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DareDevil Diver 世界は再起動する  作者: カガリ〇
世界をはじめるための戦争(前編)
92/120

第92話 石城での謁見

 ドワーフの国のジ・ガルゴン王は、一番大きなロックキャッスルという砦で国を治めていた。

 そこは国の最重要施設であるので、ケイブロングヴェルツの一番奥に作られていた。


 ダイバー達はバルゴンに連れられロックキャッスルへとたどり着いた。

 すると、城の中から案内役のドワーフが現れた。


「お待ちしておりました。どうぞこちらです」


 本来なら大国の王に謁見するとなれば、小難しい書類にサインをしたり、儀礼的な何かを色々しなけらばならないのだろう。


 しかしガルゴン王は、一人の戦士としてバルゴンをとても信頼していた。

 彼の「緊急事態につき早急な面会求む」という伝言を聞くと、面倒で時間のかかる行程をすべて省き、ダイバーたちを王の間へと直接招いたのだった。



「さっそく、聞かせてもらおうか」


 ガルゴン王は堂々とした所作でダイバー達の前を横ぎると、肩肘をつけた姿勢で玉座に腰かけた。


 肩からはマンティコアの(たてがみ)で作ったケープを羽織っていた。さらに玉座の側にはシャイニングエコーという銘の伝説の戦斧が置いてあった。

 王は他のドワーフよりも倍以上大きな図体をしていて、戦場から離れた今でもなお衰える事の無いその肉体からは溢れんばかりの威厳を感じられる。


 対象的に、子供のように小さく弱弱しい見た目のドワーフが玉座の左側に控えていた。彼はブ・ボルドンというドワーフ国の大臣だ。

 また反対側には、〈ゼルエル〉の女性秘書官も同席していた。



 バルゴンは自らの仕える王の前に跪くと、自分が暗黒洞窟に出かけた経緯から、捕虜たちを救出するまでに起こった全ての事柄を細かに説明した。


「よもや我の知らぬうちに、国の内側でそのような悪行が行われていたとは……許せんッ」


「ガルゴン王。わしは国のためなら、いつだってこの身を犠牲にして戦う準備が出来ておる」


「ウム。その心意気やよし。だが、今は休め。よく報せてくれたなバルゴン!大儀だ!」


「ハッ もったいなきお言葉!」


 次にガルゴン王は、ダイバー達に話しかけた。


「貴様らがバルゴンのいう人間達だな」


 すると王は玉座から降りてくると、突然ダイバー達の前で頭を下げた。


「我の大事な部下と同胞を救ってくれたことに感謝する」


 彼は誇り高い種族の王であったが、民のためなら立場にも囚われない行動ができる人物だった。


 そんなガルゴン王を見て、ダイバー達ははじめ狼狽えた。ただの放逐者であり異端者であるダイバーに、王が頭を下げるなど考えられなかったからだ。


「王様! どうか頭を上げてください!」


「そうだぜ。俺たちはただバルゴンっていう仲間(ダチ)を助けただけだぜっ」


 ディップがそう言うと、王は感嘆の声をもらす。


「おおっ 今、ドワーフの戦士バルゴンを友と言ったのだな? どうやら貴様らは我らの同志〈ゼルエル〉と同じように、信じるに値する者たちと見た。ウム、貴様らは何という集団だ?」


「俺たちは〈ダイバーシティ〉のダイバーだ。しかも選りすぐりのエリート集団だぜ!」


 ディップは決め顔で王にそう返答した。

 するとガルゴン王は、豪快に笑いながらこう言った。


「ガガガ!そうであるか!それは随分頼もしいな!」


「オイこら、本当だっての。ちなみに〈ダイバーシティ〉じゃ俺がナンバーワンだ」


「いいや、信じていないわけじゃないのだ。むしろ貴様らの力は頼りにしておる。この先、バルゴンをクローン共から救ったというその力を借りねばならぬ事があるかもしれんからな」


 それを聞くと、ネベルはずっと気になっていた事を王に尋ねた。


「……戦いが始まるんだな」


「そうだ」


 ガルゴンは厳しい目をしてそう答えた。


「敵兵力20万。これだけでもかなり激しい戦いが予想される。だが、今のところ我が国が防衛戦で全勝していることから、敵がさらなる戦力を導入してきても不思議じゃないのだ」


 ガルゴンは豊富な戦闘の経験から、ほとんど的確に〈ガブリエル〉の動きを予測していた。ゆえに、現状のケイブロングヴェルツの戦力では勝てないことも分かっていた。


「あの、私も何かできることはないですか」


 そう言ったのは望だった。


「私、白絹の森や暗黒洞窟で、西大陸のクローンに傷つけられて酷い目にあった人達をたくさん見ました。もう、これ以上、ああいう人達を見たくないんです。あっでも、私はネベルやディップさんみたいに戦うのは上手くありません。だけど自分に出来る事で精いっぱい戦いたいんです」


