第24話 作戦会議の話(前編)
二日後、ペペロンチーノたちは再びクライシスの居る離れ屋に集まっていた。
クライシスのHPが起き上がれるまでに回復したので、エルダーツリーダンジョンにリベンジする為の対策を練る話し合いをすることになったのだ。
部屋に入るやいなや、ペペロンチーノとマルティはほぼ同時にクライシスの元に駆け寄った。
「クライシス様!お元気になられたようで何よりです!」「へへへ、元気そうッスね!」
いつも以上に激しく迫ってきた二人に少々おどろいたものの、先日の口喧嘩を聞いていたクライシスは、息のあった彼女たちの様子をみて安堵した。
「ええ。 お二人も仲が良さそうで本当によかったです」
「いやっ、そんなんじゃ」
「アタシたち、超仲いいッスよ! いえ~い」
「ちょっと!」
クライシスはあの時、HP消耗症の倦怠感のせいでうっかり眠ってしまった事を後悔していたのだ。
あのまま二人の口論を放っておいてもし更なる大喧嘩にでも発展していたら、理性を失ったペペロンチーノがスキルを誤発動でもして、血みどろの大騒動になっていた可能性もあったかもしれないからだ。
だが、実際にはそんなことにはならなかったのだと分かり、クライシスはほっと胸を撫で下ろした。
「ともかく。ワタシ様の早とちりで済んだようですね」
「ん? 何がですか」
「いいえ、なんでもありません。 それよりもペペさん。頼んでいた件は調べてくれましたか?」
「はい。もちろんです!」
現在、エルダーツリーダンジョンの攻略を阻む大きな障壁となっているのは、もっぱら中層の難易度の高さである。
三層しかないダンジョンとはいえ、あそこまで魔物のレベルが急上昇するのは珍しい。
またクライシスが今まで見たザクロ村の冒険者の中に、あの中層を突破できるような人物は見当たらなかった。
それで、前に噂で聞いた深層まで行った冒険者がいるという話を、彼女に詳しく調べてもらっていたのだ。
「その冒険者の話から、何か攻略の手がかりになるきっかけを得られればいいのですが」
「ええと、それがですね。たしかに深層までたどり着いたという冒険者は居たらしんです。ですけど、残念ながらダンジョン攻略の参考にはなりそうになかったんです」
「ふむ。くわしく聞かせてください」
すると彼女は、看病の合間をぬって短期間で調べ上げた情報をクライシスに渡す。
「深層までたどり着いたという話は、この村に10年以上前からあるのだそうです。でもパーティーはほぼ壊滅状態で、生還者はたったの一人。そして、その生き残った一人というのが”植物魔物特攻の加護持ち’だったから運よく深層まで行けた、っていうのが噂の正体みたいでした」
「なるほど。加護ですか。 たしかにそれだと我々には役に立ちませんね」
加護というのは、冒険者個人の実力に関わらず、ダンジョン内で稀に手に入る事があるスキルのようなものだ。
また、数多ある加護の獲得条件や種類などはよく分かっていない。
「加護が手に入るかは完全ランダムですからね。攻略の対策としては使えませんよね……」
「ええ、残念ながら。 でもペペロンチーノ、よく調べてくれました」
「はわわ、マスターのお役に立てて光栄ですっ」
クライシスといえど、ダンジョン攻略のために任意で植物魔物特攻の加護を獲得するなどという事は不可能なのだ。
裏技が使えないとなれば、通常どおり正攻法で挑むしかない。
つまり、魔物を倒しながらダンジョンを順番に下っていく方法だ。
だがそれも今の装備、状況、戦闘力ではまだ難しい。
「どうするんスか。ってことは、打つ手なしじゃないスか」
「もうっ それをこれから考えるんでしょ!」
「そりゃあ、そうっスよね……。う~ん、でもあんな恐ろしい魔物がうようよいる森を、一体どうやって抜ければいいのやら」
だがそこで、クライシスはこう言った。
「一応、作戦はすでにあります」
クライシスは、ふと不適な笑みを浮かべた。




