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6話

 その後少し話した後、疲れているだろうからと私を気遣って、二人は部屋から出て行ってしまった。


 華やかさがなくなったせいか、部屋がなんだか寂しく思える。

 確かに、美形に対して(?)興奮したせいかなんだか眠たくなってきたような。


 ここは大人しく寝ておくことにしよ。


 そうして私はベッドによじ登って横になると、すぐにすとんと意識が落ちてしまった――。






 ----------




 一方その頃。



「珍しいですねぇ……まさか貴方が自から祝福を使うとは」

「……」


 少女の部屋を出た後、そのまま自室へと向かう道すがらシドは面白そうに隣で憮然としている友人へと話しかけた。

 というのも、この友人は自分から滅多なことでは祝福を使用したりしない。一応は祝福で会話できるであろう可能性を考慮し、提案してはいたが。

 彼自身が乗り気で無かったことからも、彼の意を汲み当分は自分が通訳として意思の疎通を図るつもりであった。


 そもそも祝福というのは、そう頻繁に行えるものでもない。

 相手によっても相性というものがあり、より効果を発揮するのは自信が好感を持っている相手だ。

 祝福の恩恵はとても大きいが、その代償として一時的ではあるが己の力が削がれるのである。効果が大きければ大きいほど、その代償として求められるものも大きい。

 本人の資質がその代償にも影響するとはいえ、そう易く使用できるような便利なものでもない。


 過去に恋人の大怪我を治療するために祝福を行った娘が、その反動でむしろ生死の縁をさまよったという話もあるほどである。


「別に……言葉が通じないのでは、不便ではないかと思っただけだ」

「へぇ……?」


(……嘘ばっかり)


 この男はそこまで優しくはないことシドは知っていた。

 そして何よりジェイドは祝福という力を心良くは思っていない。むしろ、憎んでいる節さえある。


 ……表には出さないが。

 

 祝福を行える人間というのは実はそう多くはない。

 その為希少価値も相まって、祝福を行える人間というだけで色々な厄介事が降り掛かってくる。


 祝福を行えるものは一般的に祝司と呼ばれる。有名なところでは国でのお抱えとなり、その名を轟かせているものもいたりはするが。大抵はその力を求められ強引に従わされる者が多いだろう。

 また、忌むべき事に祝司狩りと呼ばれる非道な行為も行われているという。そうして狩られた祝司は、奴隷として落とされ闇で取引されると聞く。

 貴族の間でも祝司の獲得に必死だという話もちらほらと。


(僕からしたら、相手を想って行う祝福によって起こされる悲劇を思うと、呪いのようにも思えるけどね……)


 祝福という力を持ったがために、むしろ力を煩わしく思い隠して生活している人も多いという。


 それも当然だと思う。

 

 そしてジェイドも祝司であることを隠している一人だ。表向きでは祝福が行えることを公言してはいない。

 彼が信頼した一部の者にだけしか打ち明けていない、彼の秘密である。


 だから、彼女の話を聞いた時に、祝福の恩恵で言語への理解を受けられないかな?と聞いた時には、するはずがないという確信の元の冗談のつもりだったんだけどね。


 祝司としての力と、彼自身の生い立ちは深く関係しているために、他人にはそう簡単に打ち明けたり使用するはずは無いと思っていたのだけれど……。

 実際に今までは本当に必要に迫られるまでは、自分から行使するようなことはしなかった。


 それが何を思ったか。自分から祝福を使用すると言い出した。

 ジェイドは一体、あの小さな彼女が可愛らしくお辞儀した姿に何を感じたのだろう?


「彼女、可愛かったですねぇ。気に入りました?」

「相手は子供だろう。そんなんじゃない」


 むすっと不機嫌そうに言い返すジェイド。

 おやおや、眉間に皺が寄ってますよ?


「明日は、あの少女にお菓子でも手土産に持って行きましょうか」

「そうだな」


 多少柔らかくなった友人の表情に、こっそりと笑いが禁じ得ないシドであった。

一・二日に一話更新くらいで頑張りたいなー。

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