 一生懸命な彼女の言葉を聞いたガルゴンは、望に優しく微笑みかけるとこう言った。


「ありがとうお嬢さん。もしもの時は、よろしく頼む」


「は、はい!」


 そして王はダイバー達全員にこう言った。


「だがバルゴンと同じく、今は先の戦いの疲れと傷を癒してもらいたい。我はこれから、狐人族(フォックスマン)の商人を交えて軍議を行い、各国に連絡を取る。その後の世界会議には、貴様らも〈ダイバーシティ〉代表としてぜひ参加してくれぬか」


「ノープロブレム。で、その会議はいつ開かれるんだい?」


 するとガルゴンはこう答えた。


「ウム。早くても一週間は先だ。それまでこの国でゆっくりするが良い」


 それを聞くと、ダイバー達は口々に欲望をぶちまけた。


「えっと、ええっと! だったらアタシはドワーフの工房をみせてほしいです! この国の武具生産技術に興味がありますです!」


「俺は酒だな。よし、しばらく飲みまくるぞ」


「ガガガ! 愉快愉快! その内、飯でも食いながら貴様らの旅の話でも聞かせてもらうぞ」


「えっ ご飯?!! (よだれだらだら) 王様の招待ってのは、どんなご馳走なんだろうな~」


 その時、しばらく時間が出来ると知ったネベルは、エクリプスの整備を行おうと考えていた。



 重要な報告も終わり王への謁見もこれで終了するかと思った矢先、ふとガルゴン王はダイバー達にあることを尋ねた。


「ところで、そのエルフは何者だ?」


 ギクリ


 このまま何事もなく終わると思っていたときに、ダイバー達が一番聞かれたくない事を聞かれてしまった。

 バルゴンが説明する。


「王よ。この者はただのエルフでござますのじゃ」


「ただのとはなんだ。貴様らの仲間ではないのか?」


「な、仲間です」


「バルゴン。ダイバーとは人間しか居ないとガリバーに聞いたことがあるぞ。この者は何者なのだ?」


「それは…」


 バルゴンがどう言い訳するべきか言いあぐねていると、王のそばにいた人間の女性秘書官がガルゴン王にこう進言した。


「王よ。〈ダイバーシティ〉とは私たちの世界で多様性を意味する言葉です。人間のパーティに異種族たるエルフが混ざっていても不思議ではないかと」


「シリカ。なるほど、そういうことか」


 するとそれを聞いたドワーフ大臣ブ・ボルドンが不平を漏らした。


「エルフなんてみんな糞ですよ王!卑怯者の集団で、わたしゃあ、嫌いですね。大っ嫌いです!」


 ボルドンは昔、あるエルフと博打勝負を行い悲惨な目にあったことがあるのだ。


「そもそもですよ。エルフを仲間にしてる人間なんて、本当に信じてもいいんですか?」


「黙れ!ボルドン!」


「ひっ…ッ」


 間接的にダイバー達を侮辱したボルドンを、ガルゴン王はひどく叱責した。


「彼らは我が認めた人間達だ。彼らを侮辱にするという事は、我を侮辱するという事に等しいのだぞ」


「ど、どうかお許しください! 二度とこのような事は致しません!」


「……もうよい。第一だ。このエルフは男でなく女でないか。お前がそう警戒する意味が分からぬな」


「申し訳ありませんでした!」


 ボルドンは隅っこで震えていた。ダイバー達も突然おおきな声で怒ったガルゴン王にビビり散らかしていたが、ダイバー達の様子に気が付くと王は驚かせた事を謝罪した。


「こいつは頭は良いのだが、小心者で少し頼りなくドワーフらしからぬ面があるのだ。気を悪くさせてしまったならすまんな」


「い、いえ…お気になさらず。王様」


「そうか。 なら先ほども言ったが我はこれから軍議だ。貴様らはもう出て行ってよいぞ」


「はい。失礼します……」



 その後、ダイバー達は王の間を退出した。

 そして彼らは各々の好きに解散すると、世界会議まで自由時間を過ごす事にした。



 フリークは、バルゴンに男の姿でいる危険性を指摘されたため、自分を女の姿に変化させていた。


 本当はミカエラになったように種族をも変えることが出来た。

 しかしフリークは、変身魔法の使用を外見を少し変えるだけにとどめた。


 その方が魔力の消費も少なかった。



「……その顔、昔の女のか?」


 石城のすぐ外の連絡路の欄干に腕をのせ、街を見て黄昏ていたフリークに、ネベルは後ろから声をかけた。


 彼の存在に気づいてもフリークは振り返ろうともせず、無視して街を眺め続けた。

 だがしばらくすると、彼はさびしそうにこう言った。


「何言ってるんですか。こんなの適当ですよ。てきとーッ」


「そうか……」


 ネベルはフリークの隣に並んで立った。

 そして二人は、橋から見えるケイブロングヴェルツの幻想的な街並みを眺めていたのだった。

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