7話
ちびっこ追加ですん。
コンコン
ためらいがちな物音とともに、もともとぼんやりと覚醒しかけていた意識が浮上してくる。
(んー?朝ー……?)
カーテン越しではあるけど、窓から差し込む日差しが眩しい。
ふわぁぁ、と大きく伸びをしながら体を起こす。
自慢ではないけど朝は得意なのです。
ぼんやりとしていた頭も次第にはっきりとしてきて、しっかり眠れていたのか体調もばっちり。
コンコン
と、また物音が。どうやらノックの音で目が覚めたみたい。
朝も早くから二人が来てくれたのかな?
おはようからおやすみまでばっちりと!あなたと共にイケメンが!!
ゴメン自分で言っておいてなんだけどわけわかんない!寝ぼけてるのかな……。
「どうぞー」
本来なら寝起きのすっぴんを見られるだなんて!という乙女としては回避すべき所だろうけど今の私は5歳だ!
隠さなければならないような肌でもない!ホント若いっていいわぁ。
とりあえず身だしなみを簡単に整えて、身を起こしただけの状態で入室を促した。
カチャっとドアが開くと、なんと、ワゴンが一人でに部屋の中に!!?
……いやいや、よく見たらワゴンの影になって誰かがいるみたい……。
その人物は小柄なのか、ワゴンから頭だけがピョコッとはみ出ていた。
その子は私の視線を気にする様子もなく、部屋にあったテーブルの上に、ワゴンに載せてきたであろうものを用意していく。
うはぁ。甘い香りがするぅ~。
別段気にしていなかったのに、こうもいい香りがしているとおなかの虫が主張を始めたようだ。
見たところ、パンケーキかな?いい匂い……。
匂いにつられていつの間にかふらふらとテーブルに近づいていたようで。
既にひと通り用意を終えたらしく、小さな人物はこちらを見てペコっと頭を下げた。
そのまま彼女は何も言わず部屋を出て行ってしまった。
「食べて……いいのかな?」
悩んだのも束の間。
お腹の虫を黙らせるべく、蜂蜜たっぷりのパンケーキにナイフを差し込むのだった。
ふは~。食べた食べた。
想像通り……いや想像以上に甘くて甘くてでろっでろに甘い感じのパンケーキでした!
蜂蜜がパンケーキにかかってるのはわかるんだけど。生地も甘かった。ホイップクリームみたいな白い泡もかなり甘かった!おまけにりんごのようなものを煮込んだものも、とっても甘かったです……ッ!!
甘さの相乗効果でも狙ってます?というくらい甘さたっぷりでした。
私が思い描いていたパンケーキはここまで甘くなかった気がするのですが。
美味しいかといわれると、甘かったとしか言いようがないな!
あ。もちろん完食したけどね。
おかしいなぁ。私はそんなに甘いモノが好きでもなかったように感じるのだけど。
なんだか、すごく甘さを感じると「コレだっ!!」て感じに夢中になって食べていた。……実は甘いもの好きだったのかしら。
食後にと用意されていたのだろう、紅茶をこくこくと飲みながら考えた。ちなみにミルク入りで、お砂糖は5個入れた。
……うん、甘い。
だけど嫌いじゃない。というかなんだか幸せな感じがする。
ブラックコーヒーが好きだった気がするのに、いつの間にか勝手にミルクやら砂糖やらを投入していた。
自分がこうであった、という思いと自分の感覚が一致していない。
まぁ、明らかに顔から体から色々違うからもう今さらですよねー。うん、甘いもの美味しいしいいやー。
紅茶も飲み終わって幸せな気分になっていたら。
さっきの女の子がノックの後に再びワゴンを押して入って来て、またぺこりと頭を下げた後手際よく食器などを下げていく。
椅子に座りながらその作業をじっと観察してみた。
さっきは食べ物に気を取られてこの子をよく見られなかったんだけど。
ちょっと、言っていいですか?
か、可愛ぇぇ~!!
肩口まで伸びた栗色のクルクルとした髪をふたつに束ねて赤いリボンで結んでいる。
くりくりしたつぶらな瞳と、赤いふっくらしたほっぺた。小さな口元。
ちょこちょこと活発的に動きまわって働く姿はある動物を連想させた。
(リスみたい……かっわいー!!!)
ひまわりの種でももたせて「へけっ」としてみて欲しい。あれ、それはハムスターだったかな?
見た目は私と同じ年(外見年齢です!)よりちょっと上くらいだけど、行動に迷いがなくてきぱきと仕事をこなしていく。
しかし、私があまりにもガン見していたせいなのか、時折びくっとこちらを向いてくる。
いけないいけない。
あまりにも本能のままに見つめてしまっていた気がする。
心を落ち着かせよう。
先人たちの偉大な言葉もある!
YesロリータNoタッチ!!
見るだけ……見るだけなのよ。うふふ。
自分も見た目ロリなのはこの際気にしない。
というか、記憶抜けてるくせになんでこういう記憶なのかよくわからんものが浮かんでくるのでしょうか!果たして此処で通じるのでしょうかね?
そうして視線を外さずに思考を凝らしていると、リスちゃん(名前不明なためそう呼ぶことにする)が先ほどよりも勢い良くペコっと頭をさげて心なしかあたふたしたようにワゴンを押して出て行ってしまった。
どんどん残念な子になっていく気がします!
外見とかもはや関係ない。