第45話 フルアタック
きっと自分の魔法で自滅した形になるのだろう。しかしそれは、奴が破魔の兜で幻覚魔法が跳ね返されることを知らなかったからだ。
今もダムドは幻惑状態に陥っており、奴はこちらの姿さえまともに見えていないに違いなかった。
だがしかし、一度失敗を学習したならば、もう二度と煩悶せし暗転は使ってこない。
こんなチャンスは、二度とやって来ない!
「──覇王の如き、我が道を斬り開かん……ッ、破壊力上昇!」
全員に総攻撃の号令を下すと、クライシスは即座に複数の補助魔法の詠唱に入った。
言葉だけでなく彼が示した明確な攻めの姿勢は、冒険者たちにとって、これが勝負を決める最良の機会なのだとハッキリ裏付けるものであった。
「いくぞお前らァ! とろとろすんなよ!」
「ああ、分かってるさ。ここで決めてしまおうッ」
すると、マルティは言った。
「ふんだ。クライシスさんでもないのに、そんなに偉そうに指図しないでくれませんっスか?ダリアさん」
眉をひそませ、怪訝そうな顔で彼を睨みつける。
しかしおもむろに自分の剣を取り出すと、逆手に持って攻撃の準備をしだした。
「へへへ、でもまあ……。ここはアタシから行かせてもらうっスよ!」
「なーッ、オイ!!」
そういって彼女は陣形から飛び出すと、走りながら無防備な状態にあるフォレストライオターダムドに正確に狙いをつけた。そして、そのまま勢いよく剣で斬りかかる。
STRが不足しているため、ダメージは少ない。
しかしダムドは、自分がどこから攻撃をされたのかも分からなかった。マルティの攻撃を受けたダムドは、大きく体勢を崩す。
「うっひょぉ~。弱い者いじめって、楽しぃーー!」
(マ、マルティ?!?)
攻撃魔法の準備をしていたペペロンチーノは、思わず顔を上げる。
「よし、オレたちも続くぞ!!!」
ダリアとラザルスの二人は、ほぼ同時に前へ出た。
そして各々の得意のアーツを発動し、フォレストライオターダムドに追撃を与える。
「……はっ、スピニングコンセクティブ!」
ラザルスはダムドの背後に回り込み、斬撃と刺突を組み合わせた連続攻撃を繰り出した。
続いてダリアも剣にマナを溜めると、左腕部から右横腹にかけて斬り下ろすようにして、強力なため攻撃を放った。
「ぜりゃァアアッ、オーバースラッシュ!」
正面から強力な一撃を喰らい、ダムドはのけぞるように後ろに後退させられる。
その間に、ペペロンチーノは間合いを詰めていた。
「ふぅー……」
目の前の相手に意識を集中させながら、強力な雷魔法の詠唱を行った。
「白き閃光よ、かの者を撃滅せし痛撃を与えよ! 滅裂なる暴雷電っ!!!」
彼女の手元から大きなイカズチが一つ放たれたかと思うと、それは空気を震わせながら凄まじい雷鳴と共にフォレストライオターダムドへと直撃した。
瞬間辺りに、肉が焼けたような焦げの匂いが漂う。
通常個体の弱点が雷属性だった為、彼女は破砕の烽火と同レベルに強力なこの呪文を選択したのだ。
それでも未だ倒されていなかったため、効果的だったかどうか不明だった。
しかし奴は、雷に打たれた時の副次効果で身体が麻痺してしまっているようだった。
「クライシス様っ!」
幻覚と麻痺で完全に動けなくなったフォレストライオターダムド。そこに、補助魔法で攻撃を高め終えたクライシスが駆け寄ってくる。
走ってくる途中で、彼は数百キロもあるツヴァイハンデットソードを折れていない片方の腕で天に掲げ上げた。
剣を支えるその手は、異常なほどガクガクと震えていた。しかし、決して両手剣の重さに耐えきれなかったから震えていたのではない。STR999でも完全には殺しきれないほどの強力な奥義の反動のせいだった。
それは酷すぎる手ブレと溜めの遅さのせいで、通常ならまともに扱う事も出来ない。
真面目な戦闘では使えない欠陥品。
しかし、その分威力は最強クラス…………
「大剣奥義:エクシードプライム!!!!!」
クライシスの放った一撃は、ダムドの中枢を捉えた。




