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Act.2「自由の意志」.1



 ――不思議な感覚だ。生身の体より自由に感じる。


「て、テイ! ちょっと、スピード抑えめにしてくれる!? 私が、持たない!」


 ノイズとデータ齟齬によってAIシステムに支障をきたすかと思われていたが、その杞憂はなかったかのように、今実験艦は宇宙に羽ばたいた。

 むしろ、実験艦の能力を最大限まで活用し、小型戦艦という火力も機動力も中途半端な船を敵の艦載機を翻弄していた。


「も、もうちょっと、優しく……安全、運転!」

「ロックオン反応検知、回避運動!」

「にゅやぁぁぁっ!」


 アーブから人間のものとは思えない声が聞こえる。急激に旋回した船体の中では、アーブが振り回され、かき回され、操縦桿を握る手を離せずにいた。

 尤も、操縦系統は全てテイユニットが掌握し、アーブは座っているだけに等しい。


「テ、イ! コロニーから離れすぎないで! 優先順位は、敵機の撃破ではなく拠点の防衛!」

「了解。帰投します」


 指示を出せば従う。AIである以上、それ以上の越権行為はない。


「ああ、もう、何て強引な、処女航海……。吐きそう」

「ダストボックスを用意しますか」

「気遣いありがとう。でも大丈夫。敵の状況は?」


 何とか体を起こしたアーブの前に、投影ディスプレイが表示。そこに立体マップで敵の位地とコロニーの状態が表示される。


「敵の強襲部隊は、強襲艦一隻と、艦載機十五機で構成されていました。現在コロニーの迎撃装置で四機、こちらの攻撃で二機を撃墜、三機が中破。残るは六機ですが、どうやらコロニーの迎撃装置は、その六機によって沈黙」

「テイ、あなたなら、その六機は?」

「撃墜可能」


 よどみない即答は、AIゆえの恐れのなさか。

 それとも。


 ――殺すことへの、戸惑いのなさか。


 アーブはその言葉を飲み込んで、わかったと答える。


「敵艦載機再出撃と同時に迎撃行動を開始。今度は、遠慮なくやっていいから!」

「了解。安全装置の装着を推奨」

「わ、わかってる!」


 つまり、先ほどの状態でも最大稼働ではなかったのだと、アーブには理解させた。

 単なる実験艦がここまでの出力になることは、通常不可能だ。テイユニットがシステムに干渉し、内部構造に若干の変更が加えられているのだろう。

 向上した推力と、高い照準機能。小型船舶が宙間戦闘機並みの機動で戦うのだ。

 シートベルトで体を固めたアーブは、ぎゅっと椅子のひじ掛けを握った。


「加速、開始!」


 実験艦メルクリウスが移動する。放たれた艦載機に対し、先制のビームが放たれる。

 その一発目で、六機中一機が吹き飛んだ。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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