表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/38

第29話 剣闘技大会

 エルダーツリーの前に作られた特設ステージには、荒くれものの冒険者たちの戦いを一目見ようと村中から大勢の人々が集まっていた。


「くそッ! こんな若造に負けちまうとは!」


「へへん! マリ―ブ村の最強剣士、ダリア・パニス様を舐めんな!!! オレっちはな、いずれこの世に敵なしの天真爛漫な冒険者になるんだからな!」


 ステージ下のセコンド席にいた相棒のラザルス・ラックは、それを聞くと思わずこう突っ込んだ。


「おいおい。それをいうなら天下無双とかだろ……」


「フッ、同じようなもんさ」


 相手の冒険者がステージから退場すると、代わりに派手な服に身を包んだ司会進行役の村長が駆け足で登って来た。

 そしてマイクを使って、観客たちの興奮をさらに煽るようにこう言った。


『すごいぞー! 今回の剣闘技大会は大番狂わせじゃぁッ! まさか大会初出場の若手冒険者が決勝進出を決めてしまうとは!』


(うぉおおおおお!!!)


 観客たちは一斉に歓声を上げる。


「まあなっ。あれくらい楽勝だぜ」


「決勝も頑張れよ、ダリア」


「おう!」


 ダリアとラザルスは互いの拳を突き合わせる。


 ステージ端から中央に戻ると、力の余っていたダリアはその場で何度もジャンプをし始めた。


「よぉーし。オイじじい、次の相手は誰だ?ちゃっちゃと優勝して、商品は俺たちがもらうぜ」


『フォッフォッフォ。威勢がよくて良いのぉ。 だがそううまくいくかな?』


「なんだと?」


 すると村長は、再びマイクを片手にこう言った。


『ここまで破竹の勢いで勝ち上がってきた剣士(ソードマン)、ダリア・パニス。だが次の相手は一筋なわではいかんぞ! ──上がってこい!』


 村長が腕を振って合図すると、反対側からは漆黒の兜をつけた冒険者がステージに登ってきた。

 兜なのに鎧ではなく花柄ローブを身に着けており、なんとも珍妙な恰好だ。


「ああ。あなたですか」


「は? 誰だお前?」


 ステージの上で相対する二人。

 その間、村長は語気をだんだん強めながら、選手紹介のようなものを行っていた。


『驚くべきことに、この漆黒の兜をつけた戦士もまた今大会初出場だ!コイツは余程幸運値が高いのかもしれない!いずれの対戦相手も突然原因不明の気絶で失格となっているのだ。よってコイツは準決勝までは、まだ一回も剣を抜いていない!しかも、持っているのは村のお土産屋さんで売っている子供用の木刀という始末!コラァ!なめてんじゃねーぞ!』


「「「ブー、ブー」」」


 観客席からは大ブーイングの嵐が巻き起こる。


「ははは、困りましたねぇ」


 兜の戦士は、そう言いながら頭をポリポリと書いた。


 ─なんだコイツ。おかしな奴だぜ─


 ダリアは対戦相手の異常さに警戒心を抱きながらも、腰に差していた片手剣を抜いて斜に構えた。


 ─覇気を全く感じねえ。つえーのか?よえーのか?─


 ダリアの様子を見ると、兜の戦士も形だけだが木刀を前に伸ばす。

 そのとき戦士はこう考えていた。


 ─フフフ、彼には悪いですが、また手刀で決めさせてもらいますかっ★─


 しかしそれが見透かされていたかのように、その直後、村長は戦士にこう言った。


『一応警告しておくぞ。またさっきまでのような地味でクソつまらない戦いをみせたら、その時点で失格とするのでそのつもりでいるように!』


「…………」


『それでは決勝戦! 狂戦士(バーサーカー)クライシスVS、剣士(ソードマン)ダリア! 剣闘開始じゃぁぁァァ!!!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
拝読いたしました! シリーズ全体を通して一貫して感じるのは、「キャラクターの生き様」が常に物語の中心にあることです。 クライシスの理知と冷静の裏にある人間味、そしてペペロンチーノやマルティの掛け合い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