第55話 呼び声
──目につく物は、手当たり次第に殺した。
最初のうちは、自身の胸のざわめきのままに剣を振るうが、やがてそうではなくなった。
狂気を纏いし極大剣の戦士に対し、魔物共は深淵なる恐れを抱く。
自然と戦いは、後ろからガラ空きの背中を斬るだけの単調で機械的な作業と化した。
いつしか彼の感情は、狂気の中へ薄埋もれていった……。
しかし突如、記憶の中にある助けを求める叫びが聞こえ、クライシスはふと我へと返る。
「た、助けてー! クライシスーーッ!!!」
(ッッ………!!? この声は……っ?!)
すぐさまその場で方向転換し、声のした座標まで一目散に走りだす。
その先にあったのは、村から逃げ遅れたプラムが、サーペントタイガーという四足獣系魔物に今にも飛び掛かられそうになっている瞬間だった。
剃刀のように鋭く発達した体毛が頭部から尾骨にかけて存在しており、正確にはセイバームーンという変異種であるようだ。
プラムはエッグバードの餌箱のある民家の庭の中に逃げ込んだようだが、そこでさらに追い込まれ、逃げ場を失ってしまったのだ。
「あっ!クライシス!!! 助けに来てくれたんだね!」
魔物の背後から駆け付けたクライシスに気が付くと、プラムは少し安堵し表情が和らぐ。
しかし助けに入るよりも先に、サーペントタイガーはその鋭い爪を振りかざし、プラムに襲い掛かった。
「……アッ…!」
「しまったっ。プラム!」
このままではプラムの命が危ない。
しかし、その魔物までは剣撃の射程範囲外だった。スキルの発動もとうてい間に合わない。
「……クッ!」
そこで最後の手段。
クライシスは持っていた極大剣を、サーペントタイガーに向かって思い切り投擲したのだ。
彼の筋力ステータスならば、極大剣も投げナイフのような速度で飛ばすことが出来る。
─ビュォオオッ
物凄い重量の物体が、風を切り飛翔する。
その威圧感に気づいたのか。プラムに襲い掛かろうとしていたサーペントタイガーは、攻撃を中断し急いでそこから飛びのいた。
その結果、投擲の外れたシルヴァティクスは勢い収まらず、民家の壁を貫通破壊。そのままどこかへ飛んで行った。
「うおおォォォッ!!!」
鬼気迫るような咆哮を上げ、サーペントタイガーの注意がこちらに向くようしむける。
そして拳に魔法の炎を宿すと、クライシスは直ちに徒手空拳を仕掛けた。
「さあ、来いッ」
「グルゥオオオウ……!!!」




