プロローグ 現実を見ろ VS 聖王(一回目) Reality in the fantasy [true] and [false]
「現実を見ろ」
叶岾が言った言葉が静かな広間に響く。
わかってる。今まであったことは全部現実で、ここが異世界ってことも。
わかってる。今目の前で起こってることが現実で、こいつが本当に死んだってことも。
わかってる。わかってるけど、そんな簡単に認められるかよ。異世界に召喚されるなんて。今まさに魔王より強い奴と戦うはめになってるなんて。
危険な状況でありながら、俺の頭は次第に覚めていく。
認めたところで何も変わらない。足下の男が生き返ったりしない。敵が消え去ったりしない。
「潔く死ぬ覚悟はできたか?」
王が不適に笑いながら言った。
王が強いなんてあり得ないだろ。魔王じゃあるまいし。
そんなことを考えていると、叶岾が小声で話しかけてくる。
「どうする。このままじゃやられるぞ」
どうしようもねぇよ。ここで終わりだ。まさかこんなメルヘンな世界で一生が終わるとは。事実は小説より奇なりって本当だったな。
俺は目を閉じる。今更どうしようもないからだ。
ちょうどその時、奇妙な感覚におそわれた。体の内側から引っ張られるような。
この感じ。できないんじゃなかったのかよ。まったく。あてにならねぇな、魔法使いってのは。
俺たちはそのまま引っ張られるように広間から姿を消した。