2話
主人公覚醒中。(主に変態的な意味でかも知れない)
なんだ、夢か。
柔らかいベッドの感触を感じながらぼんやりとそう思った。
お風呂に入ってたらイケメンがいてのぼせて溺れる夢だなんて。
あぁ、夢にしてもとても美味しゅうございました。うふふ……。
………て、事にしたいんだけれども。
おめめはもうパッチリです。体はなんかすごくだるいけど、目はしっかり冴えてます……。
うん。その……。
夢に、しておいてほしかった……。
首を軽く動かして辺りを確認。
なんだかすごく目がチカチカします。綺麗な布がベッド周りに幾重にもたらされているし、ベッドの感触は自分が使っていたものよりも断然柔らかくて弾力があって寝心地バツグンで。
きんきらした飾りとか、落としたら一生弁償できなさそうな絵画だとか壺だとかがあるし。
シンプルだけどどこか上品。そんなお部屋ですね。
それはいいんだけどね?
あのぅ。どこですか、ココ。
とりあえず、起きよう。起きて今度こそちゃんと状況を把握するのだ。
色々とよくわからない事だらけで気が遠くなりそうな感じになりながらも、そう考えをまとめて体を起こそうとして。
よっこらしょっとな。おばさん臭いとか言わないよーに。
そして、身を起こして気付くことがありました。
視線が、低い??なんかベッドとの距離がすごく近いです、よ?
………。
なんか、とても嫌な感じが。
自分の考えを振り払うように頭を振って。一度ベッドから降りようと軽い心づもりでひょいと足を差し出し床に足をつけようとして――。
どべしゃ
痛い……顔面から落ちました。
なにこのベッド!えらく不親切設計なんですけど!!普通こんなにベッドの足を高くしたりしないでしょう!?
うぅ、鼻血でそう……。
何も悪くはないベッドを鼻をつまみながらキッと睨みつけて両足で立ち上がって――――。
ベッドの脇にある鏡を正面から、見まして。
『なんじゃこりゃぁぁぁぁああああ!!!?』
そこに写っていたのは、私とは似ても似つかぬ姿をした子供が驚愕の表情を浮かべて絶叫している姿。
『なに、なんで??どうして子供がちっちゃくて白くてふわふわきらきらで誰これ?!!』
パニクってます。主語とか述語とか意味とかそんなものありませんね。見たまんまですから!子供が小さいのは当たり前だけれど、それが私の姿だとすれば絶叫したくもなりますともさ!
私はもう立派に成人しているし、なによりも、こんなに!こんなにっ!!
『胸が……ない……』
自分の両方の手でぺたぺたと。
ぺたぺた……ぺったん……つるぺたわっしょい……。
別にこれ、わざとじゃないんですよ?気分を盛り上げないと、ちょっと辛いと言うか。
いえ、効果の程は聞かないで下さい……反省してます。
何処とは申しませんが、絶壁ですまな板です絶望的…。流石にマイナスとまではいかないけど更地ですねー……。
がっくり。
そこまで胸にこだわりがあるわけではないけれど、でもあるかないかどっちが良いかと言われれば、もちろんあるほうがいいに決まってます。女の子だもん!
と、そこまで思ってある予感に背筋が冷たくなって、そろそろと思わず足の付根に片手を持ってゆき――――……。
『……無い……』
ほっと息をつく。
最悪つるぺたであろうことは受け入れたとしても、本来自分の性別的に持ってなかったモノがあった場合はさすがに立ち直れなかったかもしれない。よかったよホント女の子で。
安心したところで恐る恐るだけど、鏡の前の自分を改めて見直す。
パッチリとした目とそれを覆う長いまつげ。瞳の色は……紫?色素が薄いけど、赤っぽい紫色に見える。
その目鼻立ちは幼いながらに通っていて、どこの物語から出てきたお姫様?というふうな美少女である。モデルでもこんなに可愛い子はそうそう居なかった。というか、雰囲気がなんかもう……。
全面的に、可愛い!!て感じ。
すごく自分の表現力のなさが悔やまれるけど、小動物的可愛さもあって、こんな子が目の前にいたら「ウフフ、オネーサンがお持ち帰りしちゃうゾ☆」と言えちゃうくらいには好物で……いけない話が脱線してしまった。
そんな美少女が自分の胸と足の付け根に手をやっている姿はとてもじゃないがいただけない。
体勢を直立不動に変えてみた。格好はアレだけど可愛い。
手を口元に添えてそっと首を傾げてみた。あざと可愛い!
ちらりと上目遣いで鏡を見つめ……。ああ、ダメ理性が飛んじゃう……ッ!!
ハッ。なにやってるんだ。落ち着け私!!
鏡に映った自分を見ながらニタニタもじもじしている様子は端から見たら、怪しいことこの上ない!!!でも可愛いんだ!!!可愛い物を愛でて何が悪いッ!!!
………。
す~は~。
ふう。よし落ち着いた。もうちょっと鏡で美少女について調べよう。………じゅるり。
あー……えーっと。これはあくまでこれは内面の気持ちであって、表面には出してないよ!
美少女はよだれとか出しちゃイカンのです。ただちょっと目元はニヤついてて怪しいかも知れない……。
この美少女の何よりも特徴的なのは髪だ。
艶のある髪の毛がやわらかくウェーブしながら顔の周りを縁っていて、胸元の辺りで綺麗に切りそろえられていた。
色は、銀色が混ざった青……というか青白い?
えぇー…。こんな色の髪の毛染めてなきゃ無いよね……。いや、染めても無理かもしれない。
最初は青色に見えたけど、光の加減でどうやら変化するらしい。
動いたり角度変えたり透かしてみたりして確かめてみると、どうやら透明というか。うっすら青が入った透明色というのか……説明がとてもムズカシイ。
透明なら頭部禿げてるように見えるんじゃね?とおもったらそうでもない。
重なりあった部分は何故か青が濃くなって、頭皮が見えたりはしない。
うわぁ、ふぁんだじー。
とりあえず、パッと見は青っぽく見えると言っておく。
しかも、サラサラ。猫っ毛でつねに絡まりまくってた私に喧嘩売ってるの?というくらいに指通りが良い。
これが自分の今の髪の毛であることがとても複雑デス。
今来ている服はネグリジェなのかな?シンプルで派手さはないけれどポイントになってるリボンがとてもこの少女に似合っている。
サイズは多少大きめ?なような気がするけれど、ずり落ちたりとかしないので問題ない。
が、脱がせ方が分からない……!!
多分、背中の方から着るようなやつなんだろうけど短い手では届かないし。
鏡に映して見てみようとしてもうまく見えないし……。どうなってんだろこれ?
べべべ別にヌードを見ようとか思ってないんだからね??!さすがに犯罪臭がする……。
そこまで落ちぶれてはおりません……多分。
なんとなく、背中がむずむずしたのだけれど、諦めるとする。
はあぁ……なんだこれ。
完全に、参った。ほんとにわけがわからないよ。
美少女は大好きだし、よくある異世界ものだとかそういう創作物も大好きだけどね……。
さすがに、実体験となると話は別だよねぇ。
想像と妄想でおなかいっぱいです。夢なら今!覚めるんだ!!
ふぬぬぬぬっと天井に向かって手を伸ばしてみても何も起きる気配はなく。
はぁ、と鏡の前の美少女は悲しげに溜息をついた。
私がこんな美少女になってしまうだなんて……と自嘲の笑みを浮かべ―――……。
はて。
そういえばと思う。
“私“は、なんて名前だったっけかな……?
途中から主人公が止まらなくなってしまった……!!名前さえまだ無いのに恐ろしい子ッ。