第5話 狂戦士の剣技
「ブラッドスキル、呪血創造っ!」
スキル発動と同時にペペロンチーノは、とつぜん自らの手首を鎖鞭の刃で切り裂いてしまった。
当然、手首からは大量の血が噴出した。だがそれらが地面に滴り落ちることはなく、彼女の周囲をふわふわと漂うと、最後には手の中にすべて集まっていった。
「こうして……それからこうしてぇー」
ペペロンチーノは集まった血の塊を、まるで粘土のようにこねくり回した。
不思議な事に、流動的であるはずの血は彼女の手の中で次々と形を変え、ついには赤い光沢のある一本の剣に仕上がった。
「ふぃー。 マスター! 完成しました~!」
「ええ、上出来です」
だがその直後、ゴーレムは自分の身体の一部のブロックを宙に漂わせると、まるで砲弾のような勢いでこちらに飛ばして来たのだ。
あまりにも突然の攻撃で、ちょうどブロックの着弾箇所に居たクライシスには、攻撃を避けられるような時間的猶予は無かったように思えた。
「マスターッ ご無事ですか?!」
ペペロンチーノはドキドキしながら、姿の見えなくなったご主人様に向かってそう呼びかける。
返答がないので、ペペロンチーノは少し焦りを感じた。
だが少し待つと、クライシスの声はなぜか彼女の背後から返ってきた。
「ぺぺさん。ワタシ様はここにいます」
「ああっ、良かった~。マスターが潰されちゃったら、どうしようかと」
「フフフ、ワタシ様がそう簡単にやられるわけないじゃないですか。それよりも、出来上がった剣をこちらに渡してください」
「はいッ、どうぞこちらです」
クライシスは、ペペロンチーノから血で出来た剣を受け取る。
注文どおり、やや小ぶりの軽くて細い剣だ。だが柄からブレイドの中程にかけて、やけに凝った薔薇の装飾が施されてあった。
「えへへ、自身作です!」
ペペロンチーノは胸を張りながらそう言った。
正直なところ、見た目よりももう少し性能面に気を遣ってほしかった所ではある。
しかしクライシスの持つ戦闘スキルならば、どんな剣でも最大限の性能を引き出せたのだ。
そのときゴーレムは、さきほど飛ばした自分の身体の一部を回収している所だった。
クライシスはその間に、ゴーレムの弱点であるコア部分に血の剣で狙いをつけながら、補助魔法の詠唱を開始した。
「我が前に汝じの心臓を曝せ。精密性補助」
さらにクライシスは、血の剣に一撃の威力を上げる効果のある魔法を付与する。
「……覇王の如き、我が道を斬り開かん。破壊力上昇!」
完璧に近い戦闘準備を済ませると、剣を水平に構え、そのまま鋭く突きを放った。
剣はコアの中心を寸分たがわぬ位置で貫通し、ゴーレムを一撃で行動停止に至らせたのだった。
「お見事です!!!」
ペペロンチーノは、狂戦士クライシスの見事な剣裁きを見て、思わず感激の拍手を送った。
クライシスも思った以上に威力のある一撃が出せたことで、満足気な笑みを浮かべた。
「最初は頼りなく思えましたが、なかなかいい剣じゃないですか。よし、それではこの剣にブラッドエクスブレイドという銘をつけましょう」
「流石マスターです。素晴らしいネーミングセンスだと思いますっ! ……です、けどぉ~。その剣もう消えちゃいますよ?」
「え?」
すると次の瞬間、剣の形を保てなくなったブラッドエクスブレイドは、血の煙となって空気中に霧散してしまった。
「なに。たった一振りで???」
「……はぃ」
「……ペペ。これはもう少し、修行が必要ですね」
「あははー!はは………すみません」
その後、ゴーレムから採取したレア素材をペペロンチーノの収納魔法の中にしまうと、クライシスは後ろで待たせていた少年に話を聞くことにした。
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