待ちつつ
受け付けカウンターに置かれた機械から番号札が吐き出された。
それを引き出し、待合室へと向かいながら番号を確認する。
『三十五』という番号とだいたいの待ち時間が書かれている。
実際はここに書かれているよりももうすこし待たされるだろう。
待合室には小豆色をした長イスが四脚。それが三列で十二脚ほど並べられいる。
番号を呼ばれるのを待つ人間が数人ほど座っていた。
ダレも座っていない一番前の一番手前の一番端にボクは座った。
番号を呼ばれたらトビラの向こうへいく、そのトビラに一番近い席だ。
トビラから、原色だらけのカラフルな水玉模様がたくさん描かれているダボダボのツナギを着た道化師が出てきた。
虹色のアフロと丸いつけ鼻、目とクチの周りだけが白色で大きく縁取るように塗られている。
コミカルなしぐさで待合室に座る人間全員に愛嬌を振りまきはじめた。
だれひとりとして笑わなかったが、道化師は気にもとめなかった。
楽しげな歩きかたをしながら長イスの周りを一周して、そのまま建物の出口へと向かった。
ボクのふたつ前の番号が呼ばれた。
左後ろの長イスに座っていたヒトが立ち上がった。
黄色い帽子をかぶった小学生だ。
背負っているこげ茶色のランドセルからは、節足動物の足らしきものがはみ出してカサカサと動いている。
小学生はトビラを開き、そこからランドセルを思い切り投げ込んだ。
トビラを閉めて帽子を深くかぶりなおし元の席へと戻っていく。
さっぱりした、という顔つきをしていた。
しばらくしてトビラが開き、
「いらっしゃいませー」
言いながら大学生ふうの男が出てきた。
全員の視線が男へ集まる。
自分へ向けられる多くの視線に気がつき、自分の無意識の行動にも気がついたようだ。
視線を手でさえぎるように赤らめた顔を隠す。
か細い声で言い訳をつぶやきつつ早足に外へと逃げていった。
まもなく、ボクのひとつ前の番号が呼ばれる。
後ろに座っていた若い女性が立ち上がる。
髪が燃えるように赤く、肌も白く、顔立ちが日本人離れしている。
外国人のファッションモデルか何かだと言われれば疑うことなく信じるだろう。
歩き方もモデルのような優雅なウォーキングだった。
女性は、トビラの手前で右足のつまさきで左足のかかとを蹴ってしまい倒れそのまま動かなくなった。
しばらくして、ボクの次の番号が呼ばれる。
ふたつとなりの席の男が立ち上がり、倒れている女性を踏みながらトビラのなかへとはいっていく。
夕方を過ぎて待合室からダレもいなくなるまで待っていたが、最後までボクの番号が呼ばれることはなかった。
次の日、またボクはここへ来て番号札を受け取り、呼ばれるのを待っている。




