパシー能力が持てるんだ?」

『それがhmw、Hand mirror warriorというゲームなのです』

「…………」


 どや顔をする美少女を見て、俺はもう一度、退屈だった自分を呪った。




 スマホから美少女が出てきた現実に、少し落ち着いてから、マロンを観察してみる。

 マロンというだけあって茶色の髪だった。正確には栗の固い皮みたいな色。長さは肩に触れるぐらいの短めで左側にだけ星が三つついたヘアピンをしている。

 それから、正月のおせち料理に出てくる栗きんとん色の目。マロンという名前だけあるカラーだ。整った口は釣り合った所に配置されて正直、可愛い。

 いかん、この顔ではアンインストールできないほど、俺の好みに近い。


『hmwはスマホに書き込まれた全ての文字、クリックしたページのデーターからキャラクターを作り出してますからね。自然と自分好みの顔立ちになるみたいですよ』


 俺の視線に気づいてか (まさか、心の中まで読み取れるわけではないだろうな……) マロンはにこっと笑って説明した。


「え、それって俺のプライバシーは?」

『ダウンロードする前に利用規約を同意したじゃないですか』

「………」


 そう言えば、アプリをダウンロードする時、色々と項目が出てた……多かったような気がするが、あまり……ほとんど読まなかった。


『利用規約の中に。


 スマホの中にある、ありとあらゆるデーターを使うよん


 って書いてありました。

 マスターはその全てを同意したのです!』

「…」


 利用規約、恐い!

 これを読んでいる人達に言いたい。同意規約はしっかりとチェックしよう!


 ……と、忠告している場合じゃない。


「それで、マロン……」


 俺は真っ先に思いついた不安を口にした。


「まさかとは思うけど、異世界に召還されて戦うって事はないだろうな」

『ないない。大丈夫大丈夫。

 異世界から亡命してきた魔法使いが、開発した ただのゲームだから』

「いや、その時点でありえないって。異世界は存在して、ITと魔法を融合できて、キャラクターがスマホから出てくるなんて」

「マスター、考え過ぎは良くないです。

 これは、ただのゲーム。マロンのHPが0になったら、持ち主のHPも0になるとかなんてないから」

「……本当だろうな。

 それで俺は、どうすればいいんだ?」

「もちろん、ただのスマホゲームなんですから。プレイするだけですよ。

 スマホ内バトルは、マロンが勝手に戦うだけです。アプリを開けば勝敗がでます」

「スマホ内バトル?って事はスマホ外もあるのか?」


 そういえば、アプリの評価に『外プレイ』ってあった。


『もちろん、です』

「どうやればできるんだ?」


 俺の問いにマロンはにっこりと笑った。


『じゃあ、外に行きましょう』


 俺はマロンに従う事にした。だって暇だから。


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