Act.4「魂の在り処」.4
戦術AI。
その発想は古くから存在し、無人攻撃機の運用のために活用されてきた。
特に空中戦闘機、宙間戦闘機のパイロットとしては、負荷への耐久力に優れ、反応速度、射撃精度に優れている。
しかし、より高度化する戦場とシステムにAIでも対応が叶わず、特に数千機規模の戦艦が入れ乱れる大規模戦闘では、AIより人間の判断力のほうが勝ることが多い。
「さらに宙間戦闘機での戦闘においては、特にAIユニットへの負担も大きくてね。人間のパイロットのほうが、育成コストも時間もかかるけれど、優秀なパイロットになりやすいんだって」
「そもそも、僕が造られたのは深宇宙探索のためなんだろう。共和国はどうしてそんな状況で僕を欲しがったんだ?」
AIの優位性が崩れる宇宙空間での戦闘に、現状必要性は感じない。
そんな中で、なぜ戦術AIを欲したのか。
「戦況は、共和国に不利なのか?」
「今のところはね。共和国と帝国の軍事力はイーブンよ。でも、戦局は確かに帝国側に傾きつつあるわ。四つの勢力が均衡していた時期に比べて、だいぶ崩れてきている」
四大勢力は、もともと共和国と王国の内部から発生した独立勢力の帝国。さらに各勢力から分離した貴族連合。それが数百年単位で戦争と平和を繰り返し、現在は戦争状態になっていた。
「その中で、一番大きな勢力だった共和国だけど、その大きさがたかって三勢力どれとも領域が接触しているから、一番国力が削られているの」
「なるほど、だから戦術AIでその穴を埋めたがっていたのか」
「わざわざ特殊部隊を派遣してまで手に入れようとした理由は、それくらいしか思いつかないわね」
だからこそ、テイを共和国にも、帝国にも渡すわけにはいかない。
「私たちが目指す場所に行くために、戦争なんてやってらんないのよ!」
彼女は生粋の研究者だ。同時に、戦争を望まない者でもある。
「ここは、確か共和国と帝国のはずれにあるはずだよね」
「うん。だからこそ、帝国の艦隊がここに来たわけだし」
「いっそ全部の勢力を駐留させて、相互監視させてみたら?」
「そんなことしたらまともな研究できなくなっちゃうわよ。ま、その案も、この後の会議で出てくるでしょうけど」
中立性を保つうえで最も重要なのは、誰の後ろ盾を得るか。
矛盾しているようだが、中立とは誰からも攻撃されないことの保証が必要になる。
自身が武力を持っているのなら強力な後ろ盾は必要ないが、中立勢力を攻撃することのデメリットを相手が認識できなければ、中立性に意味はない。
大なり小なり、誰かの協力が必要になるものだ。
「じゃあそろそろ会議行かないと。テイも来る?」
「攻め込んできた要因の一端が僕にあるのなら、一緒に行こう」
アーブの手に抱えられ、テイは伴に主任会議へと向かった。
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