Act.2「自由の意志」.3
「何だよ、これ。どうして体が……墨田さん!? どこに……」
もしもこれが頭で、首についていたら、ブンブン周りを見渡していることだろう。
「え、えっと、お、落ち着いて、テイ。私の研究室だよ?」
「研究室……? なんで、僕の名前……」
「ああ、名前は会ってるのね。墨田さんっていうのは、友達?」
「……違う。さっきまで一緒だっただけで、あれ?」
何か、まだ引っかかることがあるようだ。体のないそのAIユニットには、身震いの一つすらできない。唯一動くのは、電子表示されたその両目だけだ。
「どうして僕は、生きているんだ? 死んだはず、だぞ」
「テイ、あなたはAIじゃないの?」
「何を言ってんるんだ?」
アーブは恐る恐る説明を始めた。現在の銀河の状況。テイと呼ぶこのヘルメット型のAIユニットを遺跡で発見したこと。先ほどまで機械的に対応し、船を動かしていたこと。
可能な限り伝えると、動かない首の代わりに目のアイコンが頷いた。
「僕の記憶とは。全く違う。僕は、人だった……」
「ヒトの魂をコピーした、AIユニットだったっていうことなの?」
ヒトの感覚を保有しながら、ヒトを超える戦闘能力を発揮する。なるほど古代文明はヒトの魂にまで手を加えられるようになっていたらしい。
「あなたの名前は、テイでいいの?」
「矢作、照偉、それで間違いないよ」
戦術AIの改造コードと、その非検体が同じ名前、これは偶然なのだろうか。
それとももっと別の因果があるような気がしてならない。
「改めて、私はアーブ。あなたを見つけて、研究していた、AI開発者よ」
「この、深宇宙探査船に関するデータは、あなたが送って来たものだったんだな」
思考能力のロックを解除しても、AIとしての処理能力自体に変化はないようだ。
アーブの入力したデータを、テイは問題なく解読し、処理している。
「そう。本当は、戦争の道具になんかなるはずじゃなかった。あなたの、この宇宙の未来のために……」
「宇宙開拓時代であっても、戦争は続いているんだな。さっきまでの稼働ログを見る限り、あまり平和な時代でもないみたいだ」
人間のような思考能力を持つテイユニットは、オープンネットワークに繋げれば無制限に情報を収集できる。ハッキングするには相応のプログラムを入力する必要があるだろうが、今その必要はない。
単純な戦術プログラムだけでも十分共和国の特殊部隊と渡り合えたほどだ。もしも高性能のハッキング・プログラムを仕込んだならば、自立思考能力と合わせてどれほどの解析能力となるのか。
「あなたの生きてきた時代がどうかは知らないけれど、人類ってあんまり進化してないのかもしれないのよ」
「なるほど。人間らしい」
頷くこともできない頭で、テイは何か納得したように言った。
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