白馬の王子
「あなたたち、そろそろお茶にしましょ」
ふくよかなおっとりしたおばさん、高万家の女主、福美が落ち葉と格闘して、うんざり気味の私たちに声をかけてきた。
ガーデン用の白いテーブルにとっても高そうなソーサー付きのティーカップに紅茶を入れ、なぜか、大きな大福と一緒に桃世と私にもてなしてくれた。
大福を手に取って、ぼんやりしていたら、大福が福美さんとかぶった。色白でふっくらして、このおばさんみたいだ・・・
一気に食べたら、喉につまらせそうになって、むせていたら、痩せて神経質そうな、もう一人の主、高万力が休憩をしている私たちのところにやってきた。
「一息ついたら、今度は動物の世話を頼むね」
「動物の世話って、犬の散歩とかですか?大型犬?」
落ち葉拾いで心底疲れた桃世が心配そうに言った。
「犬もいるけどね、犬は今朝私が連れて行ったからね。大型犬より大きいな」
お茶したところから少し離れた動物小屋に連れていかれた。
「おおお」
「馬だ!白馬だ!」
「ブキミ、テンション上がりすぎ・・・」と桃世。
「だって、白馬だよ、私が描きたい漫画って、白馬が欠かせないんだよ」と私。
「何を言ってるんだい?王子に餌をやって、馬小屋の掃除をしてておくれよ」
年が70代くらいだろうから仕方ないだろうが、きれいに禿げ上がった白馬の持ち主、高万力が言った。
「王子って?この馬の名前ですか?」
「ああ、この子は雌なんだけどね、白馬だから、孫がつけたんだよ。『白馬の王子』と呼んでいたね」
目を輝かせて「白馬の王子」を見つめる私に、桃世はドン引きしながら、二人で馬小屋の掃除をした。
「明日も来てくれるんだったよね」高万力が聞いてきた。
「はい、三日間なんで、明後日まで」と桃世が答えた。
「じゃあ、明日は週末のお祭りの準備を手伝ってもらうか」