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第53話 SS

「スキル発動。識弱暗曇!」


 精神を集中させたラズロは、胸の前で交互に手を組み合わせる。

 すると、彼から薄黒いもやのような物が生成され、周りにいた全員を近くの魔物の目から覆い隠した。


「へぇー、これが隠密スキルっスか。中からはこんな感じなんスね」


「おいおい。こんなフワフワした頼りないオーラで、ホントに大丈夫なのか?」


「うん、任せてよ。でもね、あんまり大きな音とかは出しちゃダメだよ? 一応コレって、気づかれにくいってだけなんだよねー」


 そうして5人は、村の中にいる魔物共に気づかれないように注意しながら、静かに目的地まで移動を始めた。

 最後まで村に残った冒険者たちは、レフリー村長の持ってる宿屋の下の地下隠れ家の一つで、今まさに決起集会を開いているそうなのだ。



 地下隠れ家までの道のりには、多くの魔物がうろうろと彷徨っていた。

 それらから身を隠すために、ラズロの隠密スキルは大いに役立った。


 また移動の最中には、大型ゴーレムやオーガによって破壊された建物の数々が目に入ったが、その中に逃げ遅れた村人の姿は見当たらなかった。

 その時点で、避難の大半は完了していたのである。


 残念ながら間に合わなかった人々の行く末については、想像するまでもない。

 目の前で、もはや助けられなかった者らがどうにもならなくなっている所を見る度に、冒険者たちは涙と悔しさをこらえながら先に進んだ。



 その後も慎重に進みつづけ、彼らはようやくエルダーツリーの近くまでやって来た。

 宿屋の立ち並ぶ中央通りはもうすぐそこだ。


 するとラザルスは声を抑えながらも、彼らの真ん中で立ちながらスキルを維持するラズロに対しこう言った。


「この辺りにはもう魔物もいないようだぞ。それなら、このまま隠れながらのろのろ進むより、今のうちに一気に走った方がいいんじゃないか?」


 目的の隠れ家がある宿屋は、もう彼らの視界の先に見えていたのだ。

 しかし、ラズロはかぶりを振って答えた。


「ダメダメ。そんなのしちゃいけないよラザルス君。だってこの辺りには、あのヤバい魔法術師がいるはずなんだから……… アアッ!ヤバいよみんなっ、早く隠れてッ!!!」


「う、うんっ!」


 エルダーツリーの枝葉の僅かな揺らぎから、ラズロは何者かの接近に気が付いた。慌てて全員に警戒を促す。


 冒険者たちは急いで近くの民家の中に駆け込む。

 そして、決して外からはこちらの位置が分からないように隠れながら、近づいてくる何者かの姿を確かめようと窓から外を覗きこんだ。


 …………しばらくすると、それは姿を現した。


「チッ、まーだ出てこないのか」


 そんな事をぼやきながら、黒いローブを着た魔法術師は空を歩いてきた。

 すぐ後ろからは土属性の菱形ゴーレムが、わずかに浮遊しながら付き従って来ているようだ。


 ペペロンチーノは、その男に見覚えがあった。


「アイツは!? ガゼル・ホップス!!!!」


「うにゃにゃ!そんな大きな声出しちゃダメだにっ。えりゃ」


(むぐぅぅっ……!)


 驚いて思わず叫んでしまったペペロンチーノを黙らせるために、ラズロはとっさに自分のふさふさな手を彼女の口の中に突っ込んだ。


(うぐうぐ~ッ?!?)


(こら、静かにするっス!)


 ペペロンチーノは嗚咽をもよおし、余計に暴れ出すが、ダリアとマルティが二人がかりでどうにかして彼女の事を押さえつける。


「なんだ? 何か聞こえたような……」


 一瞬、こちらに反応を見せるが、ガゼルはそれ以上追求するそぶりを見せなかった。


 だがしかし、彼はとつぜん不穏な動きを見せ始めた。


 ふと右腕を空に掲げると、なんと攻撃魔法の詠唱を始めたのだ。

 二重の魔法陣が空中に浮かび上がる。


「まずいぜ。これ、狙われてるんじゃないか?!」


「いやっ、まだバレてないはずだよ!」


「え、ホントか?」


「えと、…………たぶん」


 一気に大量のマナが濃縮されたことにより、ガゼルの周囲には小さなイナズマが幾つも飛び散っていた。


 ペペロンチーノはそれを見ると不思議がった。

 ガゼルのINTは、どんなに高くても300くらいだったはず。その程度の低い魔力ステータスでは、こんなに高次元の魔法現象は引き起こせるはずは無かったからだ。


 だが、その理由はすぐに判明した。


 ガゼルの右腕に装着してあったのは、クライシスの持つSS級装備の一つ。

 全ステータスと魔法を二倍にする非ユニークアイテム──ガンズ・オールツヴァイだったのだ。



 そしてやはり、ガゼルはペペロンチーノ達には全く気付いていなかった。


 ガゼルはどこというわけもなく適当な民家に狙いをつけると、蓄えた魔法のエネルギーを解放させた。

 辺りを閃光が包み込む。

 魔法の直撃した場所には、民家など跡形もなく、底の見えない深い穴が空けられていた。


「クックック。やはりこの力は最高だなァ!!! 早く出てこい終わりの始まり(ワールドエンド)。お前をぶっ殺して、残りのユニークも根こそぎ奪ってやるぜ!!!!!ハーハハハッ」



 ガゼル・ホップスが高笑いしながら去っていった後。ペペロンチーノは一人、スキル:識弱暗曇のオーラ膜の中から抜け出た。


「ペペロンチーノ?」


「私、行かなくちゃ。この事をマスターに知らせないとっ!」


 ザクロ村を襲った敵の正体は、悪逆非道な転移魔法使いガゼル・ホップスだった。

 しかも彼の狙いは、クライシスを殺して破魔の兜を手に入れる事だったのだ。


 ─いつもなら、あんな奴にクライシス様が負けるはずない! ……でもっ─


 ガゼルはSS級オーパーツを所持していた。

 クライシスはその事実を知らない。

 あの威力で不意打ちを喰らえば、流石に勝ち目はないかもしれない……。


 ペペロンチーノは仲間たちにその事を伝えた。


「分かった。行って来いよ! オレ達も、後から村の冒険者たちとみんなで追いかけるからよ!」


「十分気を付けて行けよ。あのゴーレム以外にも、放たれた魔物はたくさんいるんだから」


「うんっ! マナは少ないけど、生命探知を使って隠れながら行く!」


 そういうと彼女は、慎重に民家から外へと出て行った。


「ペペロンチーノ! 怪我してるんスから、あんまり無理しないで!」


 去り際にマルティはそう呼びかけた。

 するとペペロンチーノは振り返り、安心させるようににこりと笑いながら頷いた。


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