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9話

お風呂に何故いたかという理由。

 ジェイドは真剣な眼差しでこちらの反応を伺っているようだったけど、とりあえず混乱した頭ながらに思ったことを聞いてみた。


「契約は妖精ですか?」


 よくわからないことを聞いてしまった。聞かれたジェイドも何いってんだコイツと言いたげな顔をしている。

 聞きたいことがありすぎて、こんがらがってしまった。まずはひとつずつ質問しよう。


「私って妖精なんですか?」

「ああ」


 簡潔に返されてしまった。

 彼らにとって、私が妖精だという事は当然のことのようだ。


「どうして私が妖精だと言い切れるんでしょうか?」

「そうだな……」


 ジェイドが私をまじまじと見る。

 イケメン耐性のない私はあんまり見られるといたたまれない。見るほうはバッチリなんだけども。


「まずその髪だ。青い髪は珍しくはないが、そのような不思議な色合い、変化は人間ではありえない。昨夜見た時とは青の度合いが違うように思える――……。瞳もそうだ。見たことのない色だな。先にも言ったが、古語を話せたことも理由としてはある。後は、容姿と―――他にもいくつかあるが」


 他にも細かにあれこれと”人間ではない部分”を挙げていくジェイド。

 髪の色が違って見えたのは、多分光の加減だと予想はついた。他も、そう言われればそうなんだと言う気もする。


 ふぅ、と溜息をつく。


 自分が人間じゃなかっただなんて……。まぁ、普通こんな不思議な髪の毛の人間はいないよね、うん。 

 理解はできるし、どこか納得してしまったはいるが、なんとなく釈然としないというか。


 ここで目覚めた当初からそうだ。なるようになると、不思議と事態をそう重くみてないかった。

 元の場所に戻れないことをぼんやりとながら感じていながらも、まぁいいかと受け入れてしまっていた。


 風呂場でのうたた寝(?)がとんでもないことになってしまったなぁと。


 今の私自身も、どこかでこれでいいのだと感じている部分があって、けれどそう感じる所が一番もやっとするというか……。



 人間やめちゃいましたー。てへ。


 ……

 …………


 ……悩んでも仕方ないし。生まれ変わった(?)のが美少女であることに素直に感謝するとしよう。

 

 そこ。中身が残念とか言わないように!


「それと」


 そう長い間でもなかっただろうけど、私が悶々と考えている間にもジェイドは話をしていたようで。


 ごめん、聞いてなかった。


「君が特殊だというのは、君が生まれたであろう場所が特別だからだ」

「……さっき言っていた精霊の泉ですか?」


 そう尋ねると、ここまでずっと黙って成り行きを見守っていたシドが答えてくれた。


「正確には精霊の泉のもととなっているとされる場所ですね」


 そう付け加え、


「普通は生まれたばかりの妖精というものは、存在が安定するまではその場から動かないのです。ですが、あなたはどうしてあの場にいたのかという記憶が無いものの、泉との繋がりのあるディオール領の浴室に現れた」

「泉とお風呂が関係あるんですか?」


 ええ、と頷きながらシドが取り出したのは大きな絵……と、よくみたらどうやら地図のようだ。

 シドは指で二箇所を押さえながら、


「ここが精霊の泉です。そしてここが、今我々がいるディオール領。その屋敷ですね」

「屋敷の――裏手?の森の中、ですか?」


 どうやらこの周辺の簡易な絵を書いた地図のようで、今いる屋敷と精霊の泉は大きな森に阻まれているものの結構近いように思う。


「はい。水か湯かという違いはあるものの―――……泉の水と、ここで使用されている湯は源泉が同じだと言われていました。今回の事が起こるまでは確証はなくあくまでも推測だけでしたが」

「つまり……?」

「精霊の泉の元、大いなる命の場にて生まれた後、泉ではなく何かの拍子でこちらのほうに流れてきてしまったのだと予想できます」


 なんと、ここのお風呂は源泉かけ流しな温泉らしい。ビバ温泉!

 どこからか源泉を引いているのなら、こりゃここだけじゃなくてどこかに天然温泉があるハズ!森の中の露天風呂とかいいなぁ~。


「精霊の泉の妖精という存在はここ数百年確認されておりませんが、生まれないわけではありません。ただ、あまりにもその場の魔素が濃すぎるので、生まれたばかりの妖精にとっては良い環境とは言いがたいのです」

「生まれても、その場の大量の魔素を取り込んでしまい存在を保てなくなる。存在を保てない妖精は逆に魔素に取り込まれてしまう」

「生まれたばかりの妖精にとって、濃すぎる魔素というのは毒でしかありません。尤も、存在が確かなはずの“名持ち妖精“にとっても精霊の泉というのは居心地が良い場所ではないらしいですが……」


 ふむふむ、と二人の話を大人しく聞いておりますと。

 マソというのが何かはわからないけれど、なんとなく意味はつかめた。


 つまりは、シドさんの話を要約するとこうだ。


 本来は精霊の泉とかいう特別?な場所で生まれるはずだったけど、なにを間違えちゃったか、人様のお風呂でおんぎゃーと生まれちゃったらしい。いや赤ん坊ではなかったようだけど、そういうことらしい。

 泉のほうで生まれてたら、今頃はマソになっちゃってたんだと。


 ……あれかな。

 イケメンの気配に釣られたか。あの美しい腹筋を見るために泉ではなく温泉で生まれちゃったのか。


 ありえそうで困る。

 本能って怖いわッ!イケメンに対する欲求が自分の死亡フラグ回避に役立つとは!


 とりあえず、あの時にジェイドがお風呂に入って無ければ私は今こうしていなかった。

 あの時の記憶はすべては綺麗に自分の中でフォルダ分けして丁重に保存したあと、ちゃんと額に入れて飾って置くよ!!

 ……イメージの話デスヨ?


 ジェイドの腹筋、まじ神様。なむなむ。


 私に心の中でその腹筋を拝められてることも知らないであろうに、目の前に座っていたジェイドが少し眉を潜めた後、ぶるっと身震いした。本人は「何故か分からないが、一瞬悪寒が……」とか呟いていた。やだなぁ、そんなに怯えなくとも取って喰いやしませんて♪


 うふふ、とついついジェイドの様子に顔がにやけそうになるけど我慢我慢。


 自分の生まれたであろう経緯そっちのけで目の前のイケメンを凝視する私は、確かにちょっと特殊かもしれない。

きっと本能レベルでイケメンセンサー働いてますね、コレ。

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