12話
書き方が安定しないー。
「もう少し静かに来れないのか……お前は」
「まぁ、そう怒るなよ。これでも制御してるんだがな……中々力の加減がな」
目の前でやり取りされてる言葉など上の空で聞いていた。
私はというと何を言うでもなくただその男性を凝視。そりゃもう舐め回すように……。
「大体、来るのが早すぎやしないか?昨日連絡したばかりなんだが」
「そりゃ、楽しそうな事は即行動だろーが」
ニヤニヤと男臭い笑みを浮かべてジェイドを見やる男。
(うわ、ちょっとあの上腕二頭筋触りたいわぁ……)
イケメン見たらまず観察。これ基本ですね。
後ろにいたこのワイルドな見知らぬ男性は、ソファの後ろから「よっ」と乗り上げてきて私の隣に座った。
あ、ここのソファは3・4人くらい余裕で座れるくらいに長細いです。
そんなに広いのに、なぜだか私の横にぴったりと座り、
「んなに情熱的な目で見るなよな?」
ニヤリ、と笑ったその顔は獰猛で色気に溢れておりました!
ぞくぞくぞく。
これはやばい!身の危険を感じます!色気にノックアウトされそうです!!
相手が居ない方のソファの端っこまで逃げ逃げ。あと凝視していたのがバレてしまって恥ずかしいし!
「はわわわわ」
「んな逃げんなよ。なにも取って食いやしないぞ?」
嘘ですよねーぇ?
そう言ってるわりに、逃げる私を追い詰めてますよね!?じわじわ端っこ来ないで下さい!!
「やめろ。アーシェが怯えてる」
ひょいっと後ろから抱え上げられて。
突然のことにびっくりとはしたものの、すぐにジェイドの腕に座らされました。
おぉ。なんかいいねコレ。この視点いい感じ。
乙女の夢といえばお姫様だっこではあるけど、これはコレで中々。
そんでジェイドの顔を窺い見ると、不機嫌そうなご尊顔がー。眉に皺よってますよー。
ぐいぐいと押して伸ばしてやりたくなったが、そんな雰囲気でもないので大人しく抱えられている。
「アーシェ……?もう契約を済ませたのか?」
「いや……」
言い難そうに口ごもるジェイド。んん?契約してたら何かマズイのでしょうか。
口をはさむのも何なので、大人しく聞いとくけどさ。
「名前は……アーシェスタ。だが、契約はしていない」
「ほぉ?」
面白そうに目を眇めて、ジェイドの腕に大人しくお座りしている私を見やるフェロモン男。だからその獲物を見る目やめてったら!ぞくぞくするから!色気方面じゃなくマジで喰われそうです……。
視線から逃れるように、ひしっとジェイドにしがみつく。
その際にフェロモン男が「ふぅん?」とか楽しそうな声音で言ってたけど気にしない。フェロモンになんか負けるかぁ。
……あ~なんかいい匂いする。いい男は匂いまで違うのかぁ。
スンスン匂いを嗅いでると私を抱えたまま、ジェイドが元座っていた場所に移動する。
シドさんがにこにこ……じゃなくにやにやしながらジェイドを見ている気がする。
まぁ、確かに金髪イケメンが幼女抱えた姿は微笑ましいものなのかもしれないねぇ……。
ジェイドも見られていることがわかっているらしく、苦い顔をしていた。
その顔をみて、
(すみませんね、お荷物で)
ジェイドが座ると同時に降りて、さぁ次はシドさんのところへ――と思っていたのだが、がっちりホールドされてお膝の上に座らされていました。
ちらっと見るが、ジェイドは何事もないかのようにしている。
もう一度、とソファに移動しようとするのに更にがっちりと固定されてしまった。
今度こそ、と今度は抱えている腕を押してみるが「大人しくしてろ」と耳元で囁きやがりました!
あーはいはい。大人しくお膝だっこされてればいいのね……。
私が大人しくなったので、ジェイドは私が此処に来てからのことを簡単にフェロモン男に説明していった。
説明を聞いた男は目をキラリと光らせながら私をみると、
「じゃあ、そいつは誰のモンでもないんだな?」
おいこら。勝手にモノ扱いしないでいただきたい!私は私のモノでございますー!
「アーシェスタ。俺と契約して、俺のモノになれよ。存分に可愛がって愉しませてやるぜ?」
「いきなり会って失礼な人ですね。私はまだあなたのことなにも知りませんのでお断りします!」
フェロモン男の誘惑になんて負けません!
男に対して威嚇するつもりでいーっと歯を見せる。そしたら、何がおかしかったのか。
「クッ……あはははは!!!おい、面白いなコイツ!!こんな変な妖精初めて見たぞ!!!まさかこの俺が振られるとは思っても見なかったぞ!!」
あはははははと大爆笑のまま、腹を抱えてひーこらいっている。
よくわからないが、私が笑われているのは確かだ。なんなのよもー!すんごい腹立つなぁー!
「ヴァル」
ジェイドが少し厳しい声を出した。呼んだのは多分こいつの名前だろう。
そのヴァルと呼ばれたフェロモン男は「すまんすまん」と未だ笑いの発作が収まらないようだったけど。
「いやぁ……すまんな。別にお前を悪く言ったわけじゃぁないんだ。お前は変わってるがとても個性的で可愛いぞ」
「褒められてる気がしませんー」
「くくっ……」とまた笑い出しそうになっていたが、シドとジェイドがぎろりと睨むのでなんとかこらえたようだ。
私も盛大に睨みつけましたともさ。婦女子を笑うとは何事ですかね!!
「そうだな、じゃあ俺のことを知ってもらおうか。俺の名前はヴァルフレート・ディル・アルマディ」
おや?なんだか聞き覚えがある気がするんですがー。主に名前の最後の方に。
とりあえず、知らない振りをしたらいいかなーぁ……。あーあー私は何も聞いてませーん……。
私の心の中など知ったこっちゃないとでも言うように、この男は告げた。
「この国、アルマディスの王だ」