枷にしたいんだ
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
恋愛です。R15です。
苦手な方はご注意下さい。
多分貴方と似た者同士だと思うよ。
人間は自分と似た人間を好きになるらしい。似ているところを見ると安心するかららしい。
だからきっと彼女は、一歩間違えればとんでもないロクデナシに成り果てる事だろう。
互いが互いに動けなくなった朝、彼女は枕元に置いてあった文庫本を読んでいた。これを読んでるのを見たのは初めてでは無い。傍に居る時は飽きることなく、もう何周もしている。
私も彼女に頼んで読ませて貰った事があるけれど、しっとりした余韻の残る、少女の綺麗な物語だった。
「沢山の物語を読んで来たけれど、女性の登場人物の中で一番惹き付けられるのは、この子のお母さん。娘を祖父母に預けて放ったらかしで、自分は他の男と寝てばかりだけど、其れが良い」
恍惚とした表情のまま、彼女はただうっとりとそう言った。
「……この間読んでいた女の子は?」
彼女は読書家だ。様々な物語を何時も傍に置き続ける。 だから別にその主人公の母親に固執する事はないはずだ。現に前読んでいたラノベの女の子に対しても、強い興味を抱いていた。だから別に、この人にだけ固執しているという訳ではない。
私が此処まで焦りを感じているのは、彼女が好きだと言った主人公の母親と、隣で横になる彼女の面影が重なるからだ。
ある日突然、堰が切れた様に帰らなくなり、他の男と夜を共にする様な、妙な危うさがあった。
「あの子も好きだけど、より魅力的なのは、主人公の母親かな。
でも不思議な事に、この人が男の人だったら、此処まで好きにならなかったと思うよ。どう頑張っても私は男の人になれないからね。
……私の本質は、きっと誰よりも色狂いなんだろうなぁ……。一緒に居ないと、満たされないんだろうなぁ……。」
そう聞いた時、この子を縛り付ける為の何かが必要だと感じた。
私が好きな小説の話をしてから、彼は暫くの間、ベッドに縛り付けて朝になるまで離してはくれなかった。その晩も私の上から覆い被さって、ただ優しく髪を撫でる。
「あのね、もう限界だよ……。気力もそうだけど、体力的にも……。何より触られ過ぎてずっとヒリヒリしてる……。どうしてそんなに焦ってるの?」
「君は不足を感じると、すぐにでも靡いてしまいそうだから。こうしていれば浮気も何も出来ないから。
浮気がしたい? 不倫がしたい? 君が望むままに振舞ってあげるよ」
彼は、私を枷にしたいんだ。私が彼から、彼から私が離れられないように。
人間は自分と似た人を好きになるそうで。
これが多分、言いたい事だと思います。
私だけかも知れないのですが、クソほどロクデナシで、我が子放ったらかしにして、誰かと夜を共にするのは、男性キャラじゃ駄目なんです。
そうなれないから。なのですが。
だから彼女の事を心配して縛りつつ、貴方も似たようなものだと思うよ。
最後の言葉は多分自分に対しても言ってると思います。
自分も油断したら浮気屋不倫をしてしまうから、彼女を縛ることでどうにか保ってそうな危うい話でした。