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第88話 殲滅作戦

 エナジー弾と熱線が狭い洞窟の中を飛び交う。彼らは今、激しい銃撃戦の最中だった。


 変装作戦が失敗してからというもの、ディップ達は始めから奇襲をしかけるようになった。その方が断然効率的だし彼らの性分に合っていると気づいたのだ。


 奇襲のおかげで戦術的な有利は取れていた。だがクローン兵士の使うレーザー光線は、角度により洞窟の壁に当たって跳ね返る事があった。なので洞窟での戦闘は、背後からの兆弾にも気を使う必要がある非常に危険なものだった。


 しかし、そんな戦いもなんとか潜り抜け、ダイバー達はついにすべての捕虜の収容箇所を制圧した。


「これが最後だ!」


 マックはTC‐30の照準を合わせトリガーを引く。すると6つ目の洗脳マシンは煙を上げながら機能を停止した。



 その後ダイバー達は、クローンから奪った牢や手錠の鍵を使って、捕まっていた者達を次々に解放していった。


 身体も心もクローンの支配から解放された獣人族たちは、大勢が涙を流してその自由を喜んでいた。

 望が暗黒洞窟の出口へと案内すると、彼らは我れ先にと地下基地から立ち去っていく。


「今オレが壊した分で、捕まっている全員が無事解放されたはずだよ」


「そのようですね。…でも一応、逃げ遅れてる人がいないか見てきます!」


「オーケー! 任せたよ望」


 そうして望は、一人で秘密基地の中のまだ探していないフロアまで捜索に出かけていった。



 ディップはその場所に監禁されていた顔見知りのドワーフの戦士に、自分の肩を貸しながらこう問いかけた。


「大丈夫か。バルゴン」


「ううーん。どうやら、お主らに迷惑をかけてしまったようじゃの」


「きにすんな、仲間だろ」


 バルゴンの腕には火傷の痕があった。

 採掘作業の最中、なにかの弾みで運よくバルゴンは催眠が解けた。彼はその場でクローン兵士達に反抗したのだが、返り討ちにあいレーザーブレードでつけられた傷なのだという。


「怪我は?」


「うん。これくらい平気じゃよ!」


 そういうとバルゴンは、レーザーブレードで焼き斬られた傷痕部分を、眉一つ動かさずポンポンと豪快に叩いてみせた。


「ほら、どうじゃ。グッハッハッハッ」


「分かった、だから止めてくれ。見てるこっちが痛てーよ」


 すると、フリークがこう言った。


「捕虜の救出を終えたのなら、こんな所に長居は無用です。さっさと脱出しましょう」


「バカ野郎っ まだ望ちゃんも戻ってきて無えだろうが。 相変わらず自己中心的なやつだぜ」


「初めから彼女の帰りは待つ気でしたよ」


「はあ? なんだと」


 ディップとフリークの二人の言い争いを聞いたバルゴンは、驚いた様子でこう尋ねた。


「どうしたのじゃおぬしら。喧嘩でもしとるのか」


「ふん」


 二人に聞いても喧嘩の理由を頑なに話そうとしない。バルゴンは何が起きているのかチンプンカンプンだった。

 それでもお人好しのバルゴンは、どうにか仲直りをさせようと思って、二人にもう一度、喧嘩の理由を尋ねようとした。



 だがちょうどその時、原子移動装置(テレポーター)の破壊工作に向かっていたネベル達が戻ってきた。


「兄さーん! そっちは無事に、捕まってた人達を助け出せたようですね」


「まあな。楽勝だったぜ! デルン。そっちも上手くいったのか?」


「はぁ…、実はそうでもないんです。肝心な機械の心臓部は壊せなかったんだよ」


「なに? オイこら。そりゃ一体どういうことだ」


 デルンは、救出班のディップたちに原子移動装置(テレポーター)の部屋にあった原子炉発電機について話した。


「オー、大型原子炉が16基かい? うーん、それくらい無いと、原子移動装置(テレポーター)は起動できないのかもしれないね。確かに。手を出せなかったのも頷けるよ」


「はい、だからどうしようもなかったんです」


 それを聞いたディップは、ネベルに向かってこう言った。


原子移動装置(テレポーター)を壊せなかった理由は分かった。だがネベル。せめてそこにいたクローン兵士を殲滅くらいはしてきたんだろうなぁ? お前だったら楽勝なんだろう」


「いや。奴ら俺たちに敵わないと察すると、さっさと尻尾を巻いて逃げてしまったんだ。だから全員は倒していない」


(俺たちっていうか、ネベルさんにびびって逃げ出したんだよ……)


 笑いながらエクリプスを振り回すネベルの姿を想像しながら、ロンドは心の中でそう呟いた。


 そしてネベルの話を聞いたディップは、あわてた様子でこう言った。


「ん、待てよ。という事は、まだこの基地に敵が残っているって事じゃねーか! ヤバい、望ちゃんが危ない!」


「え、望さんがどうかしたんです? そういえば、さっきから姿が見えないです」


「さっき、逃げ遅れてる人を探してくるって言って、一人で何処かに行っちまったんだよ。もしクローン兵と遭遇でもしたら……」


 それを聞いたネベルは、ダイバー達に背を向けこう言った。


「探してくる」


「ヘイ!オレもいくよネベル。敵地にもかかわらず望ちゃんを一人で行かせてしまった責任を感じているんだ」


「分かった。一緒に行こう」


「私がどうかしたの?」


 急いで声がした方を振り返ると、そこには大きな箱をもった望が何食わぬ顔をして立っていた。


「みなさん、何かあったんですか?」


「望さん。大丈夫だったんです? クローン兵士に襲われたりとかしませんでしたです?」


「うん。平気だったよ。 それよりみんなに見てほしいものがあるの」


 そういうと望は、持っていた箱をダイバー達の目の前に置いた。


「やっぱりまだ捕虜が残っていました。けど獣人族でも長命人族でもないみたいで、洗脳されてるいかどうかも分からないんです」


 望が箱の蓋を開けると、中には淡い光を放つ小さな小人の姿があった。彼らは全部で4人いて、炭鉱夫のようなオーバーオールを身に着けていた。


 箱の中の小人たちを見たバルゴンは、どこか嬉しそうな様子でこう言った。


「なんとっ、土の精(ノーム)か! こいつは珍しいのぉ」


「バルゴン。ノームとはなんだ」


 ネベルがバルゴンに尋ねる。


「うん。微精霊が大地に宿るエネルギーを蓄え成長した妖精じゃよ。本来はレッドサファイアのような希少な宝石の採掘地くらいでしか会うことは出来ないのじゃが」


「妖精。つまりピクシーの同類ってことか」


 ネベルはピクシーと顔を見合わせた。


「ノームには土を操る力があってな。土に囲まれて暮らすわしらドワーフにとっては、大変有難い守り神のような存在なのじゃよ」


「守り神?!ノームって凄いんだね。 あれ? でも他の捕虜みたいに採掘作業や原子移動装置(テレポーター)の建設は出来なさそうだよね。どうして捕まってたんだろぉ?」


「ああ。おそらくクローン兵たちは、ノームの土を操る能力に目をつけたんじゃろうな。こんな狭いところに入れられて、可哀想に」


 それを聞いたネベルはこう言った。


「ム、待て。ノームの力ってのはそんなに強いのか?」


「そうじゃよ。わしの先祖も、ケイブロングヴェルツの建国の際は、ノームたちの力を借りたという伝説がある」


「……ククッ、そうかそうか」


 ネベルはニヤリと怪しい笑みを浮かべた。


「あの~、ネベル? いったい何を考えているのかね?」


「ああ、たいしたことじゃないさ。ちょっと奴らを一網打尽にする方法を思いついただけさ」


「へ、へえー……、それはよかったねー…」


 ダイバー達は、またネベルの作戦が無茶なものでない事を祈った。

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